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俺の寝室がいつの間にか【女神が転生者を異世界に送る白い空間】になってた…。~転生の女神は今日も俺と添い寝する~  作者: 八゜幡寺


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19:駆逐せよ、脱法転生 パート2

 ――目を覚ますと、俺はただっ広い草原に寝ころんでいた。

 一瞬、何事かと思考が停止して、しかしすぐに女神の顔を思い出す。

 そうか、俺は、とうとう来てしまったんだな。

 異世界に。

 スウェットにTシャツ一枚という、なんともラフな格好で――。


 女神との共同生活。転生者にチートを付与して送り出す日々。

 もしかしたら、何かのはずみで、俺もどこかに飛ばされるんじゃないかなって、心のどこかで思ってた。

 正直、「ああ、ついに俺は転移させられたんだ」という納得感しかなく、自分でも驚くほど落ち着いていた。


 だから、俺はいたって冷静に、第一声をかますのだった。


「ステータスオープン!」


 …………出ない。

 俺のステータスがどこにも出ない。

 なるほど、なるほど……。


 ステータスが、ないタイプの異世界かぁ……。


 俺は一人、泣きたくなるほどの顔の火照りを感じていた。

 でも、だったら俺は……どうやって自分のチートスキルを確認すればいいんだ?

 異世界転移の前に、チートスキルについては女神からは何も聞いていない。

 というか、どんな異世界で。

 何をすればいいのか。

 何も聞かされていない。


 まったく! これだから神は! まったく!

 え? ここから放置はさすがにない……よね? 何かしらの天啓とか、というか本人降臨とかして道を示してくれるよね?


 ……あの女神だ。

 俺に何一つ要件を伝えていないことに、まったく気付いていない可能性もある。


 やっべ。どうしよ。

 現代人。そこそこ中年太りを気にするくらい運動してない三十代。

 チートもなしに、異世界バトルに、ついていけるわけがない……!


 というか、異世界ってたいてい、日本よりもはるかに治安悪いんだよな……。

 こんな草原に一人でいたら、盗賊なんかに出会ったなら問答無用で殺されるんじゃないか?


「こっわ。え、いないよな?」


 途端に怖くなった。すぐさま辺りをキョロキョロロ見渡すが、そこには、一番最初

にただっ広い草原だと判断したように、草ばかりが生い茂る平原しかなかった。

 人っこ一人いない。


 ……いや、なんかいる。

 何かがこっちに向かってきてる!

 地平線上に小粒に見えたそれは、みるみる大きく、鮮明になっていく。

 蹄の足音がだんだんとけたたましい。馬だ。馬に乗った人が、それも大人数で群れを成してやってくる!


 あれだけの距離があったし、俺を視認して向かってきているわけじゃないとは思うが、これがわからない。

 敵か!? 味方か!?

 ひとまず隠れて様子を探ろうにも、こんな平原、隠れる場所がない!


 まずい、どんどん近づいてくる!

 くそ……! 祈るしかないっ! どうか味方であれ! 俺に害をなさない者であれ! 正義感の塊みたいな人たちで、俺を安全に近くの村か集落に連れてってくれ!


 もはや姿が視認できるほどまで近付いてきた集団……!

 俺は、固唾をのんで、心臓を早鐘のように打ち鳴らした。

 そして地鳴りのような馬の足音と共に、聞こえてきた声は――!


「ヒャッハー!」


「獲物はどこだーっ!?」


「男は奪ってから殺せ! 女は奪ってから犯せェ!」


「次の村も略奪の限りを尽くした後に燃やし尽くそうぜぇーッ!」


 おぎゃあああああああああ!!!

 こいつら超やっべぇ極悪犯罪者グループじゃねえかあああああああ!!!

 全身が震える。恐怖で体がこわばる。歯が、歯がカチカチと鳴るのを、必死に、土を噛んで抑えた。


 永遠とも思える暴虐の使徒の足音は、次第に、小さくなっていった。

 奴らは、幸運にも俺に気付かず、走り去って行ったのだった。


 素手で土を掘り起こしたのだ。浅く、広く。

 それからスウェットとTシャツを、土で汚した。顔にも、腕にもだ。

 今度は掘り起こした土に付着していた雑草を、唾でネチョネチョにした土をノリ代わりにして、服や顔にくっつける。ポイントは、ちゃんと向きを揃えること。寝そべったら、ちゃんと葉先が空を向いていることを意識した。

 全身に取りつけなくていい。というかそこまでしている時間はない。まばらなほうが、逆にいい具合に、カモフラージュになる。


「こ、こここ、こ、こえー!」


 まだ震えている。指先が氷のように冷たくなってしまった。

 ――行かなきゃ。

 逃げるんだ。あいつらに捕まったらどれだけ悲惨な目に合うか、想像もしたくない。


 幸いにも、奴らが残した蹄の跡が、俺の行き先の一本道を示してくれていた。

 すなわち、奴らと反対方向――。

 

 略奪の限りを尽くされ、燃やされた村へ、向かうことにした。

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