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俺の寝室がいつの間にか【女神が転生者を異世界に送る白い空間】になってた…。~転生の女神は今日も俺と添い寝する~  作者: 八゜幡寺


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17/20

17:可哀想なのでも抜けるタイプ

 夜遅くにアパートに帰ると、部屋の中で言い争う声が聞こえてきた。

 しかし急いで玄関を駆け抜けても、狭いアパートの一室。そこには誰もいない。


 ……外まで聞こえるのか。

 この白い空間、レオパ◯ス製ですか?

 ため息とともに、寝室の引き戸を開ける。

 くぐもっていた荒々しい声が、鮮明に耳に轟く。


「ふざけんじゃねぇ! 何が異世界転生だよ舐めやがって! 何のドッキリだよこりゃあよ! 責任者出せや!」


 上も下も、どこを見渡しても一面が白い温かな空間。そこで、イカツい兄ちゃんが、対峙する美女を恫喝している。

 艶やかな桃色髪の美女は、透き通るローブを一枚だけ羽織るなんとも妖艶な姿をしていた。


 ここは、現世で死んだ魂を異世界へと導く神聖な白い空間。

 そして桃色髪の彼女は、ここの主てある女神である。

 

 普段、ここにくる人らは、割とすぐに状況を把握し、素直に異世界へと転生されるものなので、このイカツい兄ちゃんの対応は珍しかった。

 この様子じゃ、自分が死んだことにも気づいていないんじゃないか?


 見れば、他に四人も転生者が一気に押し寄せている。

 こんなに複数の転生者が来ることも稀だ。


 慣れない事態が立て続けに起こるもので、女神もすっかり困惑していた。


「あわわ、ど、どうしましょうか……。私が上位存在であることを分かってもらうために、この方を見せしめに爆殺したほうが早いかもしれないですね……」


「やめろそれだとデスゲームになる」


 女神の頭をペンッと叩いてやると、びっくりした顔で俺を振り向いた。

 しかし俺の存在に気付いた瞬間、ほっと胸をなでおろすのが見て取れた。かわいい。


「だ、抱き枕くーん! この人たち、酷いんです! 私がいくら説明しても、自分が死んだことも私が神であることも信じようとしないんですー! とっても不敬じゃないですか!? 特にこいつ~!」


 女神はプンスカ怒って愚痴ってきた。先ほどまで自身を恫喝していたイカツい兄ちゃんを指差し、「いっぺん天罰食らわせてやりたいんですが、構いませんね!?」なんて物騒な発言を再びしだしたので、ペイっと俺もまた頭を叩いた。


「あいたっ」


「やめろっての。それにこいつら……見覚えがある。ちょっと話させてくれよ」


 女神の情緒が落ち着くまでの時間、俺は転生者たちに向き直った。

 いきなり現れた俺に、訝し気な視線を向ける彼らだが、そのうちの一人が「あ」と声を上げた。


「藤影流のお兄さん!」


「おーっす。さっきは助けてくれてありがとうね。でも死なれたら悲しいよ」


「あー、やっぱ、俺たち死んだんだ? うわー、マジかー……」


「まあ、あの女神によって異世界に転生させてもらえるから、二度目の人生、楽しんできてくれ」


 この子は先ほど、ここにいるイカツい兄ちゃん率いるヤンキー集団に絡まれてた俺に助太刀に来てくれた男子学生だ。

 そして隣にいる不安げな顔をする女学生は、彼女さんなのだろう。


 ……彼女が救急車をいち早く呼んでくれたおかげで……、三人も命が救えたよ。


 いやいや、この子たちが、このイカツイい兄ちゃんもろとも、俺の目の前で、大型トラックに轢かれた時は焦ったよ。

 真っ先に駆け寄ってみたが……彼らは、素人目にも、即死だった。

 だけど、なんとかうめき声をあげていたヤンキーを介抱したり、ぱっと見、損傷が少なそうなヤンキーに心臓マッサージを施して、俺なりに、少しでも命を繋ぐ努力はしてきた。


 救急車が来たので後は引き継いだが、俺が救助を試みた奴らが、ここにいないというのなら、きっと生きているのだろう。

 大なり小なり、障害が残るかもしれないが、まあ俺としては助けた命が無事に救われたようで、満足だ。後はリハビリとか頑張ってくれ。


「ちなみに藤影流も、ここに来た転生者が師匠になってくれて、教わったんだよ」


「へえー」


「あ! お前! 誰かと思えば、俺のケツ穴壊した野郎か!」


 ここでイカツい兄ちゃんも俺の存在に気が付いて、怒りが爆発した。

 胸倉を掴んで迫ってくるもんだから、俺もバランスを崩して……。

 つい【流れ星】!


「ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"ッッ!!!」


 皴の多い星は血の涙を流した……。

 彼の二人の仲間たちが援護にきて、また恫喝祭りが始まるのかと身構えたが、しかし二人は逆にイカツい兄ちゃんをたしなめる結果となった。


「健くん健くん! ここヤベーって! もう言う通りにするしかねえよ!」


「健くん、俺、知ってるんだ! これ、あれだよ! 命がけのかくれんぼとか、動いたら即死のだるまさんが転んだをやる前振りだよ! 漫画で見たよこれ!」


 二人の仲間の話を聞いて、小さく唸る健くん。


「い……今……そ、それどころじゃ……ねぇよ……」


 そうか。だったらもう回復する前にちゃっちゃと異世界に送った方がいいな。

 だけどこれ、どうすんだろ?


「女神、こいつら全員、別々の異世界に転生させるのか?」


「え? さすがに見せしめは一人だけですよ。こいつだけ!」


 まだ情緒不安定かよ。それはもうええっちゅーねん。


「他はどうでもいいけど、あっちの男子と女子はさ。一緒の異世界に連れてってやってくれよ」


「あ、ここにいる人たちはみんな同じ異世界に転生ですよ。せっかく大勢なので、ちょっと治安が悪い異世界を、みんなで協力して救ってもらいます」


「ええ、それ大丈夫か? あんまり、あの二人には不幸な目にあってほしくないんだけど。俺を助けたせいでトラックに轢かれちゃったんだよ。なんとかならない?」


「あ、そうなんですか? うーん、私としてはせっかく逆ハーレム転生なので、あの気弱そうな女性の方が姫として守られながらもたくましく成長して、ちょっとスレてNTRねとられとかしながらも、後悔と反省を乗り越えて元気に成長していく物語を想定してたんですが……」


「不幸しかねえよそんなん。やめろ絶対脳みそ壊れちゃうから」


 こうして、俺の助言を聞き入れてくれた女神は、きちんと二人一緒に、あまり治安が悪くない異世界へと転生させてくれた。そして残りのヤンキー三人を、治安が悪い方へ送った。まああのヤンキーら、仲良さそうだし、きっと協力して世界を救ってくれるだろう。


 しかし女神め。NTRねとられなどと、どこでそんな言葉を覚えたんだか……。

 ……俺のFA〇ZAの購入履歴漁ってる?


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