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俺の寝室がいつの間にか【女神が転生者を異世界に送る白い空間】になってた…。~転生の女神は今日も俺と添い寝する~  作者: 八゜幡寺


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14:駆逐せよ、脱法転生 パート1

 ある晩。

 女神はふと、目を覚ました。

 寝起きのいい方ではない彼女は、しかし既にその目はキリと輝き、何かを決心したように強く熱を帯びていた。


「またですか……脱法転生」


「なんだそれ?」


「わ。抱き枕くん、起きてたんですか?」


 いや。でもなんか、目が覚めちゃって。

 本当のことだけど、なんか言い訳じみたから、言うのをやめた。

 代わりに、再び問いかける。


「脱法転生? なんだそれ」


「まあ、要は転生の女神である私を介さずに異世界転生が行われることです。魔法が著しく発展した異世界や、神の存在が希薄だったり、神を敵対視してる異世界では、時折、むりやりこっちの世界の魂を呼び寄せてしま事があるんです」


「ふうん。……そんな顔するほど、結構深刻なの?」


 女神は目を丸くして口元を押さえた。

 頬がうっすら桃色に染まる。


「あら、やだ。そ、そんなに変な顔してました?」


 いや。むしろいつものふにゃふにゃ締まりのない顔からすれば、ギャップがなんか、まあ……。

 いいよね。


 女神はベッドから出ると、うんと伸びをした。

 使命感に駆られた、いつになく真面目な顔つきに目を奪われる。


「……今回は、特にヤバい案件なんですよね。私とは別の神格が、山形の高校のひとクラス。総勢32人をむりやり転生させてしまいました」


「え、ヤバいじゃん。ニュースやってる?」


 聞きながら、スマホでニュースサイトを眺めるも、山形の高校で何かがあったなんてものは確認できなかった。

 高校で火災。なんてものはあったが、死者や行方不明者の有無は不明だ。


「たぶん、ガス爆発とか、テロとか、そんな感じに改変されて報道されてるんじゃないですかね。神ミームの影響で。まったく、神隠しは一人二人が原則でしょうに、何十人も……! 許せないです!」


「少数ならいいみたいな言い方ちょっとモヤるンだわ」


 神々にとって、人間なんてしょせん野良猫みたいなもんなんだなあと感じるよ。

 しかし、女神は許せないと憤っているのだから、まだ人類の味方だと信じて、額面通りに受け取っておこう。


「ま、俺に何かできることがあれば言ってくれよ」


 自分でも、未だになぜこんなことを言ったのか、わからない。

 本当に、女神の助けになりたかったのか?

 いいや。話を締めて、居間でまったりしたかっただけだろう。神々のいざこざに、勇者でも転生者でもない無チート能力者の俺が介入できる余地など皆無だ。

 だから適当にこの話を締めくくった。今日も会社あるし、これまで通りの日常を過ごすつもりだった。


 ――あろうことか、女神は、額面通りに受け取ってしまった。

 目を輝かせて俺の手を取り、大喜びではしゃぎだした。


「うれしいです、抱き枕くん! まさかあなたが、そんなことを言って下さるなんて! じゃあ早速、お願いしてもいいですか!?」


 意味が分からなかった。

 直前の発言なんて、とうに忘れていた。だって、思ってすらない言葉だったから。

 だから、頭にクエスチョンを浮かべたまま、こう答えた。


「おー、なんだ。言ってみたまえ」


「異世界行って、こんなことをしでかした悪い神格を懲らしめてきてください!」


「え……やだよ。仕事あるし」


 ドン引きですよ。俺にそんなことできるわけねぇだろ。

 だけど女神はもう止まらない。

 ああ、なんで俺はあんな事を口走ってしまったのか。女神に対して、今まで、一度だって口にしたことがない、あのような言動をなぜしてしまったのか。


「何言ってるんですか! 会社よりも神の方が格上ですよ! 待ってください今鬼塚さんに電話します!」


 問答無用で部長に電話を入れる女神。スマホは俺が買い与えてやった。まあこいつのおかげで、副業が潤ってるから、ささやかな恩返しだ。

 ただしソシャゲ課金はNG。


『はい、鬼塚です。どうしたの、女神ちゃん』


 スピーカーから漏れる音声は紛れもなく部長のものだった。

 ……いや普通に考えて、同棲してる相手が勝手に自分の職場に電話かけてるの怖くね?


「鬼塚さん、すみません。私の抱き枕くんなんですが、ちょっと数日から数か月、会社に行けませんので、どうかよろしくおねがいしますね!」


『え? いや、駄目よ。何言ってるの? 彼が担当してるプロジェクト、結構会社の命運握ってるから、絶対出社させてよ? こればかりはダメだからね?』


「……あー、ソナンスネー」


『女神ちゃん? え、快諾されるとでも思ったの? 無理に決まってるでしょ。なんでもかんでも、神様の言う通りにはならないわよ』


「…………」


『女神ちゃん、もしもし? ダメだからね絶対に来させてね? じゃないとクビ――』


 ここで電話は打ち切られた。

 女神が赤い受話器ボタンを押したのだ。

 ふう。と一息ついてから、女神は、にこりと俺に微笑みかけた。


「じゃ……行きましょうか。異世界」


「いやいやいやおかしいおかしいおかしい。全部聞こえてたから。無理だから。最後なんかクビとか言ってたし絶対に無理よ無理無理」


「何言ってるんですか! 会社の命運よりも神の命ですよ!」


「いやそれより俺の首……あー! やめて! うわちからつよい!」


 女神は問答無用で俺の腕を取り、そしていつの間にか出現していた魔法陣。その光の渦の中へと連れ込んでいった。

 こ、この魔法陣は、ブリ夫くんを異世界に落としたやつと同じ……!? ということは、やっぱりあれも女神の仕業だったか!


 まさか転移も司っていたとは――!

 なんて思いを残して、俺は、この世を後にした。

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