成吉思汗の少年時代1 パパとママは略奪婚
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メルキト族の若者チレドウが、馬車に新妻を乗せていた。
これからメルキトの集落で幸せな新婚生活を送る為に、奥さんを連れて移動の最中だった。
その奥さんこそがオルヌウト族のホエルン。ジンギスカンの産みの親となる人だ。
しかし、その新婚移動はしっかり捕捉されていた。
「兄貴、馬車に女が居るぜ」
「ああ。良い女だな」
我々日本人から見ると、地平線の彼方に森と小高い山がある長閑な光景しか分からないが、モンゴル人の目は恐ろしく良い。
芥子粒程にしか見えない馬車の中に居る女性の顔まで見えているのだ。
「よし!行くぞ!」
「おー!」
三人の男が馬車めがけて馬を走らす。リーダーの男こそモンゴル族ボルジキン族の長、イェスゲイ・バァトル。ジンギスカンの父親だ。
で?馬車に何しに行くのかって?それはまぁ。
馬車では侃々諤々の大騒ぎだ。
「くそ!逃げ切ってやる!」
「あなた、ボルジキンが来たわ!私はそうはならないけど、貴方が捕まれば斬られてしまうわ」
新妻ホエルンは肌着として着ていたシュミーズ(のような物)をチレドウに手渡して永久の別離を告げた。
「馬車が騎兵から逃げ切れる訳無いわ。どうかこれを形見と思って受け取って。チレドウ、貴方は逃げるのよ!」
チレドウは項垂れて何も言わずに馬車を繋いだロープを切り離し、騎馬になって逃げていった。
何故何も言わなかったのか。それは日本語でいう所の「さようなら」に当たる単語がモンゴル高原には無かったからだ。
「やあお嬢さん、たった今君は略奪された」
湖の畔に停まった馬車に追い縋ったイェスゲイが憎たらしげに声をかける。
「うう」
部下がホエルンの背中を指で縦になぞる。
「兄貴、お誂え向きに下着を着けていませんぜ」
「そりゃあ良い。早速帰って俺の子供を孕めよ」
「うわああああ!」
ホエルンはここで泣き出した。泣いた声で湖はさざ波立ち、声は何処までも届いたという。
こうして文字通りの略奪婚をさせられたホエルンだが、泣くだけ泣いた翌日からは良妻賢母に徹した。
イェスゲイもなかなか良い略奪をしたものだ。二人の間にはついに一人目の赤ちゃんが宿った。
間もなく産まれるという頃にイェスゲイはタタール族と戦争をして、敵将を一人捕縛して帰って来た。
「お喜びください。今日奥方が男の子を産みましたぞ!名前を付けてくださいませ」
「それはめでたい。おい敵将、お前、名前なんて言うんだ?」
「タタール族の将軍、テムジン・ウゲという者だ」
「見事な戦いぶりだったな。産まれた子にはお前の名前を付けよう」
「捕らえられなければ良いな」
「ハハハ。さて草原の掟は知っているよな」
「ああ。知っている。逃げも隠れもせんよ。この頚スパッと持っていけ」
モンゴルは貧しい。負けた将軍を養う程の国力なんか誰も持ち合わせが無いのだ。その場で敵将テムジン・ウゲは頚をはねられ、その子にテムジンという名前が与えられた。後のジンギスカンがこの子である。
その子は面に光有り、目に炎有りと吟われ、右手に血の塊を握って産まれてきた。その様な子は将来大きな事を成し遂げると言われていた。
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完結作品
素人集団!!国家連邦政府宇宙軍第6艦隊奮闘記
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