領都の軍隊
南の村から帰った俺は、家に戻る前にもう一つ気になる
場所に寄って帰ることにした。
あまり出番は無かったがモアはここでお別れだ。
「ビクトル様!帰ったらシチューをお作りして
待っていまーす!」
と大きな声で挨拶してくれた。
ちょっと恥ずかしい。
『さて、セバス?』
「なんでございましょう?」
『領都の軍隊はどうなってるんだ?』
セバスは一瞬険しい顔をして
「クズの時からですが、全く機能していません。
そもそも人数も20人程度しかいませんし。」
『そうか、一度見ておきたいな。』
「では、軍長に伝えます。」
セバスはまたどこかへ消えてしまった。
ちなみにちょくちょくセバスが居なくなっているが
護衛は護衛でしっかりいるから大丈夫だ。
セバスが一人で帰ってきた。
「訓練所へお越しください。お待ちしております。
との事です。」
『じゃあ行くか、訓練所』
馬車で数分の所にある、ボロっちい建物、屋根もかかっている所とそうでない所がある。
『廃墟だな。』
「クズの時から、全くメンテナンス出来ておりません。
予算は削られて、給金を出すのが精一杯でしたから。」
そんな状態で、良く残ってくれたなおい!
中に入ると、敬礼している19人と正面で頭を下げている
男が一人。
『邪魔をする。』
男は再度頭を下げ
「本日は視察に来ていただき、ありがとうございます!
皆!早速訓練開始だ!」
「おう!」
訓練が始まった、が、本当に訓練か?ただ適当に剣を振って
模擬戦をしているようにしか見えない。
例えば手前の兵士なんかは身体の軸がブレブレで
力が上手く伝わってない。あれでは、カウンターを
入れてくれと言わんばかりだ。
そんな感じで、各々の動きの観察をしていると
〈--観察Lv5を取得しました--〉
『(お?スキルをまた覚えた?)』
少しすると
〈--観察Lv5は鑑定Lv1に進化できます。
実行しますか?--〉
『(勿論、はい、だ)』
〈--鑑定Lv1を取得、観察Lv5は削除されました。--〉
早速軍長に鑑定を使ってみる
名前:ボブ=ダーリ
『(これ以上見えないのかよ!!)』
セバスが声をかけてきた。
「これは練度が低すぎます。ビクトル様直々に
指導なさってはいかがですか?」
『うむ、確かにこれが訓練というのもお粗末だな。』
俺は一歩前へ出て叫ぶ
『貴様ら!なんだその意気は!技術を磨く気があるのか!
私が相手をしてやる!かかって来い!』
軍長が口を開く
「恐れ多くも、ビクトル様。皆精一杯やっております
さらに護衛対象に刃を向けるなど・・」
『黙れ!まずは貴様からだ!ボブ!』
ボブは名前を呼ばれ驚いたが、返事はおこなう。
「は、、、はい!」
周囲がざわつき始める。
「いくら俺たちが弱いと言っても、領主なんかが、
勝てるのか?怪我させたら、面倒なことにならないか?」
今の兵士、鑑定はずっと使いっぱなしにしてあるから
名前は覚えたからな。
〈--鑑定Lv2に上昇しました。
相手のスキルを確認できます。〉
これは凄いな、最初は名前しかわからなかったのに
軍長に再度鑑定!
ボブ=ダーリ
スキル:農作業、研究者、鍬使い
これはこれは、ボブはなかなかに良いスキルを持っているな