石鹸はすでに存在していた
翌朝宿で朝食をいただき、村長と約束をしていた
畑に移動した。
畑にはオリーブがあり、その横にはココナッツの木が
なっている。
「ビクトル様、実も大きくて、色も良いですから、ここの
オリーブやココナッツで良い油が採れると思いますよ!」
メイドのモアが目をキラキラさせて説明してくれる。
『そんなにいいのか?』
「オリーブは本当に色艶が良くていいですよ!
塩漬けにして料理にしても美味しそうです!」
モアが少し暴走気味だが、この村のオリーブは使えそうだ
結構木があるなと周囲を見回していると
村長がやってきた。
「すみません、遅くなって。」
『ああ、全く気にしてない。』
周囲を見回して
『このオリーブとココナッツから油を採っているのか?』
「そうです、この後絞って油を抽出します。」
『主に何に使っているんだ?』
村長は少し考えてから
「油ですから、食用に使わせて貰っています。」
『まあ、そうだよな。』
もっと使い道がないかな?と考えながら
『実はな・・・』
領都が汚くて、臭い為、対策をおこなっているが、
身体や衣服、食用品まで洗うために石鹸が欲しい
という事を長々と力説した。
村長はキョトンとして
「家庭用ですが、ありますよ?石鹸」
まさかのカミングアウトだが、めっちゃ良いタイミングだ
『家庭用というのは?』
「商売用ではなく、あくまで個人で作って使う
という事です。」
『村長の家でも作っているのか?』
「はい、お見せしましょうか?」
『是非頼む』
村長を先頭に村長宅を目指して歩く。
「ビクトル様良かったですね!石鹸が見つかって!」
モアが元気に話しかけてくる。
『とりあえずは、だな。生産体制が整うまでが勝負だ』
話しながら歩いていると
「ここが私のウチです。」
村長の家は健在で、一瞬テントか?と思った自分が
ひどいやつだなと思った。
石鹸はキッチンで作られていた。
『これを商売にしようと考えているんだが、どのくらいの
量が作れるのか?』
「村全体で作っても日当たり100個が限界でしょうね。」
『何が問題だ?』
「オリーブ油やココナッツオイルは問題ありません。
恐らく月に一万個位は作れる量は確保できます。
石鹸を詰める型が少ないのと、自前なので作業性も
悪いです。金属の型があれば、1日千個はいけると
思います。」
『なるほど、では北の村に型を発注してみてはどうか?
昨日から鍛冶屋が仕事を再開させている。』
ユラは笑顔になり
「北の村の鍛冶屋さんが、再開したのですか!?
色んな日用品が壊れたままになっていますので
型も含めて依頼を出します!」
『私も一週間後に行くので、持ってきてやろう。』
ユラは慌てて
「領主様にそんなことはさせられません!
こちらでやります!配慮いただきありがとうございます」
さて、石鹸も目処がたったし、領都に戻るか