店主が聞いた新領主の会話
俺は旧ネクストア領で飯屋を経営してるんだが
まあ、ネクストアの野郎が領地を納めてた時は
いくら稼ごうが、根こそぎ搾り取られる感じで
全然裕福にならんかった。
なんだかんだ旧領都にある飯屋って事で
ネクストア本人やそれに連なる連中も飯を食いに
やってくる事は度々あった。
結構豪勢に食ってくれるもんだから期待したけどよ
俺がバカだったよ。
金なんざ落としていってくれねぇんだよな。
ツケておけと。
アホか、そんで稼いだら税金だとか抜かしやがって
引いていきやがるんだからな。
そんなネクストアも隣のマクスウェル領との戦いに
負けたらしい。
絞るだけ絞って、負けました。なんて許されんのか?
責任を取れ!と思ったが結局マクスウェル領地に
なるらしい。
どうせならキールとかプラグとかのが良かったな。
なんて思ってたら、やたら身なりの良いガキと
風格のある爺さん、騎士に利発そうな女の4人組が
店に入ってきた。
『へぇ、結構良い感じの店じゃん。』
「ビクトル様、この後も予定が詰まってますから
早くいただきますよ。」
「まあまあ、セバスさん。ご飯くらいゆっくり」
「ダメです、これはビクトル様の我が儘から
始まった、強行スケジュール、ご自分の怠惰で
迷惑をかけるなんて、許しません。」
「ほらほら皆さん、早くしないとご飯を
食べる時間がなくなりますよ?」
どうやらガキがビクトル=マクスウェルらしいな
ちっ、こいつらもどうせ食べっぱなしで
ツケて帰るんだろ?全くさっさと食って帰って欲しいぜ
結局奴らは簡単な定食を選んで話しながら
飯を食っている。
『まずは、雇用の創出だな、こんな店をどんどん
増やそう。サーダ商会にも手伝ってもらおう』
「店を充実させる為には、インフラ整備が必須
ですな、そこでも雇用が生まれるでしょうな」
「そうですね、領主からの公共事業ともなれば
サーダ商会も大手を振って動けますから
この町にも、お金が回りますよ。」
「私は騎士だから、政治の事はよくわからないですが
治安維持も大切です、ランスと相談して
部隊を回した方が良いでしょう。」
なんだこいつら?領主とその取り巻きってのは
金と女と遊びの話ばかりしてるってわけでもないのか
内容はよく分からないが、金が回るとか
雇用が生まれるとか、良さそうな話だな。
『しかしここの飯は美味いな』
「そうですね、ちょっと濃いめの味付けが
また疲れた体に響きますね。」
なんだかんだ、俺の飯を褒めてくれてるみてぇだな
ネクストアの野郎は美味いなんて言った事がなかった
からな。
結局30分もしないうちに飯を食べ終わった。
どうせ、つけておけ!の一言で出ていくんだろう?
俺は騙されねぇぞ!
『ご馳走さん、非常に美味かった!いくらだ?』
「ビクトル様、お代はセバスが払います。」
『そうか?俺が払った方がいいだろ、どうせ
経費扱いになるんだし、で、いくらだ?』
マジかよ、その後値段を告げた時に言われた一言
『安いな、儲けは出てるのか?』
で、出てますよ。そう答えるのが精一杯
悪態をつく準備をしていた反動で全く
受け答えができず。
「騎士にも紹介しておく!非常に食べ応えもあって
良かった!ご馳走様!」
そう言って金を払って出ていった。
なんだかこの領地も光が見えてきたかもしれねぇな。




