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灰色大戦  作者: 灰色のネズミ
第一章 炎路のラスボス
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真っ青の少年

「あー、暑かったー」


「やっぱ暑いのか」


「そりゃ周り全部炎だったし、触れないからどうする事もできなくて」



 炎路との戦いの後、炎の壁が消えて解放された真田と、戦いで破けたり焼けたりしてボロボロになってしまった赤校の制服を気にするタールは、一緒に赤高校へ向かっていた。

 燃え上がる壁に囲まれていた真田はジャケットを脱いで、シャツの胸元を広げたり閉じたりして、汗で濡れた服を乾かす。これから主席としての入学式挨拶があるので早めに乾かしたかった。



「あー、脇汗も凄いことなってる……あの赤髪、今度あったら一度文句言わなきゃ気が済まないわ」


「なら一ヶ月後オレと一緒にいれば会えるぞ」


「………ふぅん」



 真田は足を止めた。タールも止まる。



「ねぇ、アレ、本気なの? 再戦」


「うん」


「ほんとに? 魔王って人間の敵でしょ? なのにあんな」


「オレとしては敵なんていない。魔界でも人間の顔してたから殴られたし、こっちでも魔王の血を引いてるから敵と見做される」



 目を閉じて頷くタール。

 真田は想像してみた。どこへ行っても、周りから敵だと言われて殴られる人生。一週間、もてばいい方だと感じた。



「要は気持ちを向ける相手も、どんな気持ちを向けたいかも、オレの決めること」


「……強いのね」


「ま、特別だしな、オレは。特別じゃなきゃ納得できない」



 タールは目を逸らした。

 思わず、と言った感じで真田はタールの頭に手を置いて、わしゃわしゃと撫でた。しばらくされるがまま撫でられていたタールだったが、ハッと気づいた。



「ちょ、待っ、セットしたばっかなんだけど」


「あ、ごめん」



 本当に無意識でやっていた真田はタールの動揺した声を聞いて慌てて手を離す。

 タールは乱れた髪の毛を直す。けど跳ねてしまった毛先はどうしようもなく、いっそのこと、と全部跳ねさせる勢いで髪を掴んで逆立てさせる。

 真田は時間がないことに気づいて歩き始める。それに合わせてタールも髪をいじりながら歩き出す。



「一回ツンツンヘアーもやったことあるけど、着合わせで似合う服も限られてくるんだよなー」


「え? そんなに髪型とか変えてるの? いたまない?」


「髪を染めたりはしないしなー、あ、でもやってみたくはあるな。こう、毛先を紫に染めたり」



———見つけたぞ!くそったれ魔王の息子!


 赤高校の前までついた辺りで、またしても後ろから少年の声が聞こえてきた。思わず真田はまた何か飛んでくるんじゃないかと思い、その場から身を引いた。



「ちょ、また⁉︎」


「……あれ? アイツ」



 振り返った二人は、こちらを睨む青髪で目つきの悪い少年がいるのを見つける。赤校の制服を着ているため同じ新入生の同級生だろう。



「青髪に目つき悪いって……もしかして」



 青髪の少年はタールの姿を頭の先から爪先まで確認した。所々服が燃えて破れているのを発見して、憎らしげに舌打ちした。



「チッ! アイツが先にやり合ったのか、まあやられたみたいだし、ザマーミロよあのバカ」



 炎路の話をしているようで、だがすごく機嫌が悪かった。悪口も当然のようについている。



「あ! もしかしてお前、さっき炎路が言ってた青髪? 炎路の知り合いなのか?」


「その苛つく名前を聞かせるんじゃねぇ、くそったれ魔王」


「ちょっと、初対面でその言い草はあんまりじゃない」



 横から口を挟んで来た真田に、睨んでいた険しい顔を少しばかり緩和させて青髪の少年は言葉を返す。



「真田家から逃げてきた弱虫は黙ってろ」


「ッ!」


「お前の事は知ってるぞ、真田村雲。親が親だから情勢には明るくてな、お前、【魔法】を覚えてしまったから抜け出してきたんだろ」


「魔法? 使えるのか?」



 タールが聞いても、真田は辛そうな顔で歯噛みして声も出せない様子だった。



「あ、アあ、アンタには関係ないでしょ……」


「俺は赤の他人だが、蚊帳の外からでも中は透けて見えるもんだ、注視すればもっと鮮明にな。しかも街一番の豪族の話を気にするなって方がおかしい。お前、姉に負けたくなくて魔界の技術に頼ったくせして、いざとなったら逃げ出す弱虫なんだろうが。クソバカ魔王と一緒にいて怖くないのか?」


「ね、姉様のことも……」


「怖くないのかって聞いたんだがな。そんなに姉に負けるのが嫌だったのか、なのにせっかく魔法を覚えたのに自ら無駄にするとはとんだ茶番———」


「おい、そこまでだ。お前はオレとやりたいのか? 真田とやりたいのか? オレとやりたいならそう言え———」


「———言ったなテメェ」


「え?」



 青髪の少年はまたタールを鋭く睨みつけ、指を差す。



「いいか、真田村雲が弱虫なのは間違いない。そんな奴が一緒にいて、そして横から口を挟んで庇うってことは、お前自身真田にとって価値のある相手だと言う事だ。逆にお前もそうなんだろう、お前から善意か気持ちを向けたからこそ真田が気を許している。とすれば、お前がここで俺に対し敵意を向ける事は計算のうちなんだよ」


「………一瞬でオレらの関係値を見破って、そしてオレの戦う意志を引き出すために真田を煽ってたってわけか。ぐうの音もでないほどにキツく。いやわかった、戦おう」


「そこまで言ったなら戦えよ、糞魔王。俺の名は島だ。CMAで島。場所を変えるぞ、ここは校舎前だ」

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