炎路VSタール
「刺される痛みと焼かれる痛み、焦熱の針。火炎・ジラールペル!!」
炎路の手から出された炎が針を形を作る。しかしその大きさは針というより槍。先端の尖った棒状の武器が炎から作られた。
炎路が腕を伸ばして突き出せば、それに応じて炎の針も伸びる。一気に伸びてきた炎の針に、タールは見てからかわした。
「ジラールペルは刺すだけじゃない、脅威はまだある、炎だからな!」
かわされた炎路は、そのまま腕を横に振った。それに合わせて炎を纏った針もよけたタールを追いかけて、横に振られる。
それも針の届かない位置までさがる事で回避した。横に振られた針はそのまま、道の脇にあった電柱に当たり、ガインッと金属音を鳴らして弾かれていた。
「本当の針なのか。魔法の炎は何度も見たことあるけど、ここまで硬度のあるものは見たことないぞ」
「魔法と同じにすんなよ。魔法は魔界の技術、ヒーロー能力は人間の技術、魔法魔界魔物魔王に対抗するためにある武器だ! 俺の能力は単純な炎じゃねーぜ!」
炎路は前に歩き、距離をとったタールを追いかける。そして針の先をブンブン振り回してタールに当てようとする。
それをひょいひょいとかわしていくタール。
炎路が近寄って来たのを見計らって、後ろを振り向き背中を向けて逃げるように大きく距離を取る。そして炎路が追いつく前に電柱に登った。
「上に逃げても同じだ。面の攻撃よりも点の攻撃の方が戦いに有効だって見せてやる」
針の先を伸ばせばいいだけの炎路は、電柱に登られても問題ではない。
しかしタールは電柱をポールダンスのような感じで、くるくる体を動かして惑わす。そして狙って伸ばされた針に合わせて、タールは目の前に来る針の先に構わず飛び降りる。
真っ直ぐ炎路目掛けて飛び降りた。
「ちっ!」
咄嗟に炎路は炎の煙幕でタールの視界を塞ぎ、横に飛び退く。そしてジラールペルを引っ込めると、次に炎の弾幕を作り出した。先ほど投げた炎の球を複数作り出して投げる。
着地したタールはそれを見て首を傾げる。
「あれ? それ面の攻撃じゃ? さっき面より点とか」
「点の攻撃が強力なのは間違いないが、面の攻撃ができないとは言ってないぜ!」
球は空中で横縦に並べられて、几帳面に並べられた球達はタールと炎路のいる通学路一帯を覆うほどの面となって投げつけられた。上横どこにも逃げ場はない。
「ん、あ、そういや金髪の女子がいたっけ」
投げてからすぐに炎路は、真田の存在を思い出した。真田はタールの後方で炎の弾幕が自分の方に飛んでくるのに驚いていた。咄嗟に拳を構えていた彼女だが、炎路がジラールペルで彼女の方に飛んでいく球だけは排除した。
しかし炎の針で弾き飛ばした炎の球は、ビリヤードのように、タールの方に向かって飛んでいく。
タールは飛ばされて来た球をかわしつつ、炎路自ら開けた穴に逃げ込む。だがそこにジラールペルの針先が伸びてくる。
「かかったな、ウサギが!」
タールは伸びてきた針に合わせて、地面に手をついて体を回転させて、蹴って針を弾き返した。ガン!と弾かれて炎路の腕がそれに引っ張られて、体が大きくよろめく。
炎が乗り移って燃え出したズボンの裾を気にしつつも、タールはそのすきを見逃さず、一気に詰め寄って炎路の腹を殴り飛ばした。タールが炎路の目の前に来たのは本当に一瞬の出来事で、炎路も目で追えなかった。
「肉食獣相手だろうとすきがあればウサギだって反抗する。って、うわ、このズボンちょっと気に入ってたのに」
蹴った後に、ズボンについた炎を払う。裾から燃えてしまい、タールの細くて白い足が露出してしまった。
「ぐぅ、げほ! そ、その足……やはり女なんかよクソ、男子服着やがって、まどろっこしい」
蹴飛ばされた炎路は、ふらつきながらも倒れる前になんとか持ち堪えた。だが痛む腹のせいで体勢が立て直し切れない。
「む。オレの好きなの着てもいいだろ、メンズだってレディースだって着たいよ」
「……けほっ、お前の趣味趣向は知らん……ただ、俺も意識を変えるべきだな。女だろーが殺し合いにはかんけーねーってな。そもそも戦いに優遇も不遇も存在しない」
「オレ相手に女だとか気にするの魔界じゃいなかったな。やっぱ『神の力』で弱体化してる俺とは違って、人間界だと人間の方が余裕あるのか?」
「なくなったよ! ボケ!」
ドン!と手から伸ばされた炎の針がタールに伸びる。
それに対して、タールはまたしても地面に手をついて逆立ちすると、足でその針を挟み込んだ。熱さも気にせずタールはそのまま体を回転させる。
すると腕と針が繋がっている炎路も、体が浮き、回転に合わせて宙に浮き上がる。タールの回転に合わせて炎路も回転する。
「ぐっ! くそ!」
炎路は咄嗟に解除した。
回転で吹っ飛んで、炎路は近くの民家の二階に突っ込んで行った。
タールはさらに燃えて膝下数センチまで無くなってしまい、半ズボンになったズボンを見て口をへの字にした。
「………でてこねーな」
二階から出てくるのを待つが、なかなか出てこない。仕方なしにタールは民家に乗り込む。
庭から入ると、家のリビングが見える大きな窓があり、中では男女が怯えて震えていた。庭から入ってきたタールに対してもびっくりしている。
「邪魔するぞ。ん……あれ」
窓を開けて入ろうとしたが、外からだと開かない仕組みの窓だった。割ろうと拳を振り上げたその時、上から炎が雨のように降り注いできた。
さきほどのジラールペルという名の炎の針は槍くらいの大きさだったが、降りかかるのは細く小さな針達。数多に降りかかってくる針の雨をタールは後ろに大きく跳んでかわす。
かわした所に、炎路が降りてきた。そして中にいる住民を睨んだ。
「アンタら、通報だとかバカな事はするなよ。これは俺とアイツの勝負だ。余計なことはするな」
炎路の気迫に負けて何度も首を縦に振る住民。