真っ赤な少年
「っと、そろそろ時間かな。私は先に行くわね」
「急ぎなのか?」
「ふふーふん! これでも私は主席ですからね!」
大きな胸を張って、真田は鼻を高くする。
「主席って?」
「赤校一年生の代表、つまりアンタの代表でもあるの。あんまり目に余るようなことをすれば私が注意するから覚悟しといて」
「今は何もしないのか」
「へ? いやしないわよ、同じ学校にいる仲間なんだし。生まれなんて関係ないでしょ……いや魔王クラスをそんな風に考えるのもおかしいかも知れないけどさ、まだ何もしてないんだから———」
———見つけたぞ!魔王の息子!
話の途中で、タールの背後から炎の球が飛んできた。それをタールは振り向き様に腕で弾き返した。
「えっ! なに⁉︎」
「え……うわ、炎だ。服燃えてないか」
真田は急に飛んできたものに驚く。
何かが背後から迫ってくるのを察知して弾いたが、炎だとは思わず服に燃え移ってないか心配するタール。
弾き返した炎の球は、飛んできた方向へ戻っていき、一人の少年の腕の中に吸収されていった。ぼうっと腕に炎を纏う少年はニヤリと不敵に笑う。
「よお、ようやく見つけた。一ヶ月かかったぞ。魔王の息子!」
少年は燃え上がるような赤い髪をしていた。血気盛んに激しい。
そして服はタールや真田の着ている赤高校の制服とは違う、緑色で赤校のものよりも整然とした感じの服だった。タール達には見えていないが背中にはスペードマークがくっ付いている。
タールはそんな赤い少年を見て首を傾げる。
「あの服……どこの店のだ?」
「店じゃなくて学校よ、緑高校。赤校のすぐ隣にある同じヒーロー高校の制服」
「あ、なんか聞いたことあるな」
「タール。年齢14歳年下。灰色の髪に両目のキズ。人間の10代前半の女みたいな若さ。身長151センチ。胸はそこそこ腰はくびれて尻は大きめで、長ズボンの上からでもわかるケツの丸っこさとデカさ。ズボンの色に赤色の上着と背中のハートマークは赤高の制服。聞いていた見た目の特徴の一致! お前は! 魔王の息子だ!」
つらつらと赤い少年は街に出回っているタールの特徴を言い連ねた。
「俺の名は炎路! ANZで炎路だ! テメェ、青髪の目つき悪いやつと会ったか?」
「ん? 青髪は何人か会ったし、目つき悪いのも知ってるけど……なんて名前?」
「いややっぱいい、アイツと戦ってるならすぐにわかる。そしてそんな痕跡がないと言うことはだ、俺が最初に見つけたって事だ!」
言い終わる前に炎路と名乗った赤い少年は、腕に宿していた炎を空中で丸めて飛ばしてきた。
「さっきの炎の球か」
飛んできたそれをタールは、後ろにいる真田を庇いながらかわした。
「その技の名前は火炎・ジラミーだ。俺の能力は炎を操るがそれだけじゃない、物体も作り出せる。つまりエネルギーと物質の配合能力! どんな形も自由自在に作り出して炎を付加する!」
さらに炎路は手を大きく後ろに振り上げたかと思うと、手に炎を溜めてから、勢いよくタールに向かって突き出した。するとその先から矢印の形をした槍が飛び出して、真っ直ぐ突き刺すために飛んでくる。
「火炎・ジラールペル! 炎の針だ! 燃え刺され死ね!」






