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灰色大戦  作者: 灰色のネズミ
第一章 炎路のラスボス
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白の子

 魔界から人間界に来た、魔王の息子タール。当然周りにいる人間は全員敵であるし、危険はそこらじゅうにある。

 だがタールはそれでも人間界に来る必要があった。己で定めた使命のために。そして人間が敵で、危険ではあるがしかし、特異な生まれを持つタールは特別なパワーがあった。無尽蔵に思えるほどの莫大なエナジーによる戦闘。パンチは山を砕き、柔らかそうな体もナイフの刃を通さない。

 強いからこそ人間界に来ることができ、強いからこそ人間界に来る決意ができた。

 が……———今、タールは危機に陥っていた。決意の材料となった強さを持ってしても越えられない難関がタールを襲っていた。



「ふにゃ〜ご」


「ね、ねね……ネコ……」



 タールはネコが苦手だった。

 とにかく見ただけでも震えが止まらないほど苦手。嫌いではない、怖いのだ。まるでヘビに睨まれたカエルのようにタールの体は硬直してしまっている。

 高校へ向かう登校中の通学路にて、道の塀に立つ黒猫にタールは見つめられ、固まっている。

 表情も、魔界からの侵入者を排除するためにある『神の力』によって弱体化し表情もまともに作れないはずなのに、ネコを見てとにかく怯えていた。目を見開いて、口も中途半端に開きっぱなしのまま。

 一歩、後退りする。



「こ、こんなところで終わるのか……オレの運命も……」


「にゃごっ!」



 タールが何かをする前に、黒猫はタールに飛びかかりその顔面に張り付いた。途端にタールは体の力が抜けてしまい、後ろに倒れてしまった。



「な、なに⁉︎ どう言うこと⁉︎ 大丈夫⁉︎」



 倒れたタールに、背中の大きなハートマークがトレードマークの赤い制服を着た、白に近い金髪の少女が近寄った。

 ネコが顔面に乗っかって倒れているタールを、特に警戒することなく、彼女はネコを追い払って助けた。



「だ、大丈夫? 死んでない? ネコアレルギー?」


「う……うう……」


「ホントに大丈夫⁉︎」



 タールが回復するまで数分かかった。

 学校に行く途中だった白色の少女は、そんなことお構いなしにタールの介抱を優先した。彼女のそんな優しさに『魔王の息子だと知らないのか?』とタールは感じた。

 普通目の前に人間の仇敵である魔王の子供がいたら、敵意を向けるか、逃げるかするはず。けれど白色の少女はそうではなかった。知らないのかも知れない。



「もう平気? 同じ赤校の新入生よね?」


「うん。ありがとう。というか、大丈夫なのか?」


「何が? あ、私が気になる? 私の名前は真田村雲、真田家———聞いたことある?」


「……真田……あ。確か、20年前の戦争で」


「お! それを知ってるってことはかなりの通ね! そう! 20年前の『人魔停戦』の時に司令官を務めた英雄よ! 教科書にだって乗ってるし、この街にいるのも長くて立派な豪族になってる」


「人魔停戦? 魔人停戦じゃないのか……あ、こっちはそう言うんだっけ」


「ん?」


「オレはタールだ」


「タール……? ん? あれ? もしかしてアンタ」


「魔王とヒーローの息子、知ってるだろ?」


「えええ⁉︎ あ、アンタが今日赤校に私たちと一緒に来るっていう魔王の息子⁉︎ うそ! 普通の可愛い女の子じゃない!」



 顔の、目を両断するかのようにパックリとハッキリと付いた2本の縦傷を除けば、アイドル並みの可愛さがあるのがタール。真田と名乗った白色の少女も、傷の大きさは気になったが、別に気にすることじゃないかと何も言わずにいた。



「ええ……」


「気づかなかった?」


「うん……友達になれるかなとも思ってた。でも別に悪いやつじゃなさそうだし……」


「そうか? そう思う?」


「いや、アンタをよく知らないから……」


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