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とらぶる9...ネオンちゃんとの会話

 買い物のために京都の町に出て早四時間。そろそろ俺の腹のリミッターが限界を越える頃だった。既に胃袋メーター(もちろん胃袋の中身の事だ)は〇を指している。

 ウルトラマンだったら三分越えて点滅が停止しているような状態だ。いや、ごめんそれ嘘。だって点滅止まったらウルトラマン死んじゃうもん。

 ああ、幼き日が懐かしい。

 さておき、俺は両手にありったけの荷物(俺の物は何一つなし。全て女性陣の物)を持ち、とても疲れていたので別行動をとってもらうことになっていた。

 木を中心に円形のベンチが丁度あり、俺とネオンちゃんはそこに腰かけていた。

 真っ青だった俺の腕はすぐに赤みを取り戻し、とりあえず切断は免れそうだった。いや、真剣な話をしていて、荷物ぐらいもってやっても大丈夫と思ったことをすぐに後悔したのはもう言うまでもないよね。


「うなー」

「何ですか? その気味の悪い鳴き声は。ウケを狙っているつもりですか? 私はそういうではあまり笑いませんよ。そんなんでウケるようなら芸人は苦労しません」

 全くだ。

 全く何だけど……。

「うぐ。ネオンちゃん。何で俺にはそう容赦ない言葉をかけてくるかな。大体さ、普段もそれぐらい喋ってよって思うの俺だけかな? きっと香織とかもそう思ってるよ」

「さりげなくさっきの奇妙な鳴き声についてはごまかしましたね」

「ぐぅっ」

 いいじゃないか。言ってみたくなっただけだよ。ある小説の両手をなくした少女の台詞を真似したくなっただけだよ。可愛らしいなって思ったから真似しただけだよっ。

 何か問題があるというのか? たまには君にだってそういったことがあるはずだろうネオンちゃんよ。


「……まぁ、いいです。どうせ適当なことを言ってまたはぐらかすだけでしょうし」

「…………。君は一体俺をどんな人間として捉えているか不安で仕様がないよ。あ、もし極度のマゾ野郎とか思ってたりしたら俺結構凹むぜ」

「違うの?」

 うん。違うの。

 可愛らしい質問に合わせて、可愛らしく答えてみよう。

「って。やっぱり君の目にはそう映っているわけね。まぁ、それも仕様がないだろうけど。いいかいネオンちゃん。俺はMじゃなくてね、ノーマルだ。決してSでもMでもない。“N”だよ」

 “N”の部分を強調して言ってみる。ああ、そうさ。俺の発言は正しい。俺はSでもMでもない。Nだ。そう、ノーマルさ。ノーマル以外の何者でもないはずだ。ああ、はずだとも。


「……それにしても遅いな、アイツ等。ってかネオンたん…ちゃんはいいの?」

 史上最悪のかみ。

 うわぁ、止めて止めてその視線。かんだ後にちゃんとちゃんに訂正したじゃん。俺はそっち系じゃないよ。オタクじゃないよー!

 ネオンちゃんは相変わらず冷たい視線を送ってくる。待ってくれ。俺という人間の概念にオタクを付け加えるのはまだ早い。フィギュアなんてもちろん集めてないし、アニメなんて見ないんだ。

 いや、ジャンプ系は見たりするけど……。

 それでも変なの見てないよっ。断言するよっ。

 やがて視線に氷エネルギーを込めるのに疲れたらしい。はぁ、とため息をついていつものクールフェイスに戻った。

 俺も、状態以上緊張からノーマルに戻った。


「私はいいです。あまりこういったことには興味がありませんから」

「……そう。まぁ、無理に買い物しろとは言わないよ。お金もネオンちゃんの物だし」

 ちなみに、俺の残金は携帯の電子マネーのみ。さらに言うと充電が切れててその電子マネーも使えない。まぁ、ようするに一文無しだ。

「大体、それ以上荷物を増やしたいんですか?」

「いや、それはマジでゴメン」

 だって、多分もう持っている分で軽く五キロは超えてる。両手で五キロと聞けばまぁそんなんでもないような気がしてくるだろう。だけどね、荷物は全て袋に入っていて、袋の取手の部分はかなり細いと来た。つまり、圧力は相当なパスカルになっているはずでー、つまりはかなーりつらい状況なわけだよ。勉強になったねー。


 言って、ネオンちゃんを見ると少しホッとしたような顔になっていた。思っていると、ネオンちゃんはまさに思っていたことを言った。

「……少し安心しました」

「うん? 何がさ?」

「ここで“はい”と答えるようならかなり引いてました」

 ネオンちゃん。俺はマゾじゃない。

「ねぇ、俺もう泣いていい?」

「いいですけど、かなりはずかしいと思いますよ? ここ、結構人通り多いですし」

 冗談だよ。

 本気にしないでネオンちゃん。

「冗談を本気にしないで、ネオンちゃん。それはそれで俺結構傷つくからさ」

「そうですか。私も冗談のつもりでいったのですが」

 分かんねぇよ。

 そんないつものクールフェイスで言われたって、つまりは真顔で言われたって誰も冗談だって思わないよ。


 まさかまさかのカウンター。ネオンちゃん、かなり強い。ゲームキャラで言うと、短距離も長距離もオールオッケー。さらにはカウンター攻撃も可能という万能キャラ。

 しかし、俺が突っ込まれる側に回るとは……。恐るべきネオンちゃん。意外な伏兵、みたいな?

「そうだったんだ。分かんなかったよ」

 無論、俺にタメ口を使うような勇気はない。もちろん、嫌われたくない一心からだ。

「そうそう、空兄」

「ん? 何、ネオンちゃん」

「もう少し言葉遣いを男っぽくしないとモテませんよ。私が思うに、空兄がモテない理由はそこだと思うんですよ。ルックスもまぁまぁなのに、ずっと疑問に思ってたんですよね」

 ストレートに言ってきやがったよ。

 しかも裏目に出てると言いやがった。

 ごめんねモテなくて。でもね、ネオンちゃん。そういうのを余計なお世話、って言うんだ。

 大体、そこら辺にいる男は皆モテなくて困っているのさ。いや、皆かは分からないけど、大抵の奴等はそうだ。……そうであって欲しい。


「何なら、ネオンちゃんが付き合ってくれよ。そうすれば俺は自分自身を初めて誇れるからさ」

「…………」

 さっきより引かれたようだ。スッと俺と距離をとった。それも、さっき座っていた距離から約三倍ほどの。

 待ってっ。ちょっ、俺と距離をとらないでさ!

「ロリコンだとは思いませんでした」

「冗談だよ冗談。冗談分かってくれよぉ、ネオンちゃん」

「冗談になりません。度が過ぎてます」

 俺も少し席をずらし、ネオンちゃんに近づこうとする。

 また距離をとられた。

 それでもめげずに俺は少し席をずらした。何とかして距離を縮めようとする。

 また距離をとられた。

「変態ですか?」

 グサリ。

 確かに、この行為は変態じみてる。


 ネオンちゃん。

 俺と二人きりになると、途端によく喋るようになる娘。それも、毒舌になる娘。

 だけれども、どうしてか憎めない、そんなネオンちゃんなのであった。

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