とらぶる6...天国と地獄
生き返るとは実に的を射ていると思う。
氷点下二度の極寒の中、どこにあるかも分からないデパートを探し回り、ようやく見つけたと思ったら花園が『気に入らない』と言いだし再び外へ出て……。
面倒くさいので以下省略。
まぁ、そんな訳で、なんとか着替えが手に入った。花園がお金を“貸してくれた”のでね。
奢ってくれるのかと期待していたのだが、『何甘えてんの?』と結局そうなった。まぁ、花園らしいといえば花園らしい。せめてもの意地ってやつだろう。
しかし、帰ったら当分の間時空の家に隠れておかねばならない。でないと、俺の二月分の食費に羽が……。
おぉぉう。考えただけでぞっとするぜ。銭湯にいんのに背筋が寒いのは何故?
とやかく、今俺は銭湯にいる。天然の冷凍庫に入っていた俺の体は最初、悲鳴を上げたが今ではすっかり……。
いや、もう出るけどね。頭に血が上ってクラクラする。
♪ ♪ ♪
ゆっくりと鼻血が出るまで温まり、鼻にティッシュをつめて部屋に戻った。
今頃、きっと温かいご飯が俺を待ち受けてくれている。
京都の料理。どんな食べ物か知らないけど、きっと美味しいんだろうな……。考えただけでよだれが出てくる。
部屋の扉が見えてきた。俺は少し速歩きになり、先を急いだ。
扉のノブに手をかける。そうして、惜しむようにして俺は扉を開けた────
そこには、美味しそうな白いご飯・お味噌汁・天ぷら・お刺身・豆腐・茶碗蒸しが。
なかった。
あれ? おかしいな。さっき俺の目に映った料理は? 幻覚かな?
「ねぇ。俺のご飯は?」
「もうないわよ。決まった時間に食べないから旅館の人が持ってったわ。だから言ったでしょ。風呂の前にご飯食べといた方がいいって。アンタの分はアタシ達で分けて食べちゃったわよ」
待てよ。お前、風呂前に食った方がいいとは言ったが、時間が決まっているとは言ってなかったろ。
ていうか何ニヤけてんだよ。テメェ、明らかに知っててやったって顔じゃねぇかよ。ハメたんだろうが貴様が。
「美味しかったー。ねぇ、ネオン」
コクリ。頷くネオンちゃん。
もう悲しくもなんともないさ。君は俺の敵だろ? そうだろ。そうなんだろ。
あなたもです理恵さん。先程はあんなこと言ってましたが、口実でしょ? いや、花園が楽しいんじゃなく惨めな俺を見るのが楽しいんでしょ?
美女三人と旅行。そう言えば聞こえはいい。
しかし、極度のS美女三人と旅行。こう言えば微妙だろ?
言っておくが、俺がMなんじゃない。彼女らが“極度の”Sなんだ。
つくづく思う。
道徳って、大切だよね。
「さて、明日も早いし、もう寝ましょう」
満面の笑みで言うな。満面の笑みで言うな! そんなおもしろそうな目で俺を見るな!!
まぁいいさ。それよりも。
「真面目の俺の飯、ないの?」
「うん」
零・零零二秒の回答。いや、当たり前だがこれは適当に言った。だけど、これぐらいだと思うよ。
こんな会話をしているうちにどんどん布団が敷かれていく。無論、三枚のみ。
三人の美女。
満面の笑み。
一人の青年。
傷ついた心。
三枚の布団。
美味しい飯。
…………。
俺はポジティブだから三人の美女しか見えないなぁ。嗚呼、浴衣のネオンちゃんも可愛いなぁ。
…………。
止めた。悲しくなってきた。
いいさいいさ。味方もお金もなくたって、俺にはまだ人生があるんだからさ。
あと三日もすりゃ普段の生活へUターンだ。リターンだ。
……お腹空いた。俺も寝よう。
そう、思ったところでピシャリと障子の戸が閉まった。布団は花園達が寝ている部屋の押入れにしかない。
決定。
この旅行、厄介になりそうだ。