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とらぶる5...用件は先に言え

 姫ちゃんと輝さんと別れて、外は雪が本格的に降り始めた。しんしんと積もっていく雪。はぁ、銭湯に入っている花園達が羨ましいなぁ。

 俺はその雪から逃げるようにして旅館の入り口へと向かった。気温は既に氷点下だろう。

 はぁ、と両手に吐息をかけて素早く擦る。しかし、筋肉の疲労が来て途中で終わる。まぁ、多少は温まったからいっか。

 芝生がようやく見えてきて、俺は最後のコーナーを曲がった。その先には暖房が聞いている旅館内へと続く天国への扉がある。

「寒い寒い」

 さて入ろう。そう、ドアを開けたとき────


「あ、いた。もーどこ行ってたのよアンタ。探したんだからね。鍵持ってんのアンタなんだからアタシ達部屋に戻れなかったのよ。折角銭湯でいい思いしてきたのに台無しじゃない」


 ダーッと止まることなく一気に語るべきコトを語る奴と出会った。偶然に。いや、七星がいうようにこれも必然……。

 それはいいとして、確かにそれはそうである。なら俺を最後にするなと言ってもいいが、理恵さんとネオンちゃんにも迷惑をかけてしまっているようだし。

「悪い悪い。今行くよ」

「え? ああぁぅ。うん。早くしなさい」

 文句を言うとでも思っていたのだろう。花園が拍子抜けた顔をする。

 俺は滅多に見られないような花園の顔に苦笑しながら旅館に入った。


   ♪ ♪ ♪


「すいません。今開けるんで」

 軽く頭を理恵さんとネオンちゃんに頭を下げて、素早く懐から鍵を取り出しドアを開ける。ロックの解ける音がして俺はドアノブに手をかける。

「よし。それじゃあ行くわよ」

「は?」

 俺の腕を素早く掴むと言うよりも早く花園は歩き始めた。理恵さんはバイバーイと笑顔で手を振り、ネオンちゃんはいつもの無表情。

 ま、待てって。


 そうして、引きずられるようにして俺は歩みを進めた。

「待て待て。まずはどこへ行くか話せ。そうして放せ」

 言っておくが……花園は言うまでもなく女性であり、俺は言うまでもなく男である。純粋な力の関係は花園<俺だ。

 エレベーターの前辺りで俺は花園を強引に止める。それでもやっぱり引っぱろうとする力は緩まなかったが、取り敢えずは止まった。

 はたして、花園は俺を不満いっぱいの表情で見つめるのであった。

「いいじゃないの。どうせ暇なんだから」

「はぐらかすな。どこへ行くんだ。言わないと俺はここから一歩も動かないぞ」

 一瞬、花園はたじろいだように見えたが、それでもまた一瞬で復活。俺と花園の視線が交差する。今にもバチバチと音を上げそうな勢いだ。

 睨み合いが続く。結果、先に口を開いたのは花園だ。

「さっさと来るの! アンタはアタシの言う通りにしておけばいいじゃないの!」

 お前は子供か。

 もしくは女王さまか。

 いや、お前の場合姫様か。

「いやだ。……いいか花園。一応、俺は行かないとは言っていない。ただどこへ行くか教えろと言っているだけなんだ」

 いやだ、の部分にスタッカートをつけて言った。

 イジケたように顔を歪ませる花園に俺は続ける。

「大体な、香織。お前はいつもいきなりすぎなんだよ。俺はお前が行くって言った場所ならちゃんと行くし、約束も出来うる限り守る。いつか言ってた四次元空間だろうと一緒にいくさ。だけどさ、まずはちゃんと行く場所を教えてもらわないと俺は困るんだよ。今日だってそうだ。ついてこいって言ったら俺はついていったのに。おかげで俺は服も何もない」

 お前が俺の来ているセーターに入れていた携帯以外はな、と付け足す。

 そうして、俺は諭すようにしてこう言った。

「だからさ、ちゃんとどこに行くか教えてくれ。俺はちゃんとついていくし、厄介事にも突っ込んでいくからさ」

「…………」


 口を尖らせて俯く花園。俺は構わず花園を見つめる。

 そうしていたら、花園は俺から手を急に放しふいっと後ろを向いた。そうしてエレベーターのスイッチを押した。

「・・・に行くのよ」

 非常に小さな声で呟くようにして言った。俺は聞き取れず、「何?」と聞き返す。

 だーかーらー、と今度は大きな声で、

「デパートにアンタの服買いにいくのっ!」

 と叫ぶようにして言った。

 俺は苦笑を浮かべて、

「あいよ。ほんじゃま行きましょうか」

 と言った。

 それなら喜んで行ったのによ。無駄な時間とっちゃったじゃんか。思ったけど、口には出さなかった。

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