とらぶる4...理不尽というなの暴力
えーと、色々と忙しくて以前書いた小説を推敲する時間がありませんorz
前のままとりあえず執筆します^^;
「なーにやってんのアンター!」
額に手刀。女とはいえ少しは痛い。
「お前が歩くのが早いから悪いんだろ! 大体な、こんな大量の荷物でお前についていくなんて無茶なんだよ!」
「アンタは男でしょ! 弱音を吐くな!」
「男女平等っ!」
「うるさい!」
今度はグーパンチ。しかし、腹に力を込めてガード。これでほとんどダメージは……。
「……!」
鳩尾!? ば、馬鹿な……。
ガクリと地面に両膝と右手をつける。左手はグッド……いや、バッドポジションに拳が入った場所をさすっている。
「お、お前……みぞは危険なんだぞ……」
「フンッ。アタシに逆らうから悪い。いこうネオン」
俺と大量の荷物を置いていって旅館に入っていく花園とネオンちゃん。
「フフフフフ。楽しそうだね、香織ちゃん」
後方で今の光景を微笑ましい笑顔で眺めている女性が一人いた。
「……理恵さん。止めに入ってくれてもいいじゃないですか……」
「んー? だって香織ちゃん、楽しそうにしてたでしょ?」
あなたの目は一体どうなっているのですか? 楽しそう? アレが? いやいやいやいや。たとえ、地球に太陽ほどの隕石が落ちてくることがありえたとしても、それはありえませんよ理恵さん。
「マジギレだったじゃないですか……」
「ンフフフ。君にはそう見えたってコトでいいじゃないかっ。それより早く中に入ろうさっ。外は寒いよっ」
見る者全ての男を一発で落とし兼ねない微笑みを俺に見せて、自分の荷物を持つ理恵さん。多少は俺の負担も減るだろう。ありがたい。
「ありがとうございます」
「いいやっ。礼には及ばないさっ。これは私の荷物だしねっ」
素晴らしい人だ。これほど素晴らしい人はきっと数人といない……いや、これが普通なんだ。花園を基本にしてはいけない。
俺は残りの荷物──花園の荷物とネオンちゃんの、俺を入れてたカバン──を持ち、待ってくれている理恵さんと並んだ。
さて、じゃあ中に入ろうと歩みを進めようとしたとき、理恵さんは俺に話しかけてきた。
「フフフ。これからも香織と遊んでやってくれさっ。彼女にとって、本当の友達は君だけなんだからねっ」
「? 俺より仲良さそうな奴、たくさんいますよ。中には中学からの付き合いって奴もいますし」
「それはあくまで“付き合い”なのさっ」
「?」
あくまで“付き合い”ねぇ。一見、俺より仲は良さそうなのに。……つまり、その“一見”ってやつでしかないってコトか。
でもなぁ、アイツの態度を見ると……。
「香織は、俺のコト嫌いなんじゃないんでしょうかね?」
「……嫌い?」
驚いたように目を丸くする理恵さん。俺は何か変なコトを言っただろうか? 個人的な意見を言ったまでだが。
「可笑しなコトを言うね。君のコトが嫌いなら彼女は君を呼ばないよ」
「うーむ。しかし、アイツの態度見てるとそうとしか思えないですよ」
「彼女なりの気持ちの伝達さ」
絶妙な笑みを見せて俺に言う理恵さん。
いつもなら見とれるところだが……アイツのなりの気持ちの伝達か。何の気持ち?
「怒りの伝達ですか?」
「どう捉えるかは君の自由だよ、むーちゃん。長話になってしまったね。香織ちゃんに怒られちゃうよっ。早く中に入ろうさっ」
話を強引に終わらせる理恵さん。俺はまだ納得出来なかったが、その疑問よりも寒さが勝ったため、俺は理恵さんと結局旅館に入った。
♪ ♪ ♪
「おおー。広いなー」
理恵さんに案内されて俺は部屋に着いた。
壁には掛け軸などがかかっている。部屋の中央には大きめのテーブル。上にはお試し用のお茶っ葉と試食用の八つ橋や飴。
部屋は今は一部屋のようになっているが、四枚ほどの襖で分けられていた。取りあえず、寝るときには困らなさそうだ。分けても畳十枚はある。俺一人でこの広い部屋で寝るのはどうかと思うが、それでも女性と寝るよりはマシだろう。
「ボケッとしてる暇はないわよ。早速銭湯に行くんだから」
満面の笑みを浮かべて楽しそうに花園は言った。
「銭湯。へぇ、よさそうだな。俺も……ん?」
俺は下に綺麗に並べてある荷物を見る。四つのカバンが置かれていた。ええと、これは花園の。これはネオンちゃんの。これは理恵さんの。そしてこれは俺を入れていて何も入っていない。
…………。
服ねぇじゃん。
「俺の荷物は?」
「ん? 知らないわよ。自分の荷物は自分でちゃんと準備するものでしょうが」
「ふざけるなよ! 俺はお前に連れてこられたんだろうが! 準備もクソもあるか!」
「さぁネオンちゃん行きましょう。早く温まりたいわ。理恵姉ちゃんもいこ」
軽くスルー。
俺の怒りのボルテージは上昇。
「もう俺は帰る! どれだけ金がかかろうとタクシーで帰ってやる!」
そう、俺が叫び終わる頃には女性陣は全員部屋を出ていた。
ポツリと部屋に一人で残される。
なんか、もう疲れた。
♪ ♪ ♪
結局、俺は旅館の中をうろちょろするコトにした。帰るにもお金も持ってなかったし。携帯の電池も切れ、電子マネーすら使えない最悪の状況だ。
そう言えば、時空の奴『四日間ほど』って言ってたような……。それは……流石に困る。
ック。一度頭を冷やそう。今は怒りで可笑しくなってる。
そういうわけで俺は外に出た。しかし、それは失策だった。冬の夜。ちらちらと雪も降ってる。
「ぉぉおぉおおぅう」
寒い。クソ。地球温暖化とか言ってるけど対した問題じゃないんじゃねぇか? こんなに寒いんだし、もっと暑くなっても全然大丈夫だと思うな。
俺は一瞬中に入ろうと思ったが、すぐに止めた。特に理由はない。どうしても答えろと言うなら、男に二言はない、というやつさ。文句ないだろう?
取りあえず、旅館の周囲を一周するようにして俺は歩みを進めた。まぁ、散歩ってやつだ。
特にこれといって挙げるようなものはない。芝生と木があるだけ。途中でコンクリに変わったけど。
まぁ、それでもよかった。元々、何の意味もない暇潰しのための散歩だしね。
何の期待もせずに、取り分け何も考えないで歩いていた。点々と光っている部屋を見ながら、俺達の部屋はどれかなー、なんてくだらないコトを考えていた。
昔、ある友人が言っていた。『たまに、なーんにも難しいコトを考えないで歩いてごらん。そうすると、悪いことや悪い感情を全部忘れられるよ』とね。
今ならまぁ、分かる気がするかな。
そう、穏やかな気持ちになりながら旅館のまわりを歩いていた。中学生時代の、変わった友人を思い出しながら。
「────ん?」
映画のワンシーンの様だった。
一人の少女が、旅館の壁に持たれて泣きながら体育座りで座っていた。
どこかの学校の制服。その上にブレザーを羽織っている。髪は青いリボンで束ね、ポニーテールにしていた。
地元の高校生だろうか? うーん、中学生に見えなくもないし……。
どちらにせよ、ほっとけないな。別に、変な意味とかじゃなくて純粋に。
「どうしたの?」
ありきたりな台詞で話しかけてみる。ひょい、と少女が俺を見上げた。
────!
クリティカルヒット!
ネオンちゃん以来の当たりの子だぜっ!
嗚呼、神よ、努力は報われるのですね。素晴らしき人生。七星よ、これが君の言う『通過点』か。いいじゃないか。
「…………」
まずいな、こちらの様子を窺っているようだ。
失敗したな。まずは俺が安全で善良な青年ということを明確にしなければ。紳士の俺が、何たる失態。
「ほら、飴あげるからさ。取りあえず、名前ぐらいは教えてくれないかな?」
「……………………」
おや? 何か滅茶苦茶怪しまれている気がするぞ。何だい、その露骨に嫌な顔は。いや待ってくれ、俺は変態じゃない。そこら辺にいる誘拐犯でもないぞ。
どうしようかな……。まずは、警戒心を解いてもらわないと。
「……じゃあ、これから俺は独り言をするからさ……。暇なら聞いてくれてもいいし、素直に気持ち悪いと思ったらどこかへ行ってくれてもいい」
俺は一メートルほど少女と距離をとって地面に座り込んだ。
今のところ、少女は立ち去る気配はない。……それじゃあ、少し独り言を言わせてもらおうか。
「俺の住んでるとこはさ、家賃一万円の四畳一間のアパートなんだ。一つ言っておくけど、決して貧乏という訳じゃないぞ。俺は遊びも勉強も大切にしていてね、出来うる限り、お金は使わないようにしている。遊ぶときに使うお金をちょこちょこと貯めている訳さ。まぁ、そういう訳でそのオンボロアパートに住んでるんだけどさ、これが今の時期とっても寒いのよ。凍死するんじゃないかって思うぐらい。だから俺はある友人の家で勉強することになった。寒いと勉強に集中出来ないからね。それでさ、いざ友人の家へ向かおうとしたときに俺の部屋のドアがノックされたんだ。それで、俺は少しの間待っていた。ある女……まぁ友人にドSの奴がいてね。ノックして五秒以内に開けないとヒャクレツケンの勢いでノックの嵐をしてくる奴なんだよ。そいつかどうか調べるためにやった訳なんだけど……五秒経ってもその嵐はこなかった。俺は安心してドアを開けようとしたんだけど、何かさ、そこで気絶させられちゃってさ。起きたらビックリ箱の中。両手両足をガムテープで縛られていてね。開けろーと言いたくても口にもガムテープが張られていてさ。もう散々だったよ。犯人はグルでさ。ドSの奴とその勉強を一緒にしようと言った奴だったんだぜ。泣けるだろ」
少女は、動かない。聞いているのかは分からないが、立ち去ろうとしていないのは事実だ。まだもう少し、話をさせてもらおうかな。
「そんでさ、その箱に入れられているとき、どうやら新幹線に乗っていたようでね。『俺の料金どうしたんだよ!?』とかいうツッコミすら入れること出来ない訳だろ? もう物凄く辛くてね。無賃乗車している罪で俺の胸は張り裂けそうだったよ。後で犯人にちゃんと払わせなきゃ俺はもう一生生きていけないと思いながらも、身動きがとれないから仕様がない。結局、その新幹線から代金払わずに下りてね、もう死のうと思ったけどそれじゃあ両親に申し訳ない。だからここは我慢だと俺は堪えた訳だ。そうして駅から約二時間。俺は箱の中で過ごした訳だが……これがもう凄くてね。何かのアトラクションよりキツかった。階段やら何やらでがたがたがったがた揺れるんだよ。壮絶な吐き気と戦いながら俺はようやく解放された訳だが……なんとまた縛られたくなかったら荷物を運べだとさ。もうその女は恐ろしくてね、一度怒り出すと釘バットを振り回してさ、そうしたらもう従うしかない訳だよ。渋々荷物を運んでさ。見失わないように一生懸命に追いかけてた訳なんだけど、ソイツはわざと走っていく訳よ。俺を嘲笑いながら疾走していくんだぜ。結局見失ってね。どうしようかと思ってたら親切な方が俺に連絡をくれた訳だ。そうして何とかここについた俺に、ソイツは『トロいのよこの豚野郎。豚より使えないじゃない』とか言ってくる訳だよ。酷い話だろう? 連れていってって言ってもないのに。人をガムテ拉致した上に奴隷扱いだ。いや、挙句の果てには豚以下とまで言ってくるんだから────」
俺はもうそれ以上話さなかった。この後、まだまだ話そうと思ってはいたけどね。
少女はクスクスと笑っていた。
俺は、何故か安堵を覚え、小さく笑った。うん。安堵を覚えた理由なら、多分、ようやく少女が笑ってくれたから。
俺はよっこらせと立ち上がり、笑っている少女の方を見た。
「さて────、これぐらいで独り言はお終いにしようか。取りあえず言っておくけどさ、俺は誘拐犯とかじゃないよ。君が一人で泣いていたからさ、ちょっと気になって話しかけただけだ」
だけ、じゃないんだろうけどね。まったく、何か、ネオンちゃんの時といい泣いている娘はどうしても放っておけないな。
勘違いされたら困るから言っておくけど、俺はロリコンじゃないぞ。断じて違う。大体、コンプレックスの意味が違ってきているのは何でなのさ。劣等感という意味なのにさ。
「姫菜です」
「────え? ごめん。考え事をしていてね。よく聞こえなかった」
「だから、名前です。名前は姫菜です。姫ちゃんと呼んで欲しいです」
「姫菜ちゃん……姫ちゃんね。オッケー。一生覚えておくよ」
姫ちゃんは笑った。俺もそれに笑顔を返す。
「さて……姫ちゃん。その様子だとまだ家には帰ってないみたいだね。早くお家に帰らないと、ご両親が心配するぞ」
「あ……いえ……大丈夫です。一旦、家には帰ったですから」
……そう言えばカバンを持ってないな。なるほど、帰ったというのも納得できる。
まぁ、今の時間は六時ちょっと過ぎたところだし。大丈夫かな。
「ふーん。まぁ、それでも早く帰るんだよ。一人でこんなところにいたら危ないしね……ってここは旅館の敷地内だから大丈夫かな。家は遠いの? なんなら送ろうか?」
「あ、いえ……」
顔を俺から背け、ちょっと声をくぐもらせる姫ちゃん。
「姫ちゃんのお家は、あれです」
ひょい、とどこかに指を向ける姫ちゃん。その延長線上へと俺も視線をやる。
そこには、旅館のすぐ側にある家。確か、旅館の持ち主の家じゃなかったっけ……。ってか、旅館の敷地内にあるんだからそなんだろうけど。
持ち主の家。持ち主……。
「持ち主!?」
「ひぇっ!」
「────ああ、ごめん。いや、予想外の返答にちょっとビックリしちゃってね」
俺の驚きの声にビックリする姫ちゃんに謝る。
「いえいえ。全然ですよ」
それに対して姫ちゃんは首と手を高速で振る。嗚呼、可愛いなぁ。無口なネオンちゃんとはまたタイプが違う可愛さだー。ポニーテールがまた似合って。
うーん。まず、『〜です』でプラス一。一人称が姫ちゃんという点でプラス一。性格面でプラス一。ポニーテールでプラス一。驚き方でプラス一。フェイスでプラス五。おお、十点満点。
「どうしたですか? にやにやしてるですが」
「────ん? いやいや。にやにやなんてとんでもない。笑ってただけだよ。さて、じゃあ、帰ろうか。送っていくよ。まぁ、ほとんど距離はないけど」
「ありがとうございますですー」
はにかむように微笑んで、姫ちゃんはお礼を言ってくれた。言ってくれた。もう一度言わせてくれ。言ってくれた。
うわー。天に昇るような……そんな感じ。……再度言うが俺はロリコンじゃない。年下に劣等感なんてない。
いや、年下は好きだけど。ていうか年上同級生年下オールオッケーだけど。
あくまでロリコンではないということを主張しているのであって、誰も年下が嫌いなんて言ってないぜ。
「それと、姫ちゃんって何才?」
「姫ちゃんですか? 今は十七です。どうしてですか?」
「ん? いや。何でもないよ」
…………。
ギリギリクリア。危ねぇ。十六才だったらアウトだったぜ。
俺は自分で制限をかけている。今は十九才だから……二十一才から十七才までだ。ようするに、二才差まで。
まぁ、短い間だけだから聞いても無意味だけどね。
徒歩で一分もかからずに姫ちゃんの家に到着。その間の会話は先ほどの会話のみだった。
姫ちゃんは『ただいまですー』と言ってドアを開ける。
瞬間、絶句した。
「お帰り、姫菜。────で、その人は誰?」
「んー? この人は落ち込んでいた姫ちゃんを慰めてくれた優しいお兄ちゃんですよ」
誰? このかっこいい兄ちゃんは。やべぇ。コンプレックスだぜっ。畜生。神様は平等じゃねぇ。俺もこの人ぐらい格好良く生まれたかった。
二人の視線が俺に注目しているのに気づく。
ええと、名前?
「あ、どうも。青空です」
あ、反射的にいつも呼ばれてる名字を答えてしまった。ま、いっか。
「青空君か。姫菜がお世話になったね。ありがとう」
「あ、いえ。いつでもお世話になってくれても結構ですよ」
そうかい、と格好いいお兄さんは笑う。畜生、笑い方まで格好いいぜ。……待て。俺、全部負けてね? オールコンプレックスみたいな? それってまずくね?
「ハハハ。それはありがたいな。僕の妹はいつも暇そうにしてるからね。旅館に泊まっているのだろう? なら泊まってくれている間、仲良くしてやってくれ」
白い歯を見せて笑った。……俳優にも負けない笑みだった。まぶしすぎる笑みだった。
……うん?
待てよ……。
「いもうと? あの、お兄さんですか?」
「ええ。姫菜の兄の輝です」
「────そうですか! そうなんですか! いや、素晴らしいお兄さんだね姫ちゃん。うん。俺もこんないいお兄ちゃん欲しかったよ。とてもキツい姉より輝さんみたいな兄が欲しかったよ」
俺の目に光──希望と読む──が戻った。
そうか、お兄ちゃんなのか。そうかそうか。そうなんだね。うん。彼氏なんかじゃなかったのか。
ははは。焦るじゃないか姫ちゃん。まだ手遅れじゃないんじゃないか。
なんか、今回の旅行が楽しくなってきたぞ。うん。これも全部君のおかげだ、姫ちゃん。
「それじゃあ、そろそろ飯食べるんで」
俺は軽く頭を下げて別れの挨拶をした。
輝さんはそうかい、と言って微笑んだ。いや、格好いいぜマジで。俺が女だったら一発で惚れてるね。
「ばいばいですー」
ひょこひょこと手を振る姫ちゃん。俺も満面の笑顔で手を振り返した。
神の存在を初めて信じた瞬間だった。