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やはり俺は変態かもしれない

 

 俺は思う。ころころと王が変わる王政で、変わらず王が国民に無理難題を押し付ける独裁国家。命令は断れず、指名されたら晒し者。そんな国には決して住みたくないと。


「つまり、王様ゲーム断固反対!!」


 俺は声高に叫んだ。王様ゲームなんてのは楽しいのは初めだけで、何処か命令がマンネリ化してくると、だんだんと命令が過激になっていき、最終的には友情崩壊ゲームと化す。


 闇鍋と並んで、『やるのは創作の中だけにしとけよ』なゲームである。(俺調べ)


 用法容量守って、仲間内でワイワイやるだけなら、俺は反対しない。どうぞ楽しんでくれ。


 けれども、やっぱり親子揃った家庭内でやるゲームではないだろ!!


「うるさいよお兄ちゃん。これ以上騒ぐと命令関係なしに問答無用でツウェッターで毎日チクショーって呟いて貰うから」


 罰ゲームかよ。罰ゲームじゃなくても毎日チクショーやってるムーンウォーク世界大会準優勝太夫に謝れ。


「それじゃあ始めるわよ」


「……はあ」


 有無を言わさず始められた王様ゲーム。最早抵抗しようが無くなった俺は、何度目になるか分からない溜め息を吐いて例の台詞を言った。


「王様、だーれだ」





 ※





「よし、最初の王様は私!」


 最初の王様に選ばれたのは瑞希だった。瑞希は顎に手を当ててうーんと唸ってから命令を言う。


「じゃあ3番、好きな人を言う」


 ベタだけども、最初からまあまあハードなのが来たな。まあ、俺は1番だから関係ないんだけどな。……ん、てことは……


「はい♪3番私。好きな人はもちろんお父さん。出会った時から今の今まで、ずーっと大好きよ。初めて会ったのは、確か、そう、高校の陸上全国大会の時。……カッコよかったわ。お父さんは砲丸投げで一位を取ったの。それに加え顔も良くて頭脳明晰で……」


「おいおい照れるなあ」


 両親のイチャラブ惚気話が始まってしまった。やっぱり王様ゲームなんて家族でやるもんじゃねぇよ。


 そう思い瑞希の方を見ると、はぁと、溜め息を吐いていた。


 やっと瑞希も分かってくれたか。さあ、早くこんなクソゲーは終わりにして、もっと楽しいことをやろうぜ。


「……次、行こうか」


 ……いや、続けるんかい。


「思ったんだけども、命令をさせる相手は番号じゃなくて指名制にしようよ」


 瑞希突然そんな事を言い出した。


「それはまたどうして?」


「いや、その方が面白そうだし」


 ……成る程な、どうしても俺に命令を聞かせたい訳か。まあ、そっちがその気なら俺は構わない。こっちにも考えがある。


「……ああ、いいよ。その案を採用しよう」


「やったー!!ありがとう、お兄ちゃん!!」


 花のような笑顔を浮かべる瑞希。可愛い顔をしているが、コイツは俺の命を虎視眈々と狙っているのだ。騙されてはいけない。


「よーし!じゃあ王様だ~れだ♪」


 ……にしても可愛いな、コノヤロー。





 ※





「……俺が王様か」


「え~、お兄ちゃんが王様~」


「……そんなに俺が王様なのが嫌か?」


 瑞希は全力のバットサインを俺に送ってくる。普通に傷つくからやめろ。


「……瑞希に命令。3回まわってワンって言え」


「お兄ちゃんの変態!!」


「この程度で変態呼ばわりされる筋合いは無い」


 そう思ってる時点で俺はもしかしたら変態なのかもな。だとしても知ったこっちゃ無いさ。


「……1回、2回、3回まわって……わ、わん?」


 多少ぎこちなさが残るものの、瑞希は命令を遂行してみせた。むしろ、不格好に恥じらいつつやる方が良いな。


 ……やはり俺は変態かもしれない。



 その後も王様ゲームは続き、母さんと父さん、そして俺と瑞希が命令を出し合うマルチバトル形式となった。最も、瑞希は一番最初に王様になって以来、一度も王様になってはいないが。


「うぅ、可笑しい。可笑しいにゃん」


 ちなみににゃんと語尾に付けているのは罰ゲームである。


「何で私が全然王様になれないにゃん!!これは絶対可笑しいにゃん!!」


 瑞希はニャーニャー騒いでいる。


「確率は収束するッ!!王様だーれだッ!!……にゃん」


 取って付けたようなにゃんとともに、瑞希はくじを引く。


「来たにゃぁーん!!」


 本物の猫のような甲高い声を上げて、瑞希は拳を天に上げる。引いたくじには王様を表す星マークが描かれていた。


「これでようやく聞きたかった事が聞けるにゃん」


「聞きたかったこと?」


 瑞希は達成感を含んだ笑みで『そうにゃん』というと、俺を指さして言った。


「お兄ちゃんに命令!帰ってきたとき、ニヤニヤしてた理由は何?説明するにゃん!!はぐらかすのは無しにゃんよ!馬鹿みたいな語尾を付けて喋ってる可愛い妹に対する裏切りだにゃん♪」


「え、なに?気になるんだけど……」


「うんうん、気になる気になる!!」


 両親共々今までに無いほどの食い付きを見せてくる。メチャクチャ答え辛ぇよ……


 だけど無視すれば瑞希からのマジ猫パンチが飛んできそうなので、


「わ、わかった。答えるよ。……じ、実は……」






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