第八話 別れ
「お二人共、準備はよろしいですか?」
村の外門で俺達を待っていた灰は、俺たちの姿を捉えると、一礼をして迎えてきた。
「待たせてしまいすみません。準備は終わりました。雪も大丈夫?」
「えぇ」
俺は雪にも確認を取り、村を見返す。門の近くには沢山の村人が見送りのために集まってくれていた。
「柊、がんばれよ!」
「柊にいちゃんがんばってー」
村人から応援の言葉を受ける。そのことに、嬉しさとこの村を救うため使命感が溢れてきた。
「あぁ!行ってくる!」
俺は高らかに手を挙げた。すると村人は喝采を上げた。そんな中、両親が俺の下に近づいてきた。
「柊……気を付けるんだよ」
そう言って母さんは俺を抱いた。その体は温かく、とても落ち着くものだった。
「柊、頑張れよ」
そう言って父さんは、俺の頭を荒々しく撫でる。その武骨な腕で撫でられるのは、少し痛くもあったがとても安心するものであった。二人の温かさを忘れないようにその感覚を心に刻んだ。
「父さん、母さん、ありがとう。行ってくる」
俺は大腕を振って、この村と村人達に別れを告げた。
「これから向かうのは何処なんだ?」
簡単に整備された道を歩きながら、俺は灰に話し掛けた。
「はい、これから向かうのは、ここから一番近い旅人憩いの町、梓馬です」
灰はそう言い、俺達は村を離れ、梓馬へ向かった。