第七話 深い森
ある森の中、二人は密談をしていた。
「……様!これからどうなさるおつもりですか?」
一人が、主人の前にこうべを垂れ、これからの動きを聞く。主人は、忠臣に楽にするように言い、返答をした。
「まずはあの人間と共に行動する」
「ですが、人間は我々を地に落としました。人間は苦しみから逃れる為に、楽への欲求のために、我々を亡き者にしたのです!そんな人間共に旅をするなんて……」
「仕方ないであろう」
忠臣は、主人のことを思い反論するが、主人に跳ね除けられる。だが忠臣もいても仕方ないことは理解していた。元いた座に戻るためには、人間と協力する事は必要であるからだ。主人は、それを理解しても尚主人のことを思ってくれる忠臣に微笑みかけながら、主人は空を見上げる。そこには葉が生い茂、その隙間から星々が覗く。あぁ、もう我々を地に落とした人間どもは死んでいるだろう。なにせ我々が落とされたのは数百年前の事だ。人間は我々を魔の者とし、勇者が倒す英雄譚が語り継がれている。捏造も良い所だ。だが、今の人間はそれを信じているだろう。我々を悪とし、悪に溺れた者どもを英雄と讃えているだろう。だが、仕方がない、そんな人間に付き従おう。
「今はまだ、な」
主人はそう呟き、不敵に笑った。その姿は、星と共鳴するように白く光る精霊のようにも、憎悪すらも気高く映る白狼のようにも見えた。だが、その姿を唯一見ていた忠臣には、悲しく笑う、一人の女性にしか見えなかった。そんな中主人は空に手を伸ばし握る。再び星を掴もうと。何故掴もうとしているのか、その理由を忘れたまま。