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竜は剣を司る  作者: 波麒 聖
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第六話 灰色の使者

「おはよう、雪」

「おはよう、柊」

 俺は自室から出、リビングに座っていた雪に挨拶をする。

「おや、導きの竜が見つかったら、両親への挨拶は無しかい?」

「気づかなかっただけだよ、母さん、父さん」

「ふぅん、まぁそういうことにしておくよ」

 母さんは少し笑いながらそう言うと、机の上に人数分の食事を用意する。そんな時。コンコン、と家の扉を叩く音がした。

「こんなが朝早くに一体誰かしら?」

 母さんが扉を開けると、そこには黒装束の人が立っていた。

「あ、あなたは?」

 母さんが恐る恐る聞くと、黒装束の人は淡々とした口調で言った。

「私は最も司る竜神様、戦羅せんら様の使いです。ここに竜とその導かれ手はいらっしゃいますか?」

 黒装束の人の言葉に、母さんは嬉しそうに「はい!いますわ!うちのが息子ですもの!」と溌剌はつらつに言い、家の中へ案内する。そして俺達の前までやってくると、雪を見て驚いた顔とやはりと言った顔をし、神妙な顔で見つめる。すると母さんが心配になったのか「どうしましたか?」と言うと、我に返ったのか、黒装束の人は声を発した。

「いえ……あなた方はこれより、戦竜が行う昇竜の儀に参加されました」

 その言葉に、俺は少し心が躍る。両親はその姿に、誇らしさと微笑ましさを混ぜた表情をした。その姿を黒装束の人は見回すように全員を視線に捉えると、話を再開した。

「それでは、あなたお名前をお聞きしてよろしいですか?」

「えっと、冬洞柊とうどうしゅうです」

「冬洞様ですね。私は最も司る竜神様、戦羅せんら様の使いかいと申します。今から、お二人に昇竜の儀の説明をしたします。と言っても内容はいたって簡単です。お二人は三日後、この村を発ち、この世界の様々な場所を巡り、出会った竜とその導かれ手と戦い、勝ち抜いてください。そして残り十ペアになると、竜帝国りゅうていこくに集まっていただき、その後、最終試験を行い、残ったペアが戦竜神の神殿で最後の試練へと挑むことが出来、それをクリアすると、晴れて竜は竜神へ、人は竜人へと昇華します。概要の説明は以上です。ご理解いただけましたか?」

 灰と名乗った黒装束の人は、フードを取り、顔を見せた。名前に沿うように髪と目は灰色で、穏やかな声音と表情の中に鋭いものを感じる、麗騎士れいきしと言うことばがにあいそうな、中性的美青年であった。そんな灰は昇竜の儀のがいようを説明する。聞くだけでは簡単な話であったけど、道は険しいものであることが予想された。世界は広いのだ。全てを回る必要は無いであろうが、かなりの長旅になるであろう。色々と準備をしておかなくてはな。俺はそんな事を考えながら、何気無く周囲を見渡す。両親は灰の言葉を聞いていた。雪は何か考え込むように、いとおしむように灰を見ていたが、俺の視線に気付くと、こちらを見て微笑んだ。その表情は、とても美しかった。雪が眩し過ぎて、俺は目線を逸らした。そんな中、灰は説明を続け、俺はその説明を聞きながら、期待と不安で胸をいっぱいにしていた。

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