第一話 待ちに待った日
「“今日は戦を最も司る竜神様、戦羅様の部下である戦竜達が『導かれ手』として、私たち人間の中から戦竜に導かれ手にふさわしいものをお選びになってくださる儀式。昇竜の儀が始まります。戦竜の導かれ手になった者は様々な国を周り、他の戦竜と導かれ手を最後のペアになるまで打ち倒し、戦竜神の神殿で昇竜の儀の最後の試練を受け、見事合格したペアは、賞金一千万゛ん゛んんん。……竜には戦竜神の称号が、人間にはその補佐として竜人と成れ、様々な恩恵が与えられる“」
早朝、俺が庭で木刀を振っていると、上空からそんな声が聞こえてきた。空を見上げると、そこには一匹の竜が空を飛んでいた。きっと情報を最も司る竜神、知報様の部下の竜であろう。……ついにこの日がやってきた。俺は小さい頃から村の道場に通い、力をつけてきた。それは狩りをするためでもあり、魔物を倒すためでもあったが、第一に戦竜の導かれ手になりたかったのだ。そして十六になった俺は、百年に一度である戦竜の昇竜の儀がやってきた。日ごろの成果が結ばれる時が来たのだ!……
……だが現実はそううまくいかなかった。俺の下に戦竜の姿は現れなかったのだ。
「柊、そんなに落ち込まないで、まだなれない決まったわけではないでしょう?」
「だけどっ!もう戦竜が人を選ぶ期間は終わってしまったんだ!……終わってしまったんだよ」
夕飯の席で、俺、冬洞 柊は無様に泣いていた。母さんも慰めようとしていたが、簡単には落ち着きそうにないと感じると、隣にいる父さんに助けを求めた。
「あなた、どうしましょう……」
母さんそう言うと、父さんは真剣な顔で口を開いた。
「柊、先代様は、竜の導かれ手になったことがあるそうだ」
「……それで?」
俺の中はもうぐしゃぐしゃだが、自分の父さんが真剣な顔で言葉を発するからには、何かあるのだろうと、言葉を促した。
「ダメ元かもしれないが、そこに行ってみないか?」
……今の俺は可能性がほんの少しでもあれば、何でもするつもりだった。
「分かった。行く」
「そうか」
無様に泣いていた俺が、真剣な顔で頷くと、父さんは少しうれしそうに頷き返した。




