第十二話 冒険者試験
「はぁぁ!」
理奈さんの合図の瞬間、彰斗さんが、大剣を前に掲げ真っ直ぐ突撃してくる。その突撃は宛ら魔猪のようだ。俺はそれを見つめ、最善の所で横に飛びひらりと回避する。彰斗さんは回避された瞬間、突進の威力を下げないまま方向転換し、再度突進する。また俺はそれをしっかりと確認し、今度は回避せずに白銀を振るう。すると白銀から冷気が舞い、ゆっくりと彰斗さんの方に向かう。そして、彰斗さんが冷気とぶつかると、冷気が薄い氷となって彰斗さんの全身にこびり付く。『凍息』である。彰斗さんはそのことに驚くとともに、氷により動きを制限されて突進が止まる。俺はそれを見計らって彰斗さんに斬り込む。
「くっ……」
彰斗さんは動揺しつつも俺の袈裟斬りを必死に大剣で防ぐ。
「せ、あぁぁ!」
俺は防がれた大剣(実際には防げてはいなく、紙のように裂けた)ごと彰斗さんを力強く押すと、彰斗さんはそれに逆らわずに後方に下がった。そして今度はトリッキーな動きをしながら腰に付けていた剣を抜き振るう。どうやら『凍息』による行動阻害は溶けたようだ。彰斗さんの次の動きは、腕部に鋭い刃を付けた大蜥蜴刃蜥蜴のように俊敏にこちらへ攻撃を行う。だがその真に迫った動きは、刃蜥蜴を狩り慣れている俺からしたら良い鴨であった。俺は攻撃を完璧に避け、器用に死角へと入り剣に白銀を振るって斬る。俺はそのまま刃蜥蜴の流れで攻撃しようとするが、彰斗さんは咄嗟に剣から手を放し、大きく後退するとともに腰に付けた鞘から二本目の剣を抜刀する。俺はそれを確認しつつ納刀する。
「はぁぁ!」
彰斗さんはもう魔物の真似をするのはやめたようで、真っ直ぐこちらに剣を構えながら走る。俺はその姿をしっかり両目で捉えながら、こちらも彰斗さんに向かって歩く。そして彰斗さんが白銀の間合いに入り、抜刀したその時、背後に悪寒を感じた。その悪寒を信じ、目の前の彰斗さんを視界に捉えつつ抜刀に力をより込めて後ろに振り抜く。。すると、背後で金属の切断音がし、目の前にいた彰斗さんがいなくなっている。どんな技を使ったのか、彰斗さんは背後へ一瞬で移動したようだ。俺が冷静に斬音のした方向に顔を向けると、彰斗さんが動揺したような顔をしながらも、もう一度後ろに飛び、木に立て掛けてあった新しい剣を取ろうとしていた。その行動を理解した瞬間に俺は白銀を地面に突き刺す。すると丁度剣を持ち上げる為に止まった彰斗さんの周囲に氷柱がいくつも立ち、氷の檻を形成する。『氷々柱』である。
「くそっ!」
彰斗さんが剣で氷柱を叩くがビクともしない。数秒して彰斗さんは、項垂れたように攻撃するのをやめ、下を向いた。だが俺はその時にはもう彰斗さんのことを見ていなかった。俺は集中しながら周囲に目を凝らす。傍から見ると周囲の木々に違和感は感じないが、俺は言いようのない何かを感じ、白銀を全方に振るう。『凍息』が辺り一帯に広がり、ゆったりとした速度で木々の中へ入り込む。そしてピキッという音とともに、木々の大部分が薄く凍り付く。
「うおっ!」
その瞬間周囲の木々から、ふとそんな声が聞こえた。そして慌てたように数人の男女が出て来た。その人たちを、俺はまとめて『氷々柱』で閉じ込める。そのタイミングで、理奈さんが声を上げた。
「終了!」




