第十話 鉄貨は最低硬貨
「ちなみに、この町最安の宿屋で一泊大銅貨三枚。最高で一泊銀貨二枚と大銅貨一枚です」
「あら」
一泊も足りませんでした。俺達はまず、情報収集のために役所へと足を運んでいた。そして職員に話を聞いて、俺は焦っていた。 灰が言うには、俺の全財産、つまり鉄貨百二十枚と大鉄貨十三枚は、飲み物一杯分がやっとだそうだ。
「どうしよう」
役場内に設置されている椅子に座りながら俺は頭を抱えていた。
「まぁ、やらなきゃいけないことはお金儲けよね?」
「でもそんな直ぐお金になる仕事ってあるのか?」
雪の言葉に俺は少し逃避気味になりながらも言い返すと、灰がふと言葉を発した。
「ありますよ、そういう仕事」
「本当か!」
俺は場所も弁えず大声を出してしまい、驚いてこちらを向いた人たちに会釈をしながら灰に聞いた。
「一応聞くけど、賭博場だったり娼館、裏取引~とかそう言うのじゃないんだよな?」
俺が聞くと、灰は嘆息を吐いて言い返した。
「当たり前です。別にそれらが完全にダメだとは言いませんし思いませんが、冬洞様はその類の能力やルール、お知りではないと思います。なので今回は却下です。そもそも……」
「そもそも?」
「雪様をそのような所に触れさせるつもりは無いからです」
「な、なるほど」
雪は箱入りなのだろうか?同じ戦竜同士、元々仲が良かったのだろう。「私だってそこら辺の知識ぐわいあるわよ!」と頬を膨らませる雪と、それを宥める灰を眺めつつ、俺は灰に続きを促すと、灰は、そうだったというような様子で話を再開した。
「それでその仕事は、冒険者です」
「冒険者って、あの?」
俺が言うと、灰はコクリと頷く。
「冬洞様はお父様と狩猟をやられていたとか」
「うん、村に二か月に一回来てくれる商人さんとかに売ったり、村で使ったりするためにね。外的駆除の意味合いもこもってたけど」
「冒険者のやるとこはそれとあまり変わらないと思います。薬草などの採取や魔物討伐、偵察や護衛などの依頼を受け、行う仕事です。冒険者には零から拾の階級があり、それによって受けられる依頼も変わっています。最初は全員拾から始まりですが、依頼以外の魔物でも換金を行えます。特殊な事態でも起こらない限り仕事の圧制もありませんから、数日の宿泊飲食雑品代を稼ぐには丁度良いかと」
「なるほど、冒険者か……」
「良いんじゃないかしら、剣術の訓練にもなるでしょうし」
俺は二人の言葉を聞き、少しの思考の後に「そうだな」と言って立ち上がる。そして俺達は役所の人に場所を聞き、冒険者ギルドへと向かった。




