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第3話 “堂”の名を持つ者【後半】

あとがきが脱線しまくってるので、前書きで明日の予告。

明日は変則的で14時と16時に更新します。

よろしくおねがいします。

「君は魔導工学も得意なんだろ?」


 その言葉に和真は思わず学院長を睨みつけていた。

 動揺が表に出てしまうとは我ながら何とも情けない――と、我に返った和真は反省する。


「どこでそれを?」


「遥輝は私の同窓生でね。色々と聞き出した」


 冷静を取り戻して質問する和真に対し、まるで「してやったり!」とでも言いたげな得意げな顔をする学院長。

 この人は意外に表情豊かな人なんだと認識を改めつつ、和真も特に隠している訳ではないが、公言していないことがそんなあっさり――それも五大堂家の当主から――聞けてしまっていいものなのだろうかとは考えてしまう。

 というのも、今の東洋魔術界を牽引しているのは五大堂家である。

 ある意味で国のトップの一角と言っても過言ではない。

 その発言力は軍幹部を超える。

 故に、五大堂家はそれぞれの力が等しくある必要がある。

 そうでなければ一族で極東を支配するという独裁政権が確立されてしまうからだ。

 五大堂家は元々、戦争に反対していた家柄であるため、今もなお世界大戦は愚か、他国と争うことすら望んでいない。

 独裁政治を決行して、ナチスや大日本帝国の二の舞になるのだけは避けたいのだ。

 そういう意味では五大堂家はバランスよく得意分野が分かれていると言える。

 お互いがお互いをいい意味で牽制しているのだ。

 まぁ、それでも相手が五大堂家の中でも特に変わり者の多い獅子堂の人間なんだからさもありなん――と和真は納得することにした。


「私が東京と京都の両方で魔術と魔導の両方を学ぶ事が出来るよう進言し、新たな教育体制が導入されたのは事実だ。

 とはいえ、やはり京都は魔術と考える者が多いのも事実。魔術に固執し魔導に移ろうとしない者は多いだろう。

 そこで、私はここ京都においてとある試験クラスを設けることにした」


「試験クラスですか?」


「そうだ。と言っても、私が新設したクラスはそれだけではないがな」


 魔導科目の導入に伴い、魔工師を目指すクラスなども新設された。

 これは、魔導を取り扱う以上、魔導工学に関する知識を持った者が必要であり、中京へ行けない生徒でも魔導工学を学べる環境を作るべきだと学院長が考えたためだ。

 土地の拡張が容易ではない東京側からは、色々と言われたそうだが、学院長は全て受け流して学院の拡張に務めていた。

 和真は遥輝に聞かされていなかったが、この方針に五大堂家が賛同しているらしく、学院側としても無視できない状態になったというのが真相。

 そのため、魔導や魔導工学に関しては、天堂院家、五位堂家、紫法堂家の三家が協力。逆に魔術に関しては緋堂家と獅子堂家の二家が協力した。

 結果として――


・魔術科クラス:Ⅰ〜Ⅴ組


・魔導科クラス:Ⅵ組


・魔工科クラス:Ⅶ組


 と、元々のクラスに新たに魔導科と魔工科の二種が追加された。

 更に――


「試験クラスの名は“特科クラス:零組”。

 魔術師、魔導師、魔工師混合のクラスだ」


「流石に三つを合わせるのはカリキュラム的にどうなんです?」


 百歩譲って魔工師が魔導師の座学を受ける理由は分かる。

 より良い発動体(デバイス)を制作するには、当然発動対象である魔導を理解する必要があるからだ。

 その逆も然りだろう。

 使うものの性質が分からなければ、百パーセントの力を引き出すことは出来ない。

 しかし、魔導や魔導工学と魔術は根本的に違う。

 発動方法も理論も何もかもだ。

 とても同じクラスでやっていけるとは思えない。


「私も脳筋一家(ししどう)の人間だが馬鹿ではない。

 そこら辺もちゃんと考えているさ」


 学院長の構想する特科クラスはこうだ。

 特科クラスは筆記試験の最優秀者のみで構成される。

 筆記試験で九割を超えるということは、学院で教える範囲内の魔術知識を既に習得しているということ。

 なぜなら東洋魔術は未だ研究中の未知の技術であり、基礎知識を身に着けた後は己で新たな可能性を見出すものだからだ。

 となれば、必然的に特科クラスの生徒はそれぞれの分野の座学を受ける必要がないということになる。勿論、教養科目の座学は受けないといけないが……

 とはいえ、それは全科共通だ。

 クラス別の座学がなくなり、実技だけとなれば当然、魔術も魔導も魔導工学も関係ない。

 今までは違うにしても、結局社会に出てしまえば混合で活動することになるのだから。

 魔工師は魔術師と魔導師の戦闘データを基に新たな魔術理論や魔導機構の開発を行える。

 確かに、混合クラスの設立は実現可能のように思える。


「つまり、君たち零組は実技ばっかりのカリキュラムということだ。

 まぁ、他のクラスに比べればハードだろうが、軍に入ろうものならもっとハードだから大したこともあるまい」


「別に学卒が必ず軍人になるわけではありませんけどね」


 実際、戦争をする気のない極東は他国と違い徴兵制度はない。むしろ、第二次世界大戦の影響で毛嫌いしている傾向にある。

 そのため、本科生課程を修めた魔術師や魔導師も大半が警備会社や一般企業への就職を希望する。

 逆に言えば、軍に入る気のない人間が零組に入っても、普通に考えれば大したメリットはないということだ。

 つまり、学院長は彼ら彼女らに取って、零組への配属にメリットがあると考えているのだ。


「零組に配属になった者の多くが、色々な事情を抱えて知識は人一倍あるものの、実技が伴わない癖のある連中だ。

 君には彼らを導く光となって欲しいと思ってな。駄目か?」


「少々、過大評価が過ぎる気もしますが……」


「過大評価ではない。決闘に関しては最初から影で見ていた。

 君には見込みがある。それとも、“堂”の名を持つ者の責務だと強制した方がいいか?」


 “堂”の名を持つ者の責務――それは、五大堂家の人間として、東洋魔術業界の先頭に立ち、極東民をより良い方向へと導くこと。

 確かに、実技が伴わないというなら、どこかしらに欠陥があるということ。

 それを見破りよい魔術師、ないしは魔導師へと昇華させるのは、責務と言っても過言ではないと言える。


「……。わかりました。自分でしか試せなかった試作品を、堂々と試せるテスターが手に入ったと思えば、俺としてもむしろ好都合というものです」


 もはや隠す意味がないからこその発言だ。

 和真は魔術を扱えるが同時に魔導も扱う。

 極東は愚か世界的に見ても銃の携行は有効とされる。

 それは、魔術を放つより弾丸撃ち込んだ方が早いからだ。

 しかし、それで魔術師を殺せるかと言われれば答えは否。

 多くの場合、それも狙われるほど有名な魔術師となれば、常時簡易的な物理障壁を体を覆うオーラの様に展開している。

 流石に獅子堂の物理攻撃を防げるほどの防御能力は持ち合わせないが、ハンドガンやマシンガン程度の攻撃であれば全て弾けるほどの防御能力を備えている。

 もはや、上位魔術師は皮膚自体が防弾という旧世代の兵器に頼るただの人から見ればデタラメの様な存在なのだ。

 そこで護身用として現在、各要人に支持されているのが魔導銃である。

 予め魔力をシリンダーに込めて置くことができ、引き金を引けば通常の銃と同様、魔力を弾丸として打ち出すことが出来る。

 故に物理障壁程度は余裕でぶち抜く。

 最近では、物理障壁と魔力障壁を同時展開するようになったため有効打を与えられるわけではないが、それでも十分に脅威になりえるものである。

 故に魔術と魔導にはそれぞれ長所があり、それぞれ短所がある。

 和真はこの二つを掛け合わせた先にある新たな“法”を研究している。

 もっとも、人道的範囲内で(・・・・・・・)という条件付きではあるが……

 それこそが五大堂家の探し求める東洋魔術の深淵――“魔法”である。

 ただし、深淵に至るにはまだ程遠い。

 魔導師が魔術師の様に魔術を扱えないように、魔術師もまた魔導師ほど自由に魔導を扱えるわけではないのだから。

 零組は魔術師と魔導師が集まるクラスだ。

 ならばまずは見極めよう。誰が魔術師として大成するか。そして、誰が魔導師として大成するかを――

 和真が研究中の式や術式はどれも癖が強い。

 故に扱える者が欲しかったのだ。

 そう考えると、実技が伴わない(・・・・・・・)――つまり、普通が通じないというのは、むしろ和真にとって好都合だった。


(どちらも適性がなければ、魔工師に仕上げればいい。

 知識と魔力の流れを認識できる素養があれば問題ない)


 こうして、和真が零組を率いることは決まった。

 とはいえ、クラスメイトになるメンバーに認められなければどうしようもない。

 そこは、和真のコミュニケーション能力次第だろう。

 ああは言ったものの前途多難だと思いつつ、和真は始業式を終えクラスへ向かう生徒たちに紛れるのだった。

皆さん、こんにちは。初仁です。

気付けば、この回で9部に入ります。

伸び率は「才女の異世界開拓記」と比べるとかなり悪いですがね(汗)

2chで叩かれているのを見て、こっちではあとがきを書かないようにしていたのがいけないのでしょうか?

まぁ、私の書く三人称が読みにく過ぎるだけでしょう。


では、また次回。

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