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第7話 亜空銃士 VS 破砕棍【後半】

お待たせしました。最新話更新です。

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 セラと仙樹がそれぞれ位置に付いた。

 模擬戦の進行役は和真が務める。


「早速だが、模擬戦を開始する。

 魔導師代表は井頭仙樹。魔術師代表は宇津井セラ。

 戦闘時間は無制限。チップは勝者サイドから零組委員長を選出する。

 勝利条件は……」


――相手を認めさせること


 観測室にいる全員が和真を見た。

 模擬戦システムは進行役が勝利条件を設定できる。

 本来であれば、事前に両者と話し合って決めておくものなのだが、和真はこの条件を付けるためにあえて話していなかった。

 何を持って勝利とするか分からない曖昧な条件を突きつけられ困惑する二人を他所に、試合の開始が告げられる。


「試合開始」


 最初に聞こえてきたのは地面が砕かれる音だった。

 舞い上がった土煙が晴れると、そこには大きなデバイスを振り下ろし終えた仙樹と、後方へ飛んで攻撃を回避したセラがいた。

 仙樹は迷っても仕方がないと、まずは自分の力を見せることにしたのだ。


「あの形状と現象から見るに、井頭のデバイスは破砕棍シリーズか」


「破砕棍?」


 和真の隣で首を傾げている涼華。

 涼華は生粋の魔術師のため、魔導師やデバイスに関する知識に疎い。

 最近に至っては、和真が知ってるから自分が知る必要はないとすら考えている様子だ。

 とはいえ、和真はそれを良しとしないので、一から説明しようとしたのだが、説明は意外なところから聞こえてきた。

 寝ていた彼女だ。


「聞いたことがある。国防軍のとある旅団で研究開発されている武装一体型デバイスで、主に御位堂の開発する魔導アーマーや旧世代武装である戦車などと、近接戦闘を行うことを想定したデバイスだったはず」


 少しの出来事からデバイスを言い当てる和真も相当だが、名前を聞いただけで詳細を答えられる魔工師の面子も中々だ。

 特に実際に説明してみせた彼女、東雲玲奈の評価は改めざるを得ないと和真は感じた。

 破砕棍とは字のごとく、物を破壊することに特化した武装一体型デバイスだ。

 名のある魔導師の中には、獅子堂の道場で訓練を積んだ後、魔導にクラスチェンジした者も多くいる。

 魔術師である獅子堂での訓練が魔導に活かせるのは、獅子堂の道場で最初に行う訓練が昔ながらの体力づくりと、武道の基礎訓練だからである。

 ただ魔術を使うのではなく、魔術を使った近接格闘術を扱う場合、基本の動きが出来ていないと、魔術を使ったところで脅威にはならない。

 素人が一発で相手を昏倒させられるパンチを持っていたとしても、当てることが出来なければ宝の持ち腐れだ。

 そのための基礎訓練であり、その基礎訓練で身につけた体術を魔導で使う。

 そうして研究開発されたのが、武装一体型デバイス――通称、武装デバイスと呼ばれるものだ。

 一見すると、ただの旧世代武装に見えるが、そこにデバイスが組み込まれ、魔導と連携して使えるという優れものだ。

 破砕棍の場合は、魔導アーマーや戦車との戦闘を想定している関係で、鋼鉄の装甲をぶち破る事が出来るような術式が組み込まれている。

 当然だが、人がまともに喰らえばひとたまりもない。


「あ、あれは危険なんじゃないかな?」


 燐も破砕棍の術式を知っているのか、危険性を示唆している。

 実際、ある程度調整はされているようだが、威力が弱まり切っているとは言い切れない。

 パワーでは完全にセラの上を行くだろう。

 しかし、その分セラの回避能力は一級品だ。

 ただのパワープレーである仙樹の攻撃など、当たる由もない。


「ま、どうせ当たらないだろうから問題ないだろう。

 ただし、後で厳重注意だな」


「どうせ当たらないとは、何とも可哀想な評価ですね」


 和真の評価を集も気の毒に思ったのか、そんなことを言ってくる。

 正しく情報を収集する御影家の人間が、私情を加えるのは珍しい。


「俺は詳しく知らないんだが、井頭が落ちこぼれって言われた理由はなんだ?」


「まぁ、恐らく模擬戦の戦績でしょうね。

 今までは魔導の使用が禁じられていましたから、どうしても魔術棍が手に馴染まなかったのでしょう」


「それにしたって棍棒を使った戦闘が下手すぎる。

 もしかして予科生になってから武器を持ったのか?」


「井頭家は普通の一般家庭ですからね。

 叔父が魔導師だったとかで学院に入学したようですよ」


 本当によく知ってるなと思いつつ、和真は仙樹を見る。

 それはただただ振り回しているだけのようにも見える。

 一緒に観戦している魔導師組は動きがいつもより良いと言っているが、魔術処理に気を取られて攻撃に集中できていなかったのだとすれば、魔導処理になる分、動きがよくなるのは当たり前のことだ。

 それに、武装をデバイスを振り回せるだけの膂力もある。

 環境が悪かったとしか言いようがない。

 学院長はそういった細かいとこまで把握していて、魔導授業の受け入れを提案していたのかもしれないと和真は改めて、獅子堂八重の凄さを思い知った。


「さて、そろそろセラが反撃に出るかな?」


「それは楽しみですね。彼女のデバイスは見たことありませんから」


 集が早く知りたいと言わんばかりに、期待を口にする。

 特殊魔法兵装は普及していないだけで秘匿しているわけではない。

 集も見ればすぐに分かるのではないかと思っていた和真は、集が本当に知らなくてそう言っているのかよく分からなかった。


「白井と東雲はどのくらいデバイスの種類を知っているんだ?」


「わ、私は携帯デバイスと武装デバイスしか……」


「私は他にドングル型デバイスも知っている」


 魔導デバイスには複数の種類がある。

 通常はスマートフォンの様な形をした物体を用いた携帯デバイスを扱う。

 しかし、軍属で武器の携帯を認められている者なら武装と一体型の武装デバイスが多い。

 また、USBポートの付いた機器に接続して扱う特殊な魔導デバイスも存在し、ドングル型デバイスと呼ばれている。


「とは言え、ドングル型は接続に魔導技術を使っているだけで、処理は魔術処理だぞ?」


「それもそうだね。で、あれは?」


 玲奈の指差す先にはセラのデバイスが映っている。

 反応を見る限りは玲奈も燐も「普通の武装デバイスではないが、何かは分からない」といった見解のようだ。


「二人とも特殊魔法兵装については知っているか?」


「理屈は聞いたことがある。でも、実在するかは知らない」


「じ、実在はするよ。御位堂家と紫法堂家が魔力炉開発の合間に研究していたはずだし、テスターもいたはずだから」


「まさか、あれが?」


 玲奈は信じられない物を見るかのように和真を見る。

 集や先生も特殊魔法兵装のことは知っているようだが、他の面子は和真が“魔法”と言ったことに戸惑いを隠せていない。


「そうだ。あれは俺が開発した特殊魔法兵装“亜空銃士”。

 セラの持つ空間把握能力があって初めて力を発揮できる欠陥品の一つだ」


「御位堂と紫法堂が研究しているものを作っておいて、《《欠陥品》》なんて贅沢がすぎる」


「事実、いくら調整しようとも特定の条件をクリアした者でないと使えない。

 欠陥品は欠陥品だ」


 今の言い方ではある程度の条件さえクリアすれば使えるようにも聞こえるが、実際にはセラの異能があってこその亜空銃士だ。

 特定の条件=空間把握の異能を持つことである以上、宇津井の血統以外で扱える者はいないも同然だろう。

 だが、和真はセラが異能者であることを話す気はなかった。

 やはり、そういうものは自分で言うべきことだと考えたからだ。

 故にただ一言、自ら制作したデバイスを欠陥品と称した。


「ただ、欠陥品とはいえ、完成形の一つだと言える。

 特定条件を限りなく減らす工夫が今後は求められると言ったところか。

 まぁ何にせよ。見ていて損はさせないはずだ」

 

 その言葉に操られたかの様に、全員が亜空銃士へと視線が吸い寄せられたのは言うまでもないだろう。


【to be continued...】

こんにちは、初仁です。

明日から、また三連勤なので、更新の間が空きます。

月曜日には公開できるように執筆を勧めるつもりです。

では、また次回。

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