悪魔
ショートショートです。
朝の通勤ラッシュの喧騒の中、私は道端でランプを拾った。それはまるでアラビアンナイトに出てくる魔法のランプのような形をしていた。私はそのランプについていた泥を作業服の袖で拭った。すると、ボンという乾いた破裂音とともにランプの中から角を生やした真っ黒な男が出てきた。
「俺は悪魔だ。お前の望みをなんでも叶えてやろう。」その男はそう言った。
「じゃあ、一生食べるのに困らないだけの金をくれ。」私は一文無しだったので、特に考えもせず何の気なしにそう言った。
「わかった。それではただちに願いを叶えよう。さらばだ、人間よ。」そう言って煙とともに男は消え、その場にはランプとわずかばかりの硬貨のみが残されていた。
「ちぇっ、500円か。これじゃ朝食を食べたらまたすっからかんだ。」私はそう言ったが、まぁ道端で拾った悪魔ならこんなものかと思い直しもした。いつも行く定食屋で朝食を食べる。残金はたちまちゼロだ。その定食屋を出たところで私は車にひかれてあっけなく死んだ。そうか、一生食べるのには困らなかったな。