8 幼馴染とお弁当
ゆ、ゆうちゃん料理出来たの!?
「いっくん!はい、今日のお弁当だよー」
昼休みに入ると私は真っ先にお弁当を持っていっくんの所へ向かう。
朝は親がご飯を作るが昼に関しては自分の分もいっくんの分も自身で作るのが私なりのこだわりだ。
「ありがとうゆうちゃん」
なれたもので、いっくんも当たり前のように受け取ってくれる。
ちなみに、いっくんのお弁当箱は女子の私と同じくらい小さめのものだ。
いっくんはサイズに比べて大食い・・・なんてアニメキャラみたいな特性はなく、普通にサイズ通り少食で、子供が使うキャラクターの柄が入った弁当箱くらいのサイズでも足りてしまうのだ。
・・・まあ、お弁当箱の柄は普通のやつだけどね。
前にキャラクター物で渡したら少し不機嫌になって、でも作ってくれたら文句も言えず・・・みたいな複雑な表情をした可愛いいっくんの姿を拝めたので何度かはやっているが、基本的には普通の柄にした。
私もいっくんのそういう姿をみるのは好きだがやり過ぎて嫌われてしまうのは嫌なので自重する。
もちろん、この程度でいっくんが私を嫌いになるとは思わないけど・・・もし、いっくんを積極的に狙う恋のライバルが現れたらそれがマイナスになるかもしれないので、ある程度我慢は必要だ。
「お?今日も愛妻弁当か一樹?」
そんな感じで渡していたら、いつのまにか側に来ていた山崎がいっくんにいつものようにそう言った。
「あ、愛妻って・・・いや、ゆうちゃんは・・・その・・・」
いっくんは毎回同じようなことを言われているはずなのに毎回律儀に照れてくれるから可愛い!
ちなみに、この時ばかりは変態の山崎のことを私は誉めてもいいと思える瞬間だ。
よく言ったぞ変態!
「いっくん。食べよう」
私は照れて可愛いいっくんにそう声をかけて正気に戻させる。
私はいっくんの近くに座り、そして友人たちは少しだけ離れた位置に座る。
これはお昼の時にみんなが気を使ってくれた結果の位置なのだが、私といっくんのお昼を優先するためなのか、少しだけ距離をあけて一緒に食べるというかたちになった。
いや、ほんとに良くできた友だよ!
まあ、いっくん側の空気の読めない山崎が最初は割り込もうとしてきたりはしたけど、そこは頼りになる龍ヶ崎くんがなんとかしてくれた。
インテリなイケメンはやはりすごい。
「いっくんおいしい?」
「うん。美味しいよ!」
食事の時のいっくんはいつもより無防備・・・というか子供っぽくなるので、そう明るく感想を返してくれる。
私はその返事に内心でガッツポーズ&デレデレしながら「よかった・・・」としおらしく返事をする。
「いつもありがとうね、ゆうちゃん」
「突然どうしたの?いっくん?」
「いや・・・なんとなくね」
照れくさそうにそう言ったいっくん。
その表情はどこか懐しさを感じるもので・・・でもやっぱりいつもの可愛いいっくんのままな姿に私はやはり内心で悶えてしまい、「うん・・・」という返事しか出来なかった。