3 幼馴染は人気者
いっくんはモテる
ゆうちゃんはドS
いっくんとの登下校をする理由はいくつかある。
もちろん、私がいっくんと一緒にいたいというのと、昔からの習慣というのが大きいけど、それ以外にもきちんと理由はある。
「あ、七瀬くんおはよー!」
「お、おはようございます・・・」
「お、七瀬!おはよう!」
「おはよう!」
「七瀬くん。おはよう」
「うん。おはよう」
「なーなせくん!おっはー!」
「あ、えっと・・・おはよう・・・」
ご覧の通り、学校が近づいてくるといっくんは様々な人から挨拶をされる。
もちろん知り合いが多いけど、いっくんは知らない人からもよく挨拶をされる。
特に多いのが女子で・・・こういったらあれだけど、いっくんは非常にモテる。
それはそれは、私が嫉妬するくらいに女子からも・・・そして男子からもモテる。
普通は嫉妬する男子もいそうなのだが、皆純粋ないっくんの様子をみて、愛でる方向へとシフトするのだ。
そして、いっくんは・・・モテるのに女子が苦手なのだ。
私以外の女子とはまともに目を合わせることもできないし、話すと顔を赤くしてしまうのだ。
そしてそんな様子に多くの女子は心を打たれてしまい、今では「七瀬一樹ファンクラブ」なるものまであるらしい。
いや、実際いっくんが他の女子と話そうとする現場を見たことがあるけど気持ちは分かる。
だって、顔を真っ赤にしてうつむきがちで・・・恋する乙女のようなしぐさをするんだよ?あれは反則だよ反則。
しかも、何かしてもらったりしたら律儀にお礼を言う子だから、赤い顔ではにかみながら「ありがとう・・・」なんて言うんだよ。
もはや、皆の内心は「萌え」以外ないでしょ!
と、まあ、長々語ったけど要するに私の役目は虫除けもかねているのです。
いや、正直、いっくんが女子と話してあたふたする姿を見るのはそそる・・・じゃなくて、可哀想っていうのもあるけど、なんとなくやっぱり私以外の女の子と話すのは私の独占欲的にも許しがたいので、私はいっくんの側にいるのだ。
ちなみに・・・いっくんが女の子と話すのが苦手になったのは私の昔からの調教の成果なんだけど・・・それはいっくんには内緒で。
「いっくんは人気者だねー」
思考を振り払うように私はいっくんにそういった。
するといっくんははにかんだような笑みを浮かべた。
「そんなことないよ・・・ゆうちゃんこそ人気じゃない?」
「そう?」
「だって、ゆうちゃん女の子の友達沢山いるし」
それは半分はいっくんのファンだよ?
「先生からも信頼されてるし」
まあ、いっくんの過激なファンを抑えてるからね。
「それに・・・男の子とも仲良いし・・・」
拗ねたように呟くいっくん。
あれ?もしかして嫉妬?嫉妬なの?
いっくん私が男子と話してて独占欲刺激されてるの?
可愛い・・・!なんて可愛いのいっくん・・・!
「大丈夫だよ。私の一番はいっくんだからね」
にやけそうになるのを抑えて笑顔で私はいっくんにそう言った。
するといっくんは顔を赤くして視線をそらしてしまった。
恥ずかしそうにしているいっくんの姿に周りの人はもちろん、私も萌えてしまったことは仕方ないだろう。