本編開始 普通の高校生 出陣
どうも初めまして、長谷川和也です。
突然ですが、「当たり前」、この言葉について皆さんはどう思いますか?
誰が考えてもそうであるべきなこと。当然なこと。辞書で調べると、このような意味が出てきます。大体の意味は皆知っていると思います。
では、本題はここからです。もし当たり前が、当たり前でなくなった時には皆さんはどうしますか?
当たり前の例を挙げると‥‥‥働けば給料が貰える。当たり前ですね。歩くためには足を動かす。生きるためには食事をとる。この辺の例だと当たり前過ぎますね。
では当たり前が当たり前でなくなった時の例を挙げると、例えば、あなたが異世界に転生したとします。そこであなたは、会話をしたり、食事したり、女の子とイチャイチャしたり、魔王を倒しに行ったり。
ですが、その異世界で、あなたの言葉は通じなかったり、食事が普段私たちが食べないものだったり、そもそも女の子にモテなかったり、魔王が強すぎたりすることだってあるはずです。
異世界に行きたいと思っている人がいると思いますが、当たり前のように言葉が通じるとは限りません。女の子が絶対にいるとは限りません。そもそも異世界に行く前に何かを貰えるとは限りません。
当たり前のように言葉が通じ、当たり前のようにハーレムができ、当たり前のように異世界に行く前に何かを貰えると考えてはいませんか。
当たり前が当たり前でなくなった時、人は驚きを隠せないと思います。驚きを通り越すかもしれません。
では、最後に一つ。変身した後のコスチュームが、必ずしも変身する人の性別と合っているとは限らない。これだけは必ず頭のどこかに入れておいた方が身のためです。
「魔法少女」となった少年からでした。
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重たい目を擦りながらベッドから起き上がる。窓を開ければ眩しい日の光が・・・、何てこともなく、どん雲りの空。五月の始めだが、少しばかり寒い。流石に曇りの日だと布団を掛けてないと風を引きそうだ。
少年は目覚めてない体を起こす。こうしてまたいつもの一日が始まる。いつもの日常が始まる。
今はまだ。
少年の名は長谷川和也
どこにでもいる高校一年生。
学力は平均。運動能力も平均。
その他諸々も平均及び普通。特殊な才能はこれといって持ち合わせていない。
総合評価も普通。
つまり普通の一般人、アニメやゲームの登場人物に例えるて言うと「待ち人C」になる。
本当にただの高校生。
和也は布団から重たい体を動かし、部屋を出て、階段を降りリビングへ。家の中には彼以外誰もいない。
父親は単身赴任中で家を出ており、母親は朝から仕事。
中学生の妹は部活の朝練のため、朝早くから学校に行っている。
「‥‥‥。」
テレビをつけると、朝のニュース番組の音が寂しく鳴いている。テレビ以外の雑音がないから、余計にそう聞こえる。
その風景は、独り暮らししてる人みたいだった。しかし和也は、寂しいという感情はない。当の昔に消えていた。
いつもの通りに身支度を始める。朝食を食べて、着替えて、歯磨きをしたり、顔を洗ったり‥‥‥。スマホに届いていたメッセージを見て‥‥。
身支度を終えると、学校に向かう為、家を出た。
幸い学校から家までの距離は近く、歩いて行くことができる。自転車通学も出来るが、今日は何だか気分が乗らなかった。
ただただ歩いて学校へ。見尽くした景色が通りすぎて行く。数十分歩けば‥‥学校が見える。
「よいっしょっと」
学校に着き、和也は自分の席に座った。窓側の後から三番目の席だ。そして机に腕を伸ばして、楽な体制へ。まだ体が重たかったからだ。
学力的に見れば、レベルは普通。彼自信の能力に合っていたし、家も近かったため、この学校を選んだ。
着いた時間は決して早くはなく、教室には数十人いたが、そのなかでも、教室で話をしている二人が気になった。楽な体制からチラリと視線がそちらへ。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
ひそひそ話をしているのを見たら、やはり内容が気になってしまうものだ。和也自信も気にしてしまう。ましてや、最近になって良く見かける光景。そして、している人も―――。
ひそひそ話をしていた二人が頷き、会話が終わった。すると先程の一人が、和也の方を向いた。慌てて、視線を逸らして、気にしてないことにしようとした。
「オッスー、どうしたそんな難しい顔して」
「別に、何でもねぇよ」
今、話をかけてきた男は、宮本 慧。
小学校からの幼なじみで、少し茶髪っぽい髪に眼鏡が特徴、背丈は和也と同じくらい。
自宅がお互いに少し近いってことで、小学校の時に仲良くなり、現在まで長い付き合いに至っている。
返事をして慧の方へ向くときに、先程、慧と会話していた黒髪のショートヘアの少女へと、一瞬ちらりと目線を動かし、慧に視線を戻した。
國行 愛理
こちらは中学校からの知り合い。同じクラスに、中二と中三の時になっている。容姿端麗であり、高校でも、可愛いと言われるほど。男子には人気がある存在。
「何か話してたべ?」
とそれとなく慧にひそひそ話の詮索をする。他人のひそひそ話は気になるし、何せ知っている二人だから、余計に気になってしまうのだろう。
慧は和也の前の席に乗っかり、窓の外を覗きながら答えた。
「なぁーに、他愛もない世間話さ、気にすんなって」
上手い感じで濁されてしまった。世間話をひそひそ話でする必要があるかは、わからないが、これ以上聞いても答えが、でなさそうなのは明白だった。
「そっか」
と軽い返事で返した。
最近はよくこの光景を、よく目にしている。慧と愛理がひそひそ話をしているところを。実際には、凄く気になっていた。
以前までは和也は慧と一緒に学校に登校していたのだが、ひそひそ話を見かけるようになってからは、その機会が減っていた。というのも慧に、先に行ってて、と言われる事が増えていたからだ。
ただ稀に、先に行ってて、と言ってるのに慧が、先に学校に着いている時なんかもあった。あのひそひそ話には何かがあるのだろうか。
とは言え、和也みたいな考えの方が、まだ良い方だろう。
高校生にもなると、二人きりで話していただけで、噂が立つものだった。
現に一部の同学年からは、二人は付き合っている、なんて噂が立っている。
その事を耳にした和也は直接、慧に真相を聞いたこともあった。
「なんだそれ?どっからそうなるよ」
と、完全否定だった。
ただ、こういうことは一度気になってしまったら気になるものだった。和也も例外ではなかった。内容に関してはどちらでも良かったが。
「ふぅ・・・」
気持ちを切り替えるために、軽く息を吐いた。頭に酸素がようやく送られてくる気がした。体が目覚め始めたというべきか。
その様子を見た慧は、机からちゃんと椅子に座った。何かを察したのか、はたまた会話が続かなかったからか‥‥。
楽な姿勢だった体を起こした。起こすときに、ふと窓の外の空を見た。綺麗でもなんでもない雲っている空。ゆっくりと雲が動いている。
ガラガラとドアが開く。担任の先生が入ってきて、話を始めた。
こうして、何の変哲もない、いつもの和也の日常が始まっていく。
はずだった。
その後に起こることなど、和也は知るよしもなかった。
ただの日常は、この日の帰り道で、終わりを告げることを。