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A-1 新旧の男爵


これはこの地球から遠い場所の話

セラミーが長谷川和也と出会う少し前




 「それは少し難しいと何度も言ったはずですが、アルベルト男爵……」  



 一人の男が恐縮しながら答える。見ればわかる、話し相手が苛ついていることは。



 「お前じゃ埒があかない! 本部と話をさせろと言っているのだ!」



 一人の怒号が静かな空間をこだました。

モニター越しの相手に関して腹を立てている。何度も同じ質問をしては同じ答えが帰ってくる。



 「ですから私が本部から命じられ対応しています」



 このやり取りも何回目か、先程から話が進まず、男の怒りは増していくばかり。座っている椅子を叩いて八つ当たりをするのも何度目か。



 「もういい! 貴様と話しても時間の無駄だ!」


 ちっ、と軽く舌打ちをした後、感情のままにモニターの電源を切った。モニターは黒くなり、ザーザーと音をたてる。



 「……もはや本部ですら、我らアルベルト軍を見放したと言うのか……」




 そう思うと怒りが込み上げてくる。

 我らにはよう済みだと…、そうでしか思えない。モニターに写っていた男もそういう対応をしていたと思ってしまう。


 クソッ、と座っていた椅子を蹴り、再び八つ当たりをした。



 (酌だが、現場では本部の助け無しでは侵略どころか攻撃もままならないと言うのに!)


 今の現状を考えれば考えるほど怒りが収まらない。現在の軍の状況も、本部の対も。 

 そんな中一人が部屋に入ってきた。



 「アルベルト男爵様、軍の準備が整いました」



 男は頭を下げ、挨拶を終えると数歩歩き部屋に入る。



 「ぬ、お主か。それはご苦労だった」




 「してどうでしたか、大きな声を出されていましたが」



ドア越しにまで聞こえていたので何があったのか

聞かなくても何となく分かるが、聞くのも部下の役目



そう思った先程入って来た部下は男爵に近づきながら言った。



 「本部はもうあてにならん」




 「……作用でございますか」



 「……出発の準備をしとけ、私も行く」



 覚悟を決めたのか、座っていた椅子から立ちあがり、ドアに向かいながら歩きだす。

 それを見て部下は少しあわてながら、



 「男爵様も行かれるつもりですか! ここはわれわれだけで――」



 ボスがやることではない、そう言いたいのか、ボスに少しでも楽させたいという部下の粋な計らいか。

 どちらにしてもボス、もとい男爵の決意は固く、部下の言葉は突き刺さらない。



 「本部は我々とは見切りをつけたいらしい、此度は、我々アルベルト軍の最後のチャンスだ、失敗は許されん……」



 「ですが・・・」



 「やかましい! 私が行くと言っておるのだ!」



 後がない焦りなのか、何も考えずに言動が出てくる。そしてこの状態では何を言っても止まらない。

 部下は頭を下げながら、申し訳ありませんと言い、部下は小さくほんの小さくこう言った。




 やはりか、と




 ボソッと、ほんの小さな声の為、何を言ったかわからない。聞き取れるはずがない。

それでも何か発したことはわかったらしい。



 

「お主、今何か――」



「今はまだ行かなくて良いですよ」



「? どう言うこ――――」




グサッ




 それは男爵が部下の男とすれ違う時だった。男爵がしゃべり終わる前に音がした。

 男爵の体に衝撃が走る。

 上手く動かない、痛みが走る。

 それでも何とか痛みがする方へ目線を向けると、体に剣が刺さっていた。剣の近くを触ると手に赤い液体がついている。

 剣はどうやら貫通している。そして地面には赤い液体が勢いよく流れる。それが自分の血だと理解するのに数秒かかり、理解すると同時に、男爵は地面に倒れた。



「…………き、貴様……な、何を……」



 男爵は理解ができなかった。


 何故今、自分の目線が床に向いているのか。何故今、自分は倒れているのか。何故今、自分の血が流れているのか。何故今、自分の体に剣が刺さっているのか。何故今、自分の体に痛みが走るのか。何故今、部下に剣を刺されたのか。何故今、何故今、何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故



 「……悪く思わないで下さい、これも本部の決定事項ですから」



 先程の男爵との会話から一変し、声のトーンが変わる。高かった声から、どす黒い声へと。

 部下は倒れて上手く動けない男爵に向かい小さく話しかけた。


 そして倒れている男爵を触った。




 ううぐ、ヌオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!



 男爵は苦痛をあげる。何かを吸収した部下はニヤリと微笑む。



「さすがに凄い魔力だ! 少し足りないがこれで我が作戦は大いに前進だ!」 



フフフと小さく笑い



 「これからは私がアルベルト男爵だ! 魔力の多さしか取り柄がない軟弱にようやく本部も重い腰をあげたところだ!」



 少し手が動いている元アルベルト男爵を蹴り飛ばし、新たなアルベルト男爵は部屋を出た

この一連を知っていたか、はたまたこうなることを知っていたのか、部下がやって来た



 「アルベルト男爵、こたびはどう致しますか?」



 「全軍隊に伝えろ! まもなく出撃すると、あの亡骸は排除しとけ」



 了解しました、と答えると数人は伝えに、数人は先程の部屋に

先程の部屋から少し光が漏れでてから音がした。銃弾の音だ。


 それでも新たなアルベルト男爵はその足を止めることはない。

彼にもやるべきことがあるからだ。



 「待っておれ地球! 必ずや我が手にしてみせる!」


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