表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/16

見えてないって、めんどくせ~

 夜。その後は何事もなく、無事に家に帰ってきた和也。



 「あ~、疲れたわー無駄に」



 「まったくなのです」



 和也の言葉に同意するセラミー。数秒後に和也が反応する。何かに気がついたように。



 「……なんで、お前はここにいるんだ?」



 「いや、だって疲れましたし」



 湯気が立ち上る。



 「一応、性別考えようよ。男と女だぞ、()()



 「強調しなくてもわかってるのです。私にラブコメ要素を期待しても困るのですよ」



 「期待もしねーし、興奮もしねーよ」



 「それはそれで、腹立つのです。まぁいいですけど。今はゆっくりしたいのです」



 「それは同じくだわ。ってか誰のせいだと思ってるんだ」



 「それについては、本当に申し訳ないと思っております」



 セラミーは桶に、和也は湯船に入っている。そうつまり、今二人がいるのは和也の家の風呂場になるのだ。男と女が一つ屋根の下、表現は間違っていないが、相手は妖精。そもそも妖精が、風呂に入るという概念があること自体に和也は驚いた。



 「それにしても、桶に入ってるとあれだな。柚だな」



 「なっ! 同じにしないでほしいのですよ」



 「いや、むしろ柚の方が良かったな~。こいつじゃ、香りも効能も何もないからな~」



 「和也さん、私をなんだと思っているのですか。こっちの世界では妖精ですよ! それも優秀な!!」



 「そんな嘘は、自分の行動を正してから言え。俺はもう出るぞ」



 そう言って和也は風呂も出た。当然そのままにできないのでセラミーも一緒に。


 髪を乾かしている時に、面白そうだったのでセラミーにドライヤーの風を強くして向けてみたら、案の定勢いよく壁に激突した。怒っていたが、今日の罰と言ったら素直に受け入れた。


 着替え終わって、リビングに出ようとした時だった。



 「あっ、帰って来てたのか」



 「あ、うん。お風呂入るね」



 それだけの会話だった。その様子をセラミーは和也の肩に乗りながら聞いていた。


 去り際の際、少しジロジロと見られた。不審に思って聞こうとしたが、そのまま言ってしまった。



 「……見えてないんだよな、お前の姿は」



 「そりゃ見えないのです。それよりも今のは?」



 「妹の春香だよ。部活から帰ってきたんだよ」



 「ほへー、あれがですか。けしからんですなー、あのサイズは」



 「……何の話だよ」



 セラミーは自分の体を見て、ありのままの感想を言った。それが何を意味するのかは、和也にはわかっていなかった。

 暫くリビングで休んだ後、自室に戻った。



 「……しんどい」



 椅子に座り、机に寝そべりながら呟いた。その元凶を見つめてみると、なにくわぬ顔でつくえの縁に座っている。もはや、魔物と戦闘するよりも疲れているのではないかと、思ってしまうぐらいに疲れている。


 実際には、朝の自転車以外は、疲れる行為はあまり無いので、心の問題だろう。


 お仕置き後に鞄の中にセラミーを入れたが、タイミングを見計らっては、ちょくちょく中の様子を確認していた。お腹をすかせながら、ばれないように確認する、神経を使ったことをしていたので尚更だ。



 「明日もやったらマジで流すからな」



 「もうしないのです。ただ……」



 とりあえずの警告。流石にあれだけやったら懲りるだろう。その証拠に怯えを隠せていないセラミーが見える。



 「ただ?」



 「学校には連れてって欲しいのです」



 珍しく真面目に頭を下げた。その理由は和也にはわからないが、真剣に頼んでいることはわかった。その点を含めて――



 「考えとく、とりあえず晩飯食べてくるから、大人しくいろよ」



 「了解なのです。ちなみに私のぶんは?」



 「後で持っていくから」



 飯の話になったら口調が一気に変わった。何か学校に対するなにかがあるのかな、と思いながら再び一階のリビングに向う。


 


 キッチンにある鍋をあける。昨日の残りと思われるカレーが入っていた。食事は和也自身が作ることもあるが、ほとんどは妹が作っている。部活が忙しい日だと、和也が作るか、母親が作っていく時もある。


 準備をし終え、食べようとしたときに、リビングのドアが開いた。妹の春香が首にバスタオルをかけながら入ってきた。


 とはいえ何かが起こる訳でもない。これといった会話があるわけでもない。これがいつも通りなのだから。別に仲が悪いとかそういうのではない。ただこの二人には――――



 「ねぇさっき」



 「ん?」



 食事の最中に、話をかけたのは春香の方だった。あまり春香から話しかけることは少ない。そのため和也は、進んでた食事を止めて、春香の方を見た。


 春香も風呂上がりだが、自分の食事の準備を始めていた。始めながら、和也に問うた。



 「風呂場に誰かいた?」



 春香のその言葉を聞いて、ギクッとなった。



 「え?………なんで?」



 「手を洗ってたら、風呂場から聞こえたきたのが会話みたいだったから」



 「いやいや俺だけ、一人言」

 


 「そうなんだ」



 (これ完全に疑ってるは、セラミーの声は聞こえてないと考えると、完全に変な人だと思っていても、おかしくないわ)



 妖精と一緒に風呂入ってましたなんて、言えないし、言ったところで信じて貰えないし、普通の人には存在していないことになっているため、会話しても会話相手がいないことになっている。一部分とは言えそのやり取りを聞かれてしまったのだ。勿論和也の声だけ。



 重い空気が場を支配したので、和也は急いで食事を終わらせ、逃げるようにして自室に向かった。



 「…………………………」



 そんな変な行動をする兄の姿を見て何を思ったのだろう。






 



 


 





 


 





 




 




 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ