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ベタな展開

第四回。今回は、シュウイチとアルバの言動に違和感を持って書いてます。

十分に堪能した風呂から上がり、風呂の間大変お世話になったガイドを元の場所へ返す。いやほんとお世話になった。拝む。水着の洗濯ルールと戻すべき場所とかも聞いたからね。ガイドに。それはともかくとして、ひとまず風呂から上がったので、アルバの言いつけ通り近くにあった適当な端末で連絡を入れた。

『すぐにそちらへ行くよ、ちょっと待っててね』

と、アルバは一言で通信を切る。それを待ち始めたとき、疑問が湧いた。

(あれ……、こんな優秀なガイド技術があるなら、アルバがわざわざ俺のこと案内しなくてもいいんじゃないか?王様ってことは、忙しいだろうし……)

そう考えたとき、ちょうどアルバが「お待たせしたね」とやってきた。ので、その疑問を率直にぶつけてみることにした。すると、アルバはこう言った。

「ボクは、人を導くのが好きなんだ。道案内でも、社会でもね。だけどお風呂の中まではさすがについていけないから、あの子達に代わりをお願いしているんだ。それに、ボクは一人しかいないから、同じ時間にみんなを案内するのは難しいしね。それでもボクがいいって言ってくれる人はいる。そんな中で、今日この時間のボクは、キミを案内するって決めただけのことだよ」


そして、当分の間根城にする予定の部屋に通され(案外シンプルで、ビジネスホテルの一室みたいな部屋だった)、アルバと別れたあとそこで気づいた。スマホを風呂場に忘れてきたのだ。しまったなあ、と思いつつ、急いで取りに行く。なんとか温泉にたどり着き、使っていた脱衣場のロッカーを開けると、そこにはほぼ全裸のアルバの姿があった。

「わ……っ、シュウイチ!?」

「ご、ごごごめん!!」

慌ててドアを閉めようとしてそこに挟みこまれる。

「……ってて……」

「だ……大丈夫?」

身体が見えないようにか衣服を持ってしゃがんだアルバが、中から控えめに声をかけた。そちらを向くに向けず、そっぽを向いたまま返事をする。

「大丈夫……、つか、ごめん、開けちゃって……」

「ううん、いいよ。これ、取りに来たんだよね?あの……、こっち向いても大丈夫だよ」

そう言ってアルバはスマホを差し出した。おそるおそるそちらを向くと、アルバは男性用の水着を身に付けていた。胸はない。ああ、やっぱ男なのかと少し落胆する。はい俺ホモ決定です。いや今時はゲイか。ゲイセクシャルか。なんて思っていると、混浴時用らしい薄透明のパーカーを羽織ったアルバが言った。

「あの……、シュウイチ、あまり気にしないでね。昼間にも言ったけど、ボクは女の人じゃないし、男の人でもない。見られて困るようなところがある身体じゃないから……」

そう言われて、少し背筋がぞくっとした。男でも女でもない存在になんて、今まで会ったことがなかったからだ。でも自分がゲイじゃなかったという安心と、じゃあアルバを好きな自分はなんなんだよという疑問が渦巻く。

「や、でも……やっぱ、見られたら、恥ずかしいかも、って思うじゃん。俺は見られれば恥ずかしいから、気にするし……」

「シュウイチ……、シュウイチはやっぱり、優しい"子"だね」

その言葉にずきりと胸が痛んだ。アルバにとって俺は、迷いこんだよその国の子、くらいにしか思われていないのだ。そんなの、そんなのって、嫌だ。だから――


『シュウイチ……?』

アルバを脱衣場の床に押し倒す。

『なんで、人は裸を見られるのが恥ずかしいって思うんだと思う……?』

『え?』

『それは、裸になるとき、恥ずかしいことをするから。それを思い出すからだよ。男だろうと女だろうとそうでなかろうと、俺がアンタに『恥ずかしい』ってことを教えてやるよ……!』


――なんてこと、するわけない。できるわけがない。一か八か犯罪をおかすような、そんな度胸は俺にない。

というわけで、俺はあのあと何事もなくアルバに礼と謝罪と別れを告げ、脱衣場をあとにしたのであった。……ヘタレですいませんね。でも、リアルには無理矢理なんざ嫌われるだけなのわかってるからね。例えイケメンでもそこそこ嫌われるからね。無理矢理は。それに、片目の悪い人、つまり障害者に無理矢理だなんて最低最悪の行為だし。俺は分相応に生きるのだ……そこ、アルバを選ぶ時点で分相応じゃないとか言わない。

こうして俺の、長い長い異世界生活一日目は幕を閉じたのだった……。

シュウイチの未来生活一日目。彼がこの世界を未来だと気づく日は来るでしょうか。今のところ、その予定はないように思えます。

第四回、読了ありがとうございます!

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