よちよちと歩き始めた感情
とりあえずシュウイチの始まりはこれで終わり。
長い長いフォルテフィアの歴史に迷いこんだほんの一瞬の物語でした。
翌朝、俺が最初にしたのは身支度だった。生きる力を欲しろと言われても、具体的に何をどうすればいいか分からない。けれども一つだけ分かっているのは、これ以上アルバを泣かせたくないということだった。きっと昨日あの瞬間に、自分の中でアルバが特別な存在に変わったのだと思う。だからこそ、自分の納得行かない姿でアルバの隣に立ちたくはなかった。
次に、城内の仲間たちに顔を見せ、心配をかけたと謝って回った。
カケルは笑った。
「もー、どうなることかとヒヤヒヤしたぜ!」
ワタル先生は、こっそり胸を撫で下ろした。
「……食欲戻ったなら、ちゃんと食べてくださいね。点滴だけって、やっぱり通常時は悪いですから。あ、最初は水分を多く含む食材から摂るように」
ポストには、アルバをちゃんと好きになったことを伝えた。
「……デハ……私の、アノ講義も、ムダや、ただの迷惑デハ、終わらなかったト言うことデスね。……ちょっと、ホッとしました」
スイトさんは、結構静かに怒っていて、
「今日から一週間。この、ワタル君に相談して作った献立ぜんぶ食べきるまで、僕はどうにか怒り続けるからね!一週間もご飯食べなかったこと!」としきりに言っていた。どうやら、怒るのがとても苦手で、努力しなければ忘れるらしい。実際、ポストに何回か「兄さんお怒りを忘れてマスよ」と突っ込まれていた。
そして、最後にライムに会った。お互いに言葉で謝るのはとてつもなく気まずかった。それを察してか、ライムが「お互い一発殴って終わりにしないか?」と提案したので、快くそれを飲んだ。おいお前痛ーよ、とまた笑い合えたのは本当に良かったと思う。……ただ、それを見ていたアルバが慌てて駆けつけてこなければ、の話だったが。まあそれも誤解を解けば笑い話だ。
最後に、アルバとの関係だが……、俺はまだまだ療養中の、世話の焼ける子くらいにしか思われてはいない。でも、まあ、ちょっと気障で恥ずかしかったが、向日葵の花束をプレゼントしたときには、それこそ花よりも花のような満面の笑みを繰り出してくれたので、暫くはこんな感じでもいいかな、と思う。
まだ、この先どうするかは決めていないし、元の世界に帰るかも、ここに居残るかも分からない。だけど今、このときに、好きだと思えるものを大切にすることは、他人から見た価値観よりもよっぽど大事だってことはきっとこの国から学んだんだ。少なくとも今の俺には、この国を好きだと言う立派な誇りが出来はじめていた。
第一部完
結局これは何ジャンルだったのかわかりませんので、趣味小説という欄が新たに欲しいところ。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。次回や番外編は未定です。




