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俺と英雄の運命回避論  作者: 風見楓
始まりの英雄譚
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第一章 4 はじめての魔法

「どうゆうことだよ」


 夕人は抱いて夢や希望、幻想を全て否定された気分だった。


「僕達ハンターが狩る魔獣は、その名の通り人外だ。普通じゃ、僕ら人間には太刀打ち出来ない。そこで編み出されたのが『魔法』なんだよ。だから魔法が使えるっていうのは、ほぼ必須条件なんだ」


「ほぼ、ってなんだ?」

「まあ、一部例外もいるさ。例えば『円卓の騎士』とかね」

「アーサー王伝説か」

「その、あーさーおう?とかは知らないけど、そいうこと。あとはまあ、単純に剣技とか技に自信がある人かな」

「はーん。てかよ、お前は魔法使えんのかよ」

「まあ、一応」

「……………マジか」


 夕人は、今までの話などすっぽりと忘れ、魔法を見てみたいと思った。使えなくてもいい。あの、恋焦がれた魔法がこの眼で見れるのだと思うと、夕人の心は昂りを抑えることは出来なかった。


「なあ……魔法、見せてくれよ!」

「…え?」

「だーかーら、魔法見せてくれって!」

 困惑した様子のクロの事など気にも留めず、夕人は頼み込む。

「いや、でもここ街中だし…」

「そんな強いのじゃなくていいからさあ、ちょっとだけ!な?な?」

「いやいや…」

 よく見ると、クロの中にまだ残っていた恐怖が増幅していてる様である。 


 それでも、それでも夕人は魔法が見たいのだ。一目だけで良い、次の瞬間死んだとしても夕人には一遍の悔いも残らない。それほどであった。


「お願い!」

「わ、わかったよ…」


 本当は嫌だが、渋々という感じだった。


「…いくよ?」

「おう!」


 クロは掌へと目線を向け、意識を集中する。そして―


「【風よ・そよげ】」


 クロは二言の詠唱を終え、言い放つ。

「【エアロ】」


 若葉色の魔力光と共に掌の上で風が起こり、球形へと集束する。風切り音を鳴らしながら繰り返す様に螺旋を描き、やがて消滅した。


「う、うおぉぉぉ!言ってた通りショボ…もとい、規模は小さかったけど………魔法だ!」

「そ、そんなに凄い?」


 少し照れくさそうにクロは問うて来る。


「そりゃ凄いだろ!だって、魔法だぞ!?」

「まるで、魔法を初めて見るみたいだね」


 夕人は、はっとする。ここでは魔法は当たり前なのだから、これが普通なのだ。

 思い返すと、自分は何という世界に来てしまったのだろうと思う。あの、恋焦がれた世界なのだ。

 しかし、この時の夕人は楽観的過ぎたのである。魔法という力が、魔物という敵が、それらがあることがどういうことなのか、まだ、理解していなかったのである。


「な、なわけないだろ!見たことくらいあるさ」

「そ、そっか」


 クロは苦笑を浮かべる。


「で、魔法を使うにはどうしたらいいんだ?」

「諦めてないんだ…」

「ああ!」


 「はあ」とクロは一つ嘆息する。


「じゃあまず、君の魔力属性を調べよう」

「属性かー」

「うん。じゃあまず掌を出して」


 言われた通り、掌を出す。


「で、意識を掌に集中するんだ。身体の中心から掌への、魔力の流れを感じて」


 ふんっ、と力を入れ目を瞑り、意識を集中する。


「魔力の流れ……流れ………流れ…………」

「あと、形もイメージするといいよ。そうだなあ、やっぱり球形がいいかな」


 すると、ぽっと夕人の掌に発光する球体が現れる。


「この色はー、水?いや電光…雷か!」


 夕人は目を開けると、掌で眩い電光が弾けている。


「おおー!」

「ねえ、ええと……」

「夕人でいいよ」

「夕人…今から詠唱を言うから、それに続けて」

「おう」


 意識を外したからか、球体は消えていた。夕人は、再度掌へと意識を集中する。


「雷よ」

「【雷よ】」


 夕人の心は収まることを知らず、徐々に昂っていく。


「弾けろ」

「【弾けろ】」


 詠唱は終わり、夕人は魔法名を叫ぶ


「エレキ」

「【エレキ】!」


 途端、夕人の掌で、か細い無数の電光が青白い魔力光と共に、弾ける。


「【エアロ】は自然消滅するんだけど、【エレキ】は放たないと消えないから、壁に向かって放って」

「わかった!……いっけえええ!!」


 瞬間、夕人の右手が霞む。そして、一メートル程の所で、電光は消え、勢いも消滅する。【エレキ】の勢いで、バランスを崩した夕人は、すてんと転倒する。


「痛ってえ…」

「大丈夫?」


 とクロは笑いながら、手を差し伸べる。


「サンキュー」


 そう夕人は、笑いかけ手をとった。


「魔法を扱うには、ある程度素質がいるんだけど、夕人にもそれがあったみたいだね」

「…ああ!」


 夕人は前の世界で、恋枯れた魔法がついに自分にも使えたという喜びを心から噛みしめていた。

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