表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現実的な恋模様  作者: 宮日まち
1章 出逢いは始まり
8/48

-過去- 見えない笑顔

良く人並み以上に努力をしたとか、人一倍頑張ったとか言う話を耳にする。

そんなのは、自分で判断することじゃない。他人の評価があって成り立つものだ。



入部してから、色々あった。高校一年と言う時間を、全てバスケに注いでいたと言っても過言ではない。

授業の成績は上位から中位へと少しずつ下がって来ている。

必死になっているのは、何故なのか。バスケが好きだから?上手くなりたいから?

これらの理由は当然ある。

でも、一番の理由は・・



彼女、山下星香は一年の夏の終わりにレギュラー入りを果たした。先輩が引退したと同時にだ。

二年が主力の中、山下さんはG(ガード)と言うポジションを勝ち取っていた。

「まじ、星香凄いよ!一年で唯一のレギュラーだよ?私も負けてられないなー。」

山下さんの友達の、今井さんだ。二人は仲が良く一緒に話しているのを見かけるので自然と名前を覚えてしまった、他意は無い。

ちなみに、僕は今井さんと話したことは無い。

「ありがとね、奈美!一緒に練習付き合ってくれた奈美のおかげだよ。」

二人の微笑ましい光景に思わず笑みがこぼれた。


バスケットボールは五人で戦うスポーツである。女バスは三十人以上居る中で、たった五人しかスターティングメンバーになれない。そんな過酷な世界で彼女は勝ち取ったのだ。

彼女の俊敏な動きは、まるで流れる星の様だった。ドリブルで、左から相手を抜きにかかるのかと思いきや、フェイントをかけ、逆方向に抜いていく。クロスオーバーと言われるドリブルテクニックだ。

誰もが、練習する技だが彼女のクロスオーバーは、一連の動きが流れるように綺麗なのだ。


僕は、再び彼女に見惚れていた。

でも、前とは違う。彼女の可愛さにではなく、彼女のかっこ良さにだ。


彼女に追いつきたい。いつからかそれが、一番の理由となっていた。



あっという間に、僕の高一の夏が終わった。

男バスでは当時の三年生が引退し、新体制となったチームでの初の練習試合が近付いている。

練習にはより一層、精を出し、基礎練習を徹底した。最後に活きて来るのは基礎技術だと信じていたから。

正直な話、僕は体力や足の速さなら他の部員に引けを取らなかった。

これだけは、コーチからも褒められている。

スリーメン(三線速攻)の練習でも、先輩の素早い動きについて行ける。締めのシュートを外すことがあるのが決定的な問題点だが。ちなみにスリーメンとは、三人が一列に並んで走りながらドリブルやパスを繰り返し、最後にシュートで終わる。問題はシュートを外すと最初からやり直しなのが辛いところだ。

連続で十本シュートを決めるまで終われないメニューのため、いつも僕が箸を引っ張ってしまう。

だから僕にとって、シュート練習は第一優先だ。


コーチから集合の合図がかかる。

「よし、今日は個人技の実力を見る。各自全員と1on1をやってもらう。」

僕は、心臓が一瞬高鳴った。だが、その緊張はすぐに消えることとなる。


僕の最初の相手は、二年の香田先輩。ポジションはセンター。身長はセンターと言うだけあって高く、威圧感があるように感じられた。

「一之瀬、少しは上手くなったか?本気で挑んで来て良いぞ、俺は常に全力だからな。」

香田先輩は、人当たりの良い優しい人だ。先輩の胸を借りよう、そう思って全力で挑む。

コートの真ん中から、スタートし僕の先攻からだ。しかし、ボールを取られたら即攻守交代制。


ピッ!開始の笛が鳴る。

いきなり、トップスピードを出す勢いでダッグイン(低い姿勢のドリブル)で抜きにかかる。

しかしディフェンスが固く、そうは簡単に抜かせてくれない。

手だけではなく、体全体が追いつかれている。どうしても、ドリブルする方が遅くはなるがディフェンスに無闇に近づけばファウルになる。

右ドリブル主体から、左へチェンジするなど小細工をするが先輩を揺さぶることは出来ない。


最近は、彼女の動きを自然と目で追っていた。姿ではなくプレーを。


「先輩、全力で行きます!」

迫力のある声のお蔭だったかもしれない、先輩が一瞬怯んだのだ。

その隙を逃さず、全力のスピードで

(クロスオーバーで相手の重心を後ろに持って行き一気に抜き去る!)

「抜いた・・!」

そう思わず口に出してしまったが、先輩を振り切りシュートを狙う。


何故、ジャンプシュートを選んだのか。レイアップで確実に狙わなかったのか。

フリースローライン手前からの、僕のシュートは「ガンッ!」と言う音と共に落ちて行くのが見えた。


「惜しかったな。」

先輩の声で、我に返った時には僕は負けていた。



しかし、彼の判断は間違っていなかった。

何故なら、彼が抜いた直後には、香田先輩は真後ろにいた。

つまり、レイアップするまでの時間に追いつかれていた。

本能か直感かは分からないけど、彼の動きを見ていた彼女は笑った。

「頑張ってるんだね。」

「どしたー?星香?」

「ん、なんでもないっ!」


彼が、この笑顔を知るのはまだ先のこと。

今は、彼が男子部員全員に、ボロボロに負けている最中なのだから。



読んで頂き、ありがとうございます。いつもより多く書いてみました。

文章を考えるのは、お腹が空きますね・・。

夏休みの出来事とか、短編集で書ければ良いなとは思っています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ