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現実的な恋模様  作者: 宮日まち
3章 彼らの恋事情
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-恋- 親友、今井奈美の幸せとは

「どうしたの、急に。土日は空いてるけど・・。」


「いや、一緒に遊びたいなって。」


もう、告白してる様な物だがチャラい奴らからしたら日常言語かもしれない。

俺にとっては、一大事だ。顔が赤くなっていないか挙動不審になっていないか不安で仕方が無い。

それにしても、目の前の彼女は意外にも戸惑っていると言う顔では無く、どこか我慢出来ない様な顔していた。


(どーしよ、嬉しくて笑みがこぼれそうなんだけど・・)

一緒に登校したのが良かったのかな。それとも、昨日の初瀬さんが関係してたり?

(そうじゃなくて、何か返さないと!)

「よし、遊んじゃおうか!試験期間始まったら忙しくなっちゃうもんね。」

「あーそっか、二週間後は試験か・・忘れてた。」

「進学にも関わって来るんだから、しっかりしなきゃ。」

「そうだな。でも、今は土日のこと話そう?」

「ごめん、話それてたね。じゃあ、土曜が良いかな。」

「了解。問題は、何するかだけど・・。」

「そうだねー、暑いし映画とか見に行く?」

「なるべく室内の方が良いかもね。電車乗って都会っぽいとこまで行こうか。」

「ここら辺じゃあまり遊ぶところ無いしね。」

「じゃあ、映画とかショッピングとか定番なことかな。当日決めてもいいし、したいことあったらお互いメールしよう。」

「うん、わかった。色々調べておくね。」

「ありがとう。うっし、俺の話したかったことはそれだけ。呼び出してごめんね。」

「全然っ、問題無いよ!」

そう言って、お互い話が止まったところで解散した。


(まだ、心臓がバクバクしてる)

一緒に登校した日に、まさかデートに誘われるなんて夢にも思っていなかった。

なんだか、良い感じなのかな。

二度目だよね、デートは。あの時は、一之瀬君を立ち直らせることに必死だったけど結局自分が楽しんじゃったから今回はしっかりしないと!

奈美にデートの秘訣を聞いておかなくちゃ。あー、服とかどうしよう。

お母さんに頼んで、新しい服買ってもらった方が良いかな。んー、悩む。



よし、まずは奈美に相談だ。

「奈美ー、ちょっと良い?」

「どしたー?」

「デートの時って、何か気合い入れた方が良いのかな。」

「なにさ、一之瀬とデートでもするの?」

「う、うん。」

「え、まじ?」

「今さっき誘われたの。」

「やるなあ、一之瀬。いつなの?」

「今週の土曜日。」

「明後日じゃん!え、大丈夫なの?」

「大丈夫って言われても・・、何か特別なことしないとダメなの?」

奈美がため息をつく。え、駄目なのかな・・。

「ガサツな私でも、デートの前にすることくらい把握してるのに。星香、日曜は空いてるの?」

「空いてるけど。」

「じゃあ、日曜にしてもらった方が良いよ。そして、土曜は私とデートの準備するの!」

「それは嬉しいけど、一之瀬君に言い辛いなあ。」

「んー、じゃあ私も伝えたいことあるからちょっと今から行ってくる。」

「え?奈美!?」

私の制止に聞く耳など持たないかのように、教室を飛び出して行った。

(デート前の準備かー、なんかドキドキするなあ)



星香には相変わらず、驚かされてばっかりだ。

うちの高校に入る前から、彼女のことはバスケを通して知っていた。

彼女のバスケセンスには誰もが一目置いていて、私は同い年として羨ましくもあった。

一年の頃にレギュラーを勝ち取っちゃうし、いつも私よりずっと先に居る気がしていた。

だから、一年生の頃は友達だったけれど友達に成りきれていなかったと私は思う。

きっと、星香は素直に私のことを友達だと思ってくれてたんだろうな。

バスケが上手いだけの彼女だったら、私は親友にはなれなかったと思う。

彼女の純粋な努力や、素直な態度が私の嫉妬等をいつの間にか無くさせていた。

いつも最初に体育館に来て、最後まで練習していた。

バスケセンス云々もあるけど、それを開花させるためにも誰よりも努力していた。

星香について行きたくて私も、引退まで頑張ってこれた。

正確だって誰にでも優しく、特に、自慢じゃないけど私には一番優しくしてくれていた気がする。

私の親友。そんな彼女には幸せになって欲しい。

恥ずかしいから、本人には言ったことが無いけど。どこか心で通じていると私は信じてる。


一之瀬は、一年の時は多分初心者だってこともあって一番下手だったと思う。

でも、同い年の男子の中では相澤や遠藤と同じくらい認めていた。

あいつら三人は、私たちと一緒で努力を惜しまなかったから。それに、いつも楽しそうにしていた。

勝てない相手にだって、屈しない。そんな強い精神は、一之瀬から影響を受けたかもしれない。

だ、だからと言って私は、一之瀬のことを好きになんてならなかったけど。

なんでだろうな。多分、あいつの目には星香しか映って無かったんだと思う。

大袈裟かな。

だからなのか、あまり話したことは無い。でも、一緒にバスケをしてきたから何となく分かる。

そんな関係で良いと私は思う。

(星香が上手く行ったら、私も相手見つけてみるかな)

見つかるのかななんて、一瞬思っちゃったけど直ぐにそんなマイナスな気持ちをかき消す。



昼休みも残り僅かだから、速足で二つ隣の教室へと向かう。

「一之瀬いるー?」

教室にいる生徒が、こちらを一斉に見るので少し恥ずかしくなる。

「おい、達哉呼ばれてみたいだぞ。」

「そうみたい、ちょっと行ってくる。」

「おう、続きはまた後でな。」

一之瀬が、私の方に向かって歩いてくる。私が呼んだのだから当たり前なんだけど、どこか新鮮かも。

(あいつは、いっつも星香のことばかり見てたからな・・)

「今井さん、何か用事?」

「ちょっとね。悪いけど、廊下出てもらっていいかな。」

「はいよ。」

「単刀直入に言うけど、星香とデートするんだってね。」

「あー、やっぱり今井さんは知ってるよね。そう、その通りだよ。」


一年の頃に比べて、本当に成長したなって感じるのはこうやって対面で話している時だと思う。

一之瀬は、どちらかと言うと女子と話すのに慣れて無いオーラが出てた。

人間、慣れる生き物だけどあまり話してない私との会話も普通に出来てるし、変わるもんだなって。

そんな事を思いつつ、本題を切り出す。

「星香と話してね、デートの日を日曜日にして欲しいなって。そう言いに来たの。」

一瞬、考える素振りをしたけど直ぐに返事は返って来た。

「山下も了承済みなんだよね?だったら、俺は大丈夫だよ。」

私は、頷きながら答える。

「ありがとー。星香にも伝えとくね。」


「うん。・・・、ところで何で今井さんが言いに来たの?」

頭の中で色々考えてたら、危うく忘れかけていたけどこっちが本題だった。

「私は、星香の親友で星香の幸せを願っている一人だと勝手に思ってるの。」

「山下も、そう思ってるんじゃないかな。」

さらっと、言い返してくるからこの男は案外、女の対処法を熟知しているのかも知れない。

「一之瀬にはあまり心配してないんだけどさ、これから友達以上の関係になるかも知れない訳でしょ?」

俺は、黙って彼女の言葉を聞いた。

「あの子なりに頑張ると思うんだ。色々とね。だから、素直に言葉に出してあげて欲しいの。

初めてのことばかりだと思うから、不安になるかも知れないし。」


なんだか偉そうなことを私はまた言っている。


「ごめん、私何言ってるんだろ・・。」


「分かった。俺なりに努力してみる。」

俺は、そう短く簡潔に答える。彼女の真剣な目が、言葉が、嘘偽りの無い彼女自身の言葉で、山下を思ってこその言葉だったから。


「今井さんの良いところだと俺は思うよ。そういうところ。」


「なっ!あ、ありがと・・?」

丁度良いタイミングなのか、悪いタイミングなのか昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。

「じゃあ、ありがとね。急に呼び出してゴメンね!」

「全然大丈夫!こっちこそありがとう!」

笑顔で別れ際に、一言。

「デート当日、期待しとけよー。」


私の持てる知識(雑誌を読み漁った知識)で、日曜日は一之瀬を驚かせてやる。

そのためにも、土曜は星香の為にひと肌脱ごう。

(可愛い星香を、更に可愛く男が惚れる女にしてみせる・・)

なんだか、楽しくなって来た。

自分のことじゃないけど、親友と部活仲間の幸せの為に行動できる。

高校生活最後の夏が始まっているけど、悔いの無い夏になりそう。

肝心な自分のことはって?


「幸せは、巡り巡って来るものだもんね。」



(誰か、良い男いないかなー)

親友の立ち位置はどこだろう。そう考えたら、こういう話になりました。

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