表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現実的な恋模様  作者: 宮日まち
3章 彼らの恋事情
34/48

-夏の訪れ- 引退パーティー

ミニ勉強会を終え、旧校舎を後にした。

七月に入ったばかりで、まだ夏休みにもなっていない。一見、早めに勉強を始めたように見える。

だが、僕らは勉強する時間を全てバスケに注いできた。

だから、早めに勉強し始める必要があるのだ。

七人で歩き、正門へと向かう。自転車の人は、自転車置き場へ向かい正門で集合する。

勉強したお陰か、みんな満足した顔をしていた。

すると、珍しく相澤がこんなことを言い出した。


「なあ、引退してから皆で祝ってなかったよな。せっかく集まったしどこか誰に行かないか?」

直井と永田が顔を見合わせる。

「良いじゃん、良いじゃん!やろうよ!」

「引退祝いってやつだな、勉強で疲れたし騒ぎたいと思ってたんだ!」

僕を含めて、他の四人も異議はない無いようだった。

そして、高校を後にし駅前へと向かった。

女子二人もいるという事で、イタリアンの店に入った。

「意外だなー、男子が私達のことを気にするなんて。」

「そりゃ、気にするだろ。なんてたって、三年間同じ体育館で頑張ってきた仲間みたいなもんだしさ。」

永田がかっこいいことを言う。いや、昔から彼はそういう奴だった。

皆が恥ずかしいと思うことを堂々と言ってのける奴だ。

「二人は仲間であって、友達だしな。」

僕も続いて二人に向かって、本音を言う。

部活を引退したら終わりじゃ無い。これからも僕たちの仲は続いて行くんだ。

そう素直に思っている。

僕たち、七人はこの先も仲良くやって行けるような気がしていた。


「うっし、飲み物も揃ったし、乾杯しようぜー。」

当然、未成年だからジュースだ。

「じゃあ、賢吾頼む。やはり主将が音頭を取って欲しい。」

遠藤も副主将として、頑張っていたと思う。

でも、それ以上に彼の働きはここにいる誰もが認めていた。

「分かった、桐ヶ丘高校バスケ部員の引退、これまで頑張ってきたことを祝して乾杯!」

「「乾杯!!」」

全員の声が合わさった。


賑やかに騒ぎながらピザやパスタを食べる。

山下さんと今井さんも楽しそうにしていた。

食べながら、遠藤や直井と楽しく話していた。

僕は直井の隣に座っているから、そんなには話しかけていなかった。

すると、永田と相澤が真剣な顔で僕に話しかけてきた。

「なあ、一之瀬。俺はさ、いや俺たちは本音を言うとお前と最初から最後まで戦いたかったんだよ。」

「あまり言うべきでは無いが、せっかくだからな。」

「どうして、直ぐに戻って来なかったんだ?」

彼らの疑問は当然だろう。二年間共に頑張ってきた奴が突然来なくなったんだ。

「正直に言うと・・、少し諦めてたんだ。」

隣の四人からも笑い声が消え、僕の言葉に耳を傾けた。

「俺はさ、皆と違って初心者だったから。ただひたすら頑張ってたんだ。

努力して、皆と戦いたい。うまくなりたい。それだけだった。

でも、俺以上の奴が現れた。今までの努力は無駄だったんじゃ無いか?そう俺の頭で誰かが囁くんだ。」

黙って皆聞いてくれていた。

「怪我をする前に、俺のレギュラーは取られていた。だから、ここが俺の限界なんじゃって思っちゃってさ。」

弱かったんだ。そう、それだけ。

その場が静まる。パーティーの雰囲気じゃない。

笑いながら誤魔化そうと、他の話を切り出そうと考えた。

「そんなこ・・」

「でも、一之瀬君は戻って来た。戻って来て最後まで頑張ってた。それは、ここにいる皆が良く知ってるよ。」

「そうだな、誰にでも挫折はあるし、最後に這い上がって来た一之瀬は、弱い奴なんかじゃない。」

「そうそうー、それに最後のプレーはヤバかったよなー。」

「だよね!私たち女バスの皆もテンション上がったよあれは!」

あの日の、僕の最後の我が儘を皆は称えていてくれた。

「まぁ、一之瀬の理由も分かったし仕切り直しすっか!」

永田は、俺の言葉に納得してくれたみたいだ。

その後も、皆でワイワイ騒ぎながら、運動部の食べる量は凄まじく、財布の心配をしだす一之瀬だった。


会計を終え、店の外に出て行く。

どこか、皆別れるのが寂しいのか足取りは重い。

僕は、思っていることをそのまま告げた。彼らなら、冗談ではなく真剣に受け止めてくれるだろう。

「これからもさ、七人で勉強会やら遊びに行ったりしたいなって。どうかな?」

「賛成ー!」

ノリの良い、直井や今井さんは直ぐに返事をくれてホッとする。

「まぁ、たまになら全員で集まれるかもな。」

引退したからと言って、それぞれの予定があるし中々難しいだろう。

「私は、今日凄く楽しかったから、いつでも皆と集まりたいな!」

そう、山下さんが笑顔で答えると、他の五人の意見は固まったようだ。

「クラスは違うが、勉強するなら一緒の方が楽しいだろう。」

相澤がそう言って、この場はお開きとなった。


僕は、部活をやって良かったなと、友達が出来て良かったなと改めて思いながら

七月の夜空を見上げなら、駅に向かっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ