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現実的な恋模様  作者: 宮日まち
2章 男の決意
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-大会- デジャヴ

右の頬が、まだ少し腫れている気がしたが、痛みは特に感じられなかった。

一晩ぐっすり寝たお陰で、回復も早かったらしい。

早く寝たので、いつもより早く目覚めた。

朝の日差しが気持ちよく、外に出て走りたくなってくる。

(ジョギングでもしようかな)

素早くランニングウェアと、短パンに着替え玄関に向かう。

(六時までには帰ってこよう)

一之瀬家の朝は六時に始まる。家族全員で朝ごはんを食べる習慣は無いが、自然と時間が重なっている。


外に出ると、鳥の鳴き声が聞こえてくる。

鳥の鳴き声はするのだが、どこから聞こえて来るのか分からない。

ふと庭を見ると、紫陽花が綺麗に咲いていた。紫陽花の上にちょこんと座っているように鳥が羽を休ませている。

そんな朝ののどかな出来事に、気持ちは自然と豊かになり、彼はジョギングを開始した。


ジョギングをしている時、どこかデジャヴを感じた。

ジョギングはバスケを始めた頃からするようになったが、見覚えがあるのは当たり前かもしれない。

しかし、デジャヴを感じたのは周りの景色では無かった。

いつも行くコンビニが見えてくる。

二十四時間営業のコンビニで、そろそろ深夜勤務と早朝勤務の人が代わるタイミングだ。

高校生でも早朝バイトなら出来る。まさかと思って、覗いてみると。

案の定、幼馴染の柊夏海が仕事の準備を終わり働き始めようとしていた。

(幾ら何でも働きすぎだろ..)

陽平から聞いた話だと、デート以外の日は全てバイトしているらしい。

成績はついて行けるように、高校のランクを落としたみたいだが体の方が心配になる。


でも、僕は彼女に何て声をかければ良いのか分からない。

もう、幼馴染と言っても夏海には彼氏がいる訳だし、前とは違う。

仲良くしていたら、陽平に悪いかも知れない。

そんな事を考えて立ち止まっていたら、彼女が僕に気付いてしまった。

「達哉、どうしたの?立ち止まっちゃって・・、あ、おはよう!」

夏海は、幼い時から元気いっぱいの女の子だった。

小学生の頃は、男子に負けないくらいの元気で僕を引っ張ってくれていた。

彼女の性格が、僕にも伝染したのかも知れない。

いつも彼女と一緒にいたからか、お互いの考えてることなんて何となく分かっている。

だから、僕がコンビニの前で何で立ち止まっているかなんて

「心配しなくても、大丈夫だから・・ね?」

「え。」

「私が、朝バイトもしてて体のことが気になった。違う?」

「違わない・・。」

「夜は早く寝てるし、むしろ健康的だよっ。」

彼女が、こんなにも頑張ってお金を稼ぐ必要がある理由。僕は、以前に夢の為と言ったが。

それは、嘘かと言われれば嘘になる。でも、彼女にとっては嘘じゃない。

「親父さんは、まだ良くならないのか?」

夏海の父親は、夏海が中学三年の時に突然会社で倒れたらしい。

病名は、僕は聞いていないが仕事が上手く行ってないことからのストレスが一因とのこと。

彼女の父親は、大学に行く費用も貯めてあるから心配しなくて良いと言っているのに

自分で、全て払うつもりらしい。

「大分良くなったよ、でも定期的に病院に行ってるけどね。」

ストレス。心配をかけさせたくない、そんな彼女の思いやりが心配に繋がってないだろうか。

「陽平は、このことを知っているのか?」

「まだ言ってない。心配かけたくないし。」

心配。夏海は気付いてないのだろうか。君が無理する度に、皆が君を心配することに。

「デートの時は、楽しめよ。」

僕には、彼らの関係を口出しすることは出来ない。

僕はそれだけ言って、コンビニを後にした。

彼女は、顔を赤くしていたが同時に顔を曇らせた様に見えた。

(それとなく、陽平に言っておくか)

夏海の夢、それは夏海の周りの人が幸せに生活出来ること。



そして、大会二日前の金曜日。

僕は、正式にベンチ入りが確定した。

ポジション的に横田の次の二番手だが、仕方ない。

チームが勝つには、そうするべきだとコーチが判断したのだから。

仕方ない。

大会四日前の水曜日は、休みじゃなく明日が休みとなった。

それぞれ、気持ちと気力と体力を備えるため。


デジャヴ。

彼、一之瀬達哉は落ち込んでいた。

それは、当然だ。スターティングメンバーと言うのはやはり大きい存在である。

彼女、山下星香は達哉同様落ち込んでいた。

彼女は、レギュラーだが一之瀬が選ばれなかったことに落ち込んでいた。

でも、彼は落ち込んでいたがそれだけで終わる男じゃない。

「うおおおおお。」

突然、一之瀬君が叫んだ。私は、思わずビクッと驚いて彼を見ていると。

「うっし、横田!任せたぞ、ボール取られたら承知しねえぞ!」

呆気に取られた横田だったが

「先輩の出番が無いようにしますよ!」

言ったなー、と二人が言い合ってるのが聞こえて来た。

何だかんだ、強い口調になったりするが、二人は良きライバルで、先輩後輩なんだ。

男子部員が賑やかにしていた。少なからず、共に頑張っていた一之瀬には申し訳無さもあったのかも。

それを一之瀬は、打ち砕いた。


私は、彼らを見て自然と微笑んでいた。


その笑顔は、まるで一年生の時に一之瀬が1on1で負けた時に見せた笑顔と同じだった。

彼女は、そのことに気付いていない。

いつ気付くなるのだろうか。その笑顔の正体に。


気付いていたのは、直井と彼女の親友である今井だけだった。

更新遅くなりました。

デジャヴは現実でも、時々何とも言えない間隔に襲われることが

私にはあります。良いことなのか悪いことの前触れなのか。

現実的な恋模様では、切ない感じと甘い感じにしてみました。

ご感想、ブクマお待ちしています。

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