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現実的な恋模様  作者: 宮日まち
2章 男の決意
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-大会- 蓄積した疲労

その日が来るのは、今思うとあっと言う間だった気がする。

バスケ部に入部して、二つ上の先輩がその舞台に立った。

入部して二年が経ち、後輩が出来ると一つ上の先輩がその舞台に立った。

部活を続けていれば、立場はあれどその舞台に行かなくてはならない。

今までの全てを賭けて。そして、自らの努力の証明をしに。

最後の大会へと、僕らも足を踏み入れようとしていた。


大会四日前。

最終調整をする為、その週に入ってからは軽い練習メニューになっていた。

どのスポーツでも、疲労が回復していなければ万全の状態で挑むことは出来ない。

超回復と言う言葉を知っているだろうか。

トレーニングをした直後から二十四時間は休息を取らなければ、筋肉をただ破壊しているだけと言う。逆に休息を取ることで、トレーニング前より筋肉量が増えていることになる。超回復と言う現象が起きるから休息は必要となってくる。

大会前では、この超回復に期待する面もある。休みもしっかり取りつつ、ステップアップも兼ねているのだ。

大会前なのにも関わらず、過度な練習をし大会で潰れるという話は聞くだろう。

彼、一之瀬達哉もそれに属していた。

しかし、彼の心境も分からなくはない。

復帰し、スキルも体力も戻ったがレギュラーには選ばれていないからだ。


チームが勝つ為に必要なのは、個人技とチームワーク。そして、粘り強さと運。

特にチームプレーのスポーツにおいて、チームワークは不可欠であり連携を取る為には信頼と経験の反復である。

一之瀬には、復帰後の一ヶ月休む暇など無かった。と結果的にそういう事だ。


そんな彼に不意に眩暈が襲った。

激しいスポーツをしている最中に、一瞬の揺らぎは命取り。悪ければ怪我に繋がる。

案の定、彼は次に起こることを呼び掛けにより察することとなる。

「あぶねえ!一之瀬ッ、避けろ!」

運が良かったことは、反射神経が元々良かったことだろうか。

漫画のように顔面に来たボールを手で取るような真似が出来ればかっこいい。

しかし、フラついた彼はそんなことは出来ず、首を少し曲げるくらいが精々だった。


ボールが間一髪で顔を掠める程度で済んだ。

念のため、保健室に行ったが擦り傷、軽い打撲程度らしい。

僕は息を忘れてたかのように、深い息を吐く。

「良い機会だから、少しは練習減らしたら?」

何処からともなく、彼女、山下さんは顔を出して話しかけてきた。

「あれ、山下さん。まだ残ってたんだね。」

僕がボールにぶつかったのは、部活の練習が終わり自主練になった時。

練習中のプレーだったら、もっと酷い怪我になっていたかもしれない。

「あれ、山下さん。じゃないわよ。急に大声が聞こえたと思って見てみたら一之瀬君倒れちゃうし。」

「はは、見られちゃったか。」

今まで彼女にはかっこ悪いところしか見せれてないから、少し僕はまた印象を落としたかなと顔を伏せた。

「それにしても、大丈夫そうで良かった。もう帰れるの?」

「もう処置は終わってるから、大丈夫よー。」

保健室の雛屋先生の声が、顔は見えないが聞こえてくる。

「じゃあ、今日はもう帰ろ?」

「そうするか..。」

まだバスケに関して、何かを掴みかねている最中だった僕は、もう少し練習したかったが

もしかしたら、山下さんと帰れるんじゃないかと思ってそう答える。


二人で保健室を出て、荷物を取り、東門に向かう。

道中で、部員の何人かが心配して話しかけてくれたが笑顔で答えた。

実際、大した怪我ではない。明日には治っていると思う。

そこに、直井がやってくる。

何を思ったのか、彼は僕と山下さんの間に入るような形で話しかけてきた。

「お、一之瀬大丈夫か?疲れ溜まってるんじゃね?」

「そうかもしれないなー。」

「今日は、ゆっくり寝てね?」

「そうするよ。」


三人で、東門を出て直井が手を挙げてこう言う。

「じゃあな、一之瀬!」

直井はそうやって、僕とは違う道を帰る。

僕は駅に向かうのだから、違う道を帰るのは分かる。しかし、

「じゃあ、一之瀬君お大事にね。また明日!」

(え..)

と、心の声が思わず言葉に出そうだったが何とか押し殺した。

駅まで一緒に帰るという、甘い展開など現実には存在しないってことなのか。


(自転車、新しいの買おうかな)

そんな事を考えつつ、一人駅に向かった。

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