-梅雨- 旧校舎へ
午前中、ずっと雨が降り続いていた。
今日は、恐らく止まないだろう。外で、太陽の下のランチと洒落込むことは出来ないようだ。
四限目も終わり、待ちに待ったお昼休みがやってきた。
僕は、何気ない顔で待っている作戦にすることにした。
約束しているのに、寝ていると印象を悪くしそうという判断だ。
(それに、全く眠気は無いし)
五分くらい経っただろうか、廊下に彼女の姿が薄っすらと見える。
しかし、彼女は何故か入ってこない。
GW明けに僕に会いに来たときは、堂々と入って来たというのに。
戸惑った彼女を見るのも悪くは無かったが、
彼女を困らせたくないと考えた僕は、自分から廊下に出ることにした。
教室のドアに近づくと、彼女が僕に気付いた様だ。
「あ、一之瀬君!遅くなってごめんね?」
「全然、こっちこそ来て貰っちゃって悪いね。」
合流し、自分のクラスを後にする。
彼らの姿を見ていた人物がいたことを、一之瀬はまだ知らない。
「どこで食べようか。」
「雨降ってるし、空き教室のどこかとか?」
「そうしよっか。じゃあ、旧校舎が良いかな。」
僕たちの教室が新校舎にあり、実験室などがある旧校舎に分かれている。
「この学校、無駄な教室が多いよな。」
「生徒が減っているからじゃない?」
進学校とは言え、子どもの減少は少なからず影響してくる。
「まぁ、こうやって自由に使えるからラッキーか。」
「あれ、そういや俺飯買ってないよ?」
「あ!私が、お金貸すんだった!忘れてた・・。」
来た道を戻り、購買へと向かう。
しかし、当然の如く物は無くなってきていた。
「この、クリーム小倉パンにしよ。」
「一之瀬君って、甘いの好きなんだ?」
「んー、朝練すると甘いの欲しくなるんだよね。」
「あ、その気持ちわかるかも。」
でも、太っちゃうからあまり食べないけど。と付け加えていた彼女に
「山下さんは、痩せてるから大丈夫じゃない?」
「見えないところにお肉があるのです!」
言い方が可愛く、思わず笑ってしまった。
「あ、笑ったな!見えてないから良いの!」
他愛も無いやり取りをしつつ、おにぎり三つとパンを買い旧校舎へと向かった。