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現実的な恋模様  作者: 宮日まち
2章 男の決意
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-復帰- 刻一刻と

「すみません、レイアップ決めることが出来なくて..」

古林が謝ってくる。

「いや、作戦が甘かった。」

それにこの作戦は、よくレギュラー陣がやっているからリカバリーも早かったのだ。


「うっし、次のチーム行くぞ。」

僕は体育館の隅で休憩していた。休憩せざるをえなかった。

「一之瀬、一瞬の隙が命取りになる。パスした瞬間、リバウンドに行くか横田のマークを徹底するべきだったな。」

落ち込んでいる僕に主将の相澤が語りかけてくる。

「その通りだったよ。勘が鈍ってるみたいだ。」

「あまり無理せずにな。」


相澤は部員全員の支持を得ていて、実力も相成ってコーチから直々に指名された。

僕も彼には一目置いており、自然とついて行きたくなる何かがある。


「一之瀬先輩、もう少し俺と勝負しても良かったんじゃないですか?」

「え?」横田が隣に来て話しかけてきた。

「いや、あれじゃあ相手に勝てないから苦し紛れのパスにも見えるかなって。」

「横田はそう思ったのか?」

「パスも手だけど、個々が拮抗した実力なら相手に勝つことで他の二人を助けられるかなと。

あのパスじゃ、二人に助けてもらったパスですよ」

僕は言い返す言葉が無かった。実際、横田とは真っ向勝負していなかったからだ。

どこか負けを認めていて、二人に頼るプレーをしていた。


僕と横田のプレースタイルはそこが大きな違いだ。己で切り開くスタイルと、他者を求めるスタイル。

しかし、以前の僕は横田と同じスタイルだったと思う。彼が来るまでは。


「次は勝負するよ。」

「次があると良いですね。」

彼はわざとあんなこと言うのだろうか。

だが、僕の闘志が漲る糧となる。


そして、その日の部活が終わる。

これが毎日だ。今までやってきたにも関わらず、休んでいたら辛いと感じるようになってしまっていた。

(疲れた..)


帰り道、駅まで歩く。その足取りは重い。

チャリンチャリンと後ろからベルが鳴る。

「あ、一之瀬くん。部活お疲れさま。」

「あれ、初瀬さん。今帰り?遅くない?」

「ちょっと、課題が終わらなくて。」

彼女は国際コースのクラスで、夏に外国へ研修に行くらしい。それの課題が大変だと他のクラスにも伝わって来ている。

「大変そうだね..。どこの国行くの?」

「イギリスだよ。でも、この為に勉強してきたから。」

どこか遠くを見つめている様だった。

「卒業したら外国へ行くの?」

「そう出来ると良いけど、語学力がまたまだだから、とりあえずは大学かな。」

「私、まだまだだから。」

彼女は、将来を見据えて頑張っている。

僕もここで立ち止まっている場合じゃない。

唯の部活だが、僕には今頑張るべきことだ。


「一之瀬くんってさ」

「ん?」

「彼女とかそういう話聞かないけど、作らないの?」

とんでも無いことを彼女は言い出した。

「ど、どどうしたの急に。作る作らないと言うか出来ないと言うか..。」

「そっか。どういう子が好みなの?」

初瀬さんは話を切り上げることなく、続けてくる。


「好みか、あんまり考えたこと無いけど。強いて言うなら、笑顔で頑張り続けられる人とかかな。」

「外見とかじゃないんだね。」

彼女が笑っている。

「私ももっと頑張ろ。一之瀬くんも、レギュラー復帰出来ると良いね!応援してる。」

レギュラー落ちした事は言ってなかったはず。

女子の情報網は怖いなとか、全く見当違いの思い込みをしていた。

それが、彼女が陰で僕のことを良く見ていた証拠だったのに。

僕は気づく事はなかった。

「俺も、初瀬さんのこと応援してる。」

重い足取りだったが、彼女と話せただけで気が大分楽になった。



あれから初瀬さんとは会っていない。

元々クラスも違うし、帰り道も違う。

(そう言えば、あの日は何で東門で出会したのだろう)

その真相を知るのは、まだ大分先のこと。


練習に励む毎日、食らいつく日々。

月日は六月になろうとし、初夏が訪れ始めていた。

山下さんとは、あの日の土曜日以来話していない。


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