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現実的な恋模様  作者: 宮日まち
1章 出逢いは始まり
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-デート- 偶然は必然

その日は眠れなかったこともあり、六時には目が覚めていた。

街に十時に集合と山下さんからメールが来ていたので、準備と移動時間を抜いて二時間以上時間が余っていた。

ここ最近、昔のことを思い出しているせいか少しずつバスケが恋しくなって来ている。

(軽く、走って来るか)

汗を流して、シャワーを浴びてスッキリすることにした僕は勢いよく家を飛び出した。


僕の家は、住宅街の一角にあり駅から離れている為この時間帯は人が少ない。

朝走るには持って来いの環境だ。

三十分くらい走っただろうか、クリーム色の鮮やかな壁面の家が見えて来た。

幼馴染の家だ。

上を見上げていたら、目の前の女性にぶつかりそうになる。

「あ、ごめんなさい!前見てませんでした!」

直ぐに謝る。いつもと自分とはうって変わって丁寧な言葉遣い。

「あれ、達哉だ。おはよ、早いね。」

「夏海かー。おはよう。そっちこそ早いな。」

偶然の出会い。高校に入ってから、どうも偶然が重なる気がしている。

ただ、嫌な予感はしていた。


「朝のバイト始めたんだ。」

高三になって、更にバイトを増やしたみたいだ。

「なんでまた。かなり働いてるだろ?」

「ちょっとね、自分に使うお金が必要になっちゃって。」

柊夏海(ひいらぎなつみ)は、将来の夢の為にバイトを必死になって頑張っている。

親に頼らず、中学までやっていた陸上を辞めて自力で乗り越えようとしていた。

「男とか・・?」

沈黙が訪れる。


「そ、そうなの。良く分かったね。」

その言葉に、少なからず衝撃を受けた僕は自分から言ったにもかかわらず面食らっていた。

「GWの時にカラオケ行くって言ったじゃない?てっきり、私の友達だけかと思ってたら他校の男子もいて。」

つい先日、陽平から聞いた覚えがある。他校の女子とカラオケに行くと。

「そいつの名前は、もしかして佐伯陽平(さえきようへい)か?」

偶然が重なることは滅多に無い。そのはずだ。

「え。」

自分の友達が、自分の幼馴染と付き合うことなんて漫画みたいな展開はないだろう。


夏海とは、生まれた時から中学を卒業するまで一緒だった。

ずっと仲の良い友達。そんな関係が続くと思っていた。

幼稚園では、一緒にかけっこをし、時には喧嘩をした。

小学校では、六年間クラスが一緒だったこともあり良く宿題を教えていた。今思えば凄い偶然の重なりだ。

中学校では、夏海が陸上を始めたから僕も陸上を始めた。

彼女の方が高かった身長は、いつからか僕の方が高くなり

運動では、彼女について行くのがやっとだったのに身体の変化と共に逆転した。

いつからだろうか、彼女とあまり話さなくなったのは。

いつからだろうか、彼女の雰囲気が変わり髪が少し茶色になったのは。

幼馴染は、近いようで遠い存在と誰かが言っているかのようだ。


「そう。佐伯君。カラオケ行った次の日にね、告白されたんだ。」

「私、初めてだったから。話してて楽しかったしそのままOK出しちゃった。」

男と女、友達のままではずっとは一緒にいられない。


「そうか。良かったな。楽しめよ。」

「ありがとう。」

気まずい雰囲気の中、僕は一言かけて走り出す。


「達哉。何があったか知らないけど、今の達哉はかっこ良くない気がする。」

その声に立ち止まる、受け流すことも出来たけど僕はしなかった。

「何があっても、深く考えずいつも突っ走ってた。」

夏海は、僕がバスケを休部していることは知らないはずだ。でも何かを感じたらしい。

「それって、バカってことか?」

「頭の良いバカってこと。」

お互い笑って、別れた。

次会った時は、いつも通りだ。いつも通りの唯の幼馴染。



「私、待つのは疲れちゃった。それに、いつの間にか達哉は違う人を見てるもんね。」

彼女のその一言は、誰もいない朝の静けさに響くことは無く霧散していった。



予想以上に時間が経ち、急いで家に戻りシャワーを浴びることにした。

汗を流すつもりだったシャワーは、何か違う物を流している気がしてくる。

過去の出逢いを思い出し、昔の自分を思い出した。

そして、夏海の一件。

時が進むように、人も進んでいる。

止まっている時間が必要な時と、止まっている時間が無駄な時がある。

今の僕には、後者が当てはまると理解した。


浴室で雄叫びを上げた。親が起きてきて怒られたが、吹っ切れた瞬間だった。



街へ行き、待ち合わせの広場で山下さんと合流。

髪を切ったみたいで、短いショートヘアが似合っていた。

僕は、おはようの挨拶も無しに開口一番こう告げた。


「山下さん、俺は君との約束を守るよ。少しの間、破っていたけどもう二度と破らない。」


呆気に取られていた彼女だったけれど、笑顔で返してきた。

「一之瀬君?私の服とかには何も言ってくれない訳?」

「え?あ、ごめん!めっちゃ似合ってるよ!」

「ん、よろしい。」

白地のパーカーに、短いデニムが似合っていた。健康的な足に釘付けになる。

百五十五センチくらいの身長に、少し大きめのパーカーが可愛さを増し

デニムがスラッとして引き締まった足を更に目立たせていた。

「会った瞬間、いきなり変なこと言って。他の女の子だったら減点だよ?」

「ごめん、真っ先に言わなくちゃと思って。」

思ったことを、そのまま言う。

「まぁ、私は減点しないけど・・。」

「え、今なんて言った?」

「もう、さっさと行かないと遊ぶ時間減っちゃうって言ったの!」

「そんなに楽しみにしてくれてたのか・・。」

「調子に乗んなっ!」

バシィっと背中を叩かれる。


「もう二度と、ガッカリさせないでよね。」

「ああ、勿論!」

彼女との道は、やっと始まったばかり。

それがいつまで続くのかは分からないけれど、僕は続くと信じている。


「髪切ったんだね。似合ってるよ。」

「ど、どうも・・。」

吹っ切れた僕は、笑顔を向ける。彼女も楽しそうだった。

だが、苦難が訪れるのはこれから。

束の間の、楽しい時間を過ごしていた。

幼馴染との恋愛は現実では難しいと、私は思っています。でも、友達以上の信頼を寄せられる存在、そんな人だったら嬉しいなと。

過去を振り返って来ましたが、今回の15話で第1章終了です。

これからが物語の始まりです。

現実と理想、彼と彼女はどうなって行くのか。

また読んで頂けると幸いです。

感想やブクマお待ちしています。

お待ちしています..笑。

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