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現実的な恋模様  作者: 宮日まち
1章 出逢いは始まり
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-約束- 偶然の重なり

どこかで、話した記憶がある。そんな気がした。

だがその記憶は、モヤがかかっている。

険しい顔で黙りこくり、必死に頭をフル回転させていると。


「もしかしてさ、一之瀬くん。私の名前忘れてたりする?」

ドキッとした。胸がドキドキでは無く、冷や汗タラタラだった。

「ええ!?そりゃあ無いだろ一之瀬。このナイスバディな初瀬のこと忘れるとか!」


バシィ!

良い音がした。山本の背中を叩く初瀬さん?の姿があった。


「本当、山本くんってデリカシーないよね。はあ・・、一之瀬くんも私の名前忘れててショックでかいなあ。全然、良いこと無い・・。」

「面目無いです・・。」

「ほら、入学したばっかりの頃、廊下でさ。」

入学したばかりの頃は色々あったり、生活の変化についていくので精一杯だった覚えがある。


「バスケ部がある部室棟教えたでしょ。」

優しい笑顔を向けられる。

「あ!」

校舎内を迷っていた僕に話しかけてくれて、丁度部室棟に向かう途中だった初瀬さんに案内を頼んだことを、すっかり忘れていた。

「思い出してくれて、よかった。」

その後の体験入部で見た、山下さんのプレーに記憶が持って行かれていて、忘れてしまったのは内緒だ。

(そうだよ、山下さんとの約束があるから急いでたんだった!)


「ごめん、初瀬さん!この埋め合わせは、きっとするから!」

止まっていた、掃除の手を動かし始める。


何かを感じ取ったのか、おざなりにされたのが癇に障ったのか彼女はこう続けてきた。

「きっとだと、一之瀬くんはまた私のこと忘れそうだし今日埋め合わせして貰おうかな?

確か、バスケ部はオフ日でしょ?」

「え・・。」

悪いのはこちらだし、断る理由が他の女の子との約束と言うこともあり話すのを戸惑った。


「お!じゃあ俺も一緒に行こうかな!」

「山本くんは部活あるでしょ?」

「固いこと言うなよ、たまには休みも必要なんだよ。」

「そんなこと言って、たまに休んでるじゃない・・まあ私は良いけどね。」



掃除を終えて、僕は困り果てていた。断る理由を言えなかった僕が、全面的に悪いのだが今日に限ってこんなことになるなんて。

(漫画じゃあるまいしさ..どうしよう。)


(あ、メールか電話で山下さんに別の日にして貰おう!)

なんでこんな簡単なことに気付かなかったんだ。やっぱりまだ本調子じゃないのかも。

歩きながら携帯を開き彼女の連絡先を探す。

・・・

(しまった、まだ山下さんの連絡先聞いてない..。)

「ほら、行こー!」

初瀬さんの声が聞こえ、僕は顔をあげてゆっくりついていく。


(体育館に寄らせて貰えれば、まだ何とか)

「うっし、一之瀬。チャリでどちらが早く駅に着けるか勝負だ!」

「よーし、私も少し頑張ろ。」

「え、ちょ待っ・・。」

言い終わる前に二人は猛スピードで駆けて行った。二人とも悪気は無いんだろうけど、タイミングが合わないことにまたしても気落ちしていた。



駅前、僕たちが通う高校の最寄駅。

そこまで栄えてはいないが、ショッピングモールや遊び場はある。

「じゃあ、どこに行こうか?私は、ウィンドウショッピングしたいなーって。」

「初瀬がそうしたいなら、そこで良いんじゃねえかー。」

「そうだね。」

「やった!あと、一之瀬くんはテンション上げてこ?」


・・・

「そいや初瀬ってさ、下の名前なんだっけ。」

「楓だよ。初瀬楓(はせかえで)。あ、一之瀬くんの下の名前教えて?」

「達哉だよ。」

「ほほー、なるほどー。」

「おかしいな、俺が下の名前聞いたのに俺に聞かれてないぞ。」

「山本くんは、山本くんって感じ。」

「なんだそれ・・。」

ショッピングモールで二時間ほどブラブラし、

ほぼ初瀬さんの行きたいところを行っていただけだったが、隣を歩く山本はやけに楽しそうだった。

僕も本当なら素直に楽しめた筈だ。本当のことを言うために意を決して二人を呼び止める。


「二人とも、ごめん!本当は、先約があったんだ。悪いんだけど俺、もう行かなくちゃ。」

突然の告白、場が静まり返るのが肌で分かる。二人から責められるのを覚悟で告げたのだが。

「なんだ、やっぱ誰かと予定あるんじゃねえか。」

「そうだったんだ・・ごめんね。急に誘っちゃって。」

「いや、悪いのは黙ってた俺の方だから・・。」

「じゃあ、また今度で良いからアイスでも奢ってね?まだ暑い日が続くし、期間限定のアイスが出たって女子の間で盛り上がっててね。」

満面の笑みを浮かべながら、彼女は僕の目を見て言ってきた。

「分かった!」

そう言い残して、初瀬さんと山本の寛容さに感謝しながら、来た道を猛スピードで駆けて行く。

山下さんとの約束の時間は二時間以上過ぎていた。


「じゃあ、私帰ろうかな。」

「おっと、俺とのデートに発展したりしない感じ?」

「しない感じです。」

初瀬の表情は作り笑いだが、やはり可愛い。


「また、チャンスは来るさ。」

「何言ってるの。」

自分に向けられている好意と言うのは、案外気付かないものである。

それが、確定的な好きに至って無いモノなら尚更だ。


僕は、今にも事故を起こしそうなスピードで走っていた。

ペダルを漕ぎながら、祈っていた。

彼女が、まだ居てくれていることを。


サブタイトルで迷いました。

最初に出て来た、3人の登場人物より出番多いですね。

登場人物の紹介ページを作ろうかなと考えています。

ご意見お待ちしています。

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