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偽・信長公記――信長に転生してエクスカリバー抜いた俺――  作者: 曖昧


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13話

 後の徳川家康――竹千代は史実通りの出来事を経て織田へと流された。

 やって来たのはつい最近で、信長が浜松を経った辺りだ。

 自分は子供で、何が出来るわけでもなく拒否権も無い。

 織田であろうとも今川であろうとも人質であることから逃れられない。


 幼いながらに自分の境遇をしかりと理解していた竹千代は、何処か諦観染みた考えを持っていた。

 それでも、噂で聞いた織田信長に会えることだけは本当に楽しみにしていた。

 竹千代も、直に見たことはないものの聖剣の噂は知っていて、信長は元服の日に聖剣の魔女の祝福を受けたと言う。

 まるで物語の主人公のよう。


 現代風の表現を使うのならば、少年漫画の主人公がリアルに存在するようなものだ。

 大人びてはいるが竹千代もまだまだ子供。

 そのようなものに憧れるのは当然の帰結で、出来るなら仲良くなりたいとも思っていた。

 彼女は良い噂しか信じていなかったのだ。


 家中の噂などは聞こえていたが、どれもこれも妬み嫉みと切り捨てて脳内で信長を神格化。

 高潔で、快活で、心の広い英傑――シンプルに表現してもそんな感じにまで脳内信長像が出来上がっている。

 昨日のやり取りを聞いていた際、ん? と思うことはあった。

 それでも、信長の後ろに控えている者は素晴らしい逸材であると何となくではあるが悟っていた。

 自家の優秀な家臣と似た雰囲気を感じたからだ。


 良き部下を従えられるのは良き主君である証拠。

 竹千代の中ではどんどん理想の信長像が膨らんでいく。

 本人が聞けば誰それ? 勘弁しろよマジでと笑うこと間違いなしだ。

 しかし、その理想も後少しで砕けることになるだろう。


「おや、おはようございます竹千代殿」


 早朝、平手政秀は城内の庭園で木剣を振るっていた。

 老いて直接戦に出ることは少なくなったものの、今でも何時でも出たいとは思っている。

 それゆえ鍛錬は欠かせないのだ。

 そんな政秀の下に、とてとてと竹千代が近寄って来た。


「はい、おはようございます平手様」


 人質とは言え客人。

 竹千代は清洲城内限定とは言えそれなりに自由に動けるようになっていた。

 一応城下にも、監視の者が同行するならばと言う条件付で出られるようになっている。

 そう言う意味で織田家の彼女に対する対応は決して粗雑なものではなかった。


「まだ時間もはよう御座いますが、眠れませんでしたかな?」

「はい! 信長様のことを考えていると……胸がどきどきして」

「は、はは……そ、そうですか……」


 政秀は信長が旅に出る前からうつけではないと見抜いていた。

 だが、どれほどの器かは測りかねていた――しかし、勝家から仔細を聞き今では次代の当主として全幅の信を置いている。

 とは言え、女好きとしての行状などは演技だけではなく本質だとも思っている。

 それゆえ、竹千代のキラキラした瞳を真っ直ぐ見ていられない。

 子供の夢を壊すのはどうかと思うし、何より教育に悪い。


「昨日の信長様には心を奪われました。ただ、剣を抜いただけなのに……平手様もそうは思いませんか?」


 言葉足らずではあるが言わんとすることは分かっている。

 動作で言うのならば今竹千代が言ったように剣を抜いただけ。

 ただ、それだけの動きに目を奪われた。

 聖剣だから――と言うのもある、勿論ある。しかし聖剣単体の魅力ではない。

 聖剣と担い手がこの上なく合致しているのだ。聖剣エクスカリバーを信長以外の誰かが振るっている姿が想像出来ない。

 ガチリと嵌まった主と道具。戦場に立てば、さぞや映えることだろう。


「ええ……信長様はまっこと大きな御方になり申した」


 旅の中で多くの実りを得たのだろう。

 うつけと言うフィルターが用を成さないからこそ、信秀や政秀の目には信長の成長がよく見えた。

 分かる者、あの場に居た他の面子で言うのならば勝家辺りも同じだ。

 彼もきっと、ひとまわりもふたまわりも大きくなった信長を感じていただろう。

 そんな信長と聖剣の組み合わせはこれでもかとカリスマに満ちたものだった。


「そう言えば、平手様は信長様の教育係だったと御聞きしました。平手様の御指導あっての、信長様ですね!」


 キラキラと目を輝かせて自分を褒め称える童女から目を逸らしたくてしょうがない政秀であった。

 教育係と言っても彼は殆ど仕事を成せていない。

 座学はぶっち、武芸の稽古もぶっち。信長はまっとうに教育を受けたことがないのだ。


「ま、まあ……私の力なぞ、微々たるものですよ微々たる。いえ、むしろ皆無かと」

「平手様は謙虚な御方でいらっしゃる」


 その後も竹千代と政秀はポツポツ他愛の無い話を続け、気付けば朝餉の時間になっていた。

 政秀はこれから共に暮らしていくのだし、変な幻想は持たぬ方が良い。

 そう判断してある提案を口にする。


「そろそろ朝餉の時間。信長様はまだ寝ておられるでしょうが、よろしければ竹千代殿。起こして来てくれませぬか?」

「え、良いのですか?」


 普通は小姓やら信の置ける内部の人間の役目だろう。

 下手をすれば暗殺の危険性だってあるのに外部の人間に任せて良いのか。

 戸惑いと期待が入り混じった上目遣いで政秀を見やる竹千代。


「ええ、構いませぬ」


 多少刺激的な光景が目に飛び込んで来るであろうことは予想に難くない。

 でも、だからこそ軌道修正を行い易いだろうと政秀は自分を納得させる。


「部屋の場所は分かりますかな?」

「大丈夫で御座ります」

「そうですか、ならば御願いし申す」

「竹千代に御任せあれ!」


 パタパタと元気良く走り去って行く竹千代を見つめ一言。


「……まあ、これも勉強の一つと言うことで」


 世継ぎ作成的な意味でも性の勉強は必須である。

 さて、期せずして性教育を受ける羽目になった竹千代は頬を上気させ城内を走っていた。

 すれ違う奉公人らが微笑ましい顔をしているが当人はまるで気付いていない。

 それよりも何よりも、信長に会えるのが嬉しいから。


「こ、此処で御座いますね。でも……あれ? 何か……変な匂いが……身体が、むずむずしまする」


 部屋の前から漂う性臭、知識は無いものの案外ムッツリの素養があるのだろうか?

 内股になりもじもじとし始める竹千代。

 老女も童女も構わず喰っちまうセックスモンスターNOBUNAGAの餌食になること間違いなしである。

 いやまあ、さしもの信長も童女相手に直ぐに決めるほど鬼畜ではないだろうが。


「まあ良いか」


 未成熟な竹千代は信長に会えるのが嬉しくて緊張しているのかな?

 と思い直し戸に手をかける。


「信長様! 朝で御座います――――」


 そして笑顔いっぱい胸いっぱい、勇気凛々で部屋に踏み込んだ瞬間、


「――――」


 絶句した。

 朝の陽光に照らされた室内はとても肌色率が高い。

 裸体、裸体、裸体、寝相の悪い藤乃が布団を蹴っ飛ばしたのか全員丸出しだ。

 信長に左右から絡みつくマーリンと藤乃はこの上なく艶かしく、同性であっても息を呑むこと間違いなし。

 そんな女二人を絡みつかせている信長もまた色気に満ちていた。

 寝言で、


「オソマじゃねえよ……味噌だよ……糞じゃねえよ……食べ物だよ……」


 と、蝦夷滞在時の思い出をフラッシュバックさせているのが少々締まらないが。

 どうでも良いが糞じゃないよ味噌だよと言う単語は竹千代にとっては凄まじい侮辱な気がする。

 三方ヶ原的に考えて――と言うのはさておき。


「な……な……な……!」


 ようやく再起動を果たした竹千代は顔を真っ赤にして震え出した。


「……あぁ゛?」


 震える竹千代。日差しが差し込んだことで目を覚ました信長がヤンキーのような唸り声を上げつつ目を開ける。


「(コイツ……確か昨日の……何? この歳で朝駆けかよ……すげえなぁ戦国ぅ……)」


 上体を起こし、寝惚け眼で戯けたことを考えていると……。


「は、破廉恥で御座います! 破廉恥で御座いますぅううううううううううううううううううう!!!!」


 童女の叫びが一気に頭を覚醒させる。

 あまり知識が無いながらも破廉恥であることは分かるようだ。


「ん、んん……なんですかぁ……? あさからうるさい……」

「ふわぁ……」


 竹千代の叫びに目覚めを促された藤乃とマーリンもむくりと身体を起こす。

 それでも朝が苦手なのか、はたまた朝から盛っているのか。

 信長に寄り掛かって自己主張の強い身体と自己主張が控えめな身体を擦り付けている。


「あ、おはようございます信長様♪」


 身体を擦り付けたまま、そっと首筋に接吻を一つ。

 朝から絶好調であざとい藤乃だが、子供の前であることを考慮した方が良い。


「おう……おはようさん」

「ねえねえ、そこでプルップルしてるお子様放って置いて良いの?」


 マーリンはつい数年前まで弟妹が居たからか。

 子供への配慮が多少はあるらしい。それでもあくまで、多少である。

 ちゃんとした大人であるのならば即座にこの状況を何とかしていただろう。


「竹千代は……竹千代は……」

「え、竹千代?」


 じゃあお前家康かよと思ったのも束の間、


「うわぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!」


 竹千代は泣きながら走り去ってしまった。


「うーん……情緒不安定ですねえ」

「流石の俺も何か申し訳ない気分になって来たぜ。マーリン、とりあえず湯浴みして匂い落すぞ」

「はーい」


 マーリンがパチン、と指を鳴らせば巨大な微温湯の球体が出現。

 それは部屋のものを濡らすこともなくプカプカと浮かんでおり、三人は迷うことなく球体に入る。

 瞬間、球体内部の水が凄まじい勢いで荒れ狂い信長達の身体を洗っていく。

 これは旅の最中にマーリンが編み出した即席のお風呂である。

 洗濯機染みた方法だが、これが案外心地良くて信長も大のお気に入りだった。


「ふぃ……さっぱりしたぁ……」


 全自動乾燥機能つきなので球体から出た後、直ぐに服も着れる優れもの。

 魔道の無駄遣いと言えばそれまでだが、マーリンは特に気にしていない。


「にしても、これ毎回水が違うな。今回は柚子か?」

「ええ、良い匂いでしょ?」


 ただの水でも汚れは取れるし、匂いも落ちる。

 しかしそれでは芸が無いとこだわってしまうのがマーリンと言う魔女だった。

 柚子やら桃やら梅やら、特殊な調合を施した水を何種類も用意していたりする。


「ああ、爽やかな気分になれる。にしても、竹千代って言うとさぁ……」

「松平の御息女ですね。人質として今川に……って話は松下様の下に居た時に聞いてましたが織田に居たんですね」

「客人相手にちょっとまずかったかしら?」

「うん。子供には刺激が強過ぎたなぁ……」


 だらしない大人達も流石に反省しているらしい。

 いそいそと着替えを済ませて朝餉の場に向かうと……。


「……」


 竹千代はまだ顔を真っ赤にしていて、やって来た信長を睨んでいた。


「よう、さっきはすまんかったな。子供にはちと早い見世物だった」


 竹千代の隣に腰掛け、にこやかに謝罪する信長。

 ますますロリ千代ちゃんの視線が強くなるのだが……。


「(ん? んん? ほほう……)」


 嫌悪と言うか、軽蔑は確かに感じる。しかしそれは少しだけ。

 それ以上に、竹千代の中には好奇心が見て取れた。

 そして、彼女はその好奇心を自覚していて、そんな感情を抱いてしまう自分を恥じている。

 恥じているからこそ、誤魔化すように、覆い隠すように怒りの感情を表に出しているのだ。


「(コイツ――――ムッツリ系だな)」


 そして直ぐに史実でも割とエロ狸だったことを思い出す。


「改めて名乗ろう、織田信長だ。謝罪は受け取ってくれんのか?」


 エロい流し目と共にそう言ってやれば、


「……う、受け取ります」


 虚飾の怒りが剥げて、僅かに地金が顔を出す。

 これは良い、中々に可愛いじゃないかと信長は思わずその頭を撫でてしまう。


「竹千代、と言ったな?」

「……はい」

「流石に、言葉だけで謝罪と言うのもケチ臭い。後で俺が楽しい遊びを教えてやるよ」


 その瞬間、竹千代の身体が驚いた猫のように跳ね上がる。


「な、な、な! は、破廉恥! 破廉恥で御座います!!」

「おやおやぁ? 俺はちょおっと鷹狩にでも連れてってやろうと思っただけなんだけどぉ?」


 ニヤァ……とセクハラ親父の笑みを浮かべて顔を寄せる。

 吐息が感じられるような距離にある信長の顔に、どぎまぎする竹千代。


「竹千代ちゃんは何を想像しちゃったのかにゃー?」

「うー! うーうー! うぅうう!!」


 現代では条例的な意味で。

 戦国時代では単純に、他に目を引くのが多々居たから。

 ロリに手を出して来なかった信長だが、うーうー唸る竹千代を見て色んな意味で開眼する。

 これはアリじゃね? と。


「これこれ信長様。あまり子供をからかうものではありませんぞ」


 流石に見かねたようで、苦笑気味の政秀が割って入る。


「おっと……ついつい興が乗ってしまった」


 などと言いつつも、竹千代次第ではあるが機会があれば必ず喰ってやろう。

 信長はそう決意してこの場は退いた。ロリコンを拗らせた瞬間である。


「しかし、鷹狩ですか。それならば鷹の手配をしておきましょう」

「いや、要らんぞ」

「と言いますと?」

「旅の道中で主従の誓いを結んだ鷹が居てな、あ奴は口笛一つで飛んで来るからそいつを使う」

「はぁ……」

「名前はカトー、これが中々のやり手なんだよ」


 ゴールデンウィングを持つ伝説の鷹である。

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