表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/88

アルカディア

バタン、と音がして車の扉が閉まる。


「ここか……。」


男達が辿り着いたのは、フェンスが幾重にも張り巡らされた地区。


周囲にゾンビの影などは見る影もない。


男が感心したように眺めていると、見張りの男が走ってきた。


「動くな!検査を開始する。そこのテントに入れ。」


「はいはい。」


男は仲間たちに暫しの別れを告げると、テントの中に入っていった。




テントの中には、医師らしき男と、看護師のような女がいた。


「では、噛み跡や傷がないかを調べます。服を脱いでください。」


言われるがままに服を脱ぐ。


「噛み跡……。無し。引っ掻き傷も無し。……あら?この傷は?」


「古い傷ですよ。車ごと引っ繰り返されましてね。」


「おや。でも、ここの国民になれば大丈夫だよ。食料も生産体制が整っているし、衛生環境もいい。様々な職業の人たちが集まって、共同生活をしている。何より……。」


「何より?」


「上に立つ人たちが、良い人たちなんですよ。私よりもかなり年下だが、信頼がおける。あれを、天性のリーダーシップというのかな?」


医師らしき男はそういって、奇怪な声を上げながら身体を揺らした。


どうやら笑ったらしい。


「へえー。そして感染者も居ないと。」


「私を始めとする五人の医師が各ゲートにいてね。感染の恐れのあるものは入れないんだよ。」


「完璧だ。」


「君も、我々の良き仲間になるんだな。ほら、入国許可証だ。これを首から提げていけ。」


「ありがとうございます。」


男は立ち上がり、テントをあとにする。




検査を終えた仲間と合流した男は、この国の政治を行っている人間に謁見することを許された。


その人物は、この国の中心地である元学校だった場所に居るらしい。


中には至る所に武装した警備兵がおり、国力の高さが窺える。


武装兵の一人に案内されて辿り着いた先は、会議室と書かれた部屋だった。


中に入ると、男がこちらに背を向けて座っていた。


「失礼します!新たな入国者を連れて参りました!」


どうやら、この男がこの国のトップのようだ。


一歩踏み出す。


「新しく入国させていただきます、遠田リクです。そして、こっちが家内の立花愛梨。そして、僕たちをここまで連れてきたくれた、柊仁さんと、成人さんです。あと、こっちが美沙ちゃんです。」


「柊仁……。懐かしい名前ですね。本当に懐かしい。ある日から通信が途絶えて、音信不通ですがね。」


男は立ち上がり、振り返る。


そこには、人懐っこそうな笑みを浮かべた青年が立っていた。


20代位に見える。


「恐らく、その柊仁で合ってる。……冴島徹か?」


「では、あなたが仁さん。」


「そうだ。」


「顔を見るのは初めてですね。」


「そうだな。よろしく頼む。」


「ええ、こちらこそ。美沙ちゃんも、元気にしてたかな?」


「…………?」


「はははっ、覚えていないのも無理はないか。あれから何年経ったかな……。」


「多分、5、6年ですよ。」


「あの時はまだ9歳だったからな……。今じゃ思春期真っ只中だ。」


「そうか……。この国は見学されましたか?」


「いや、まだですね。国に入ってからすぐここに来ました。」


「なら、色々と見学してみてはいかがでしょう?これから使う事になるところですから。」


「そうさせてもらいます。」


「では、案内役を呼ぼう。」


徹が無線機を操作すると、一分程経ってから女性が会議室に入ってきた。


「はいはーい、何の用?」


「優衣さん、この人たちを案内してあげて。」


「全部でいいのー?」


「ああ、そうだ。えーと、来客用のリムジンあったでしょ?あれで。」


「りょーかい。」


女性はこちらを振り返ると、太陽のような眩しい笑顔を見せた。


「じゃあ、お姉さんが案内してあげよう!ささ、レッツゴー!」


元気よく歩き出した女性に、慌てて追いつく。


「まあ、取り敢えず全体像見せるために、屋上に行くよ。」


女性の後に続いて、リク達は階段を登った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ