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そして剥がれる化けの皮

桜は迷っていた。


手元にある一通の手紙が何を意味するかが分からなかったのだ。


『今日の午前十二時ちょうどに屋上に来い』


意図的に筆跡を変えているのか、文字はまるでカタカナのように角が立っている。


誰が書いたのか、そして何を伝えようとしているのか。


いや、伝えることは分かっている。


恐らく、正体がばれたのだろう。


しかし、今の所コミュニティのメンバーに目立った動きは無い。


となると、この紙を出したのは、一人か、多くても二人ほどだろう。


問題は、誰が書いたのかだ。


ばれるとしたら誰だ?


桜は暫し逡巡したが、やがて目線を紙から上にあげ、屋上を目指して歩き始めた。


自分は女王だ。


恐れることは何もない、いざとなれば皆殺しだ。


そう思いながら……。




桜が屋上に付くと、まるで昨日のように冷たい風が吹いていた。


ここで、桜は龍を突き落して殺したのだ。


その時、ふと足音が聞こえた。


桜が振り返ると、そこに立っていたのは怜だった。


「島浦君……。」


「あなたが龍を殺した犯人だったなんて、信じたくない。でも、残念なことにあなたは犯人だ。」


桜は体を怜の方に向けると、ゆっくりと言った。


「私は、鎌田君を殺してなんてないわ。」


「だったら良かったんだ。……本当にそうだったら。」


「本当よ!」


「嘘をつくな!」


「なら、証拠はあるの?」


「…………。」


「ふふ、証拠もないのにそんなことを言われたって……!」


「あるんだよ。」


「ッ!?」


龍は桜と反対方向に歩き出す。


「知ってるかい?被疑者が『証拠はあるのか』っていうと、99%犯人だって事。」


「証拠を見せなさい?」


「ああ。……これだよ。」


怜は小さな紙切れを取り出した。


それは、あのシールだった。


「シール……。」


「そう、シールだ。」


「そのシールが何か?」


「このシールは、『応援合体ゴッドバイン』っていうアニメのシールだ。これを持っていたのは龍しかいない。」


「ち、ちょっと待ってよ。」


桜は話を遮る。


「そんなの、誰かが鎌田君から盗んだかもしれないじゃない。そうだ!きっと犯人が私に罪を擦り付けようとしてそのシールを私の服に貼ったんだわ!」


だが、怜は首を横に振る。


「僕が言いたいのは、シールが付いていたことじゃない。このシールのキャラクターなんだ。」


「キャラクター?」


「このキャラクターはグリッグっていうんだ。主人公であるジーザの敵で、その戦闘シーンは、シリーズ一の名シーンって言われてる。」


「それがどうかしたの?」


「まあ、話は最後まで聞いて。グリッグは、実は元々ジーザの仲間だった。そう、グリッグは裏切り者なんだ。龍の持っていたシールがあなたの服についていた。そして、そのシールは裏切り者を示すものだった。これが偶然で起こるかな?」


「仮にそうだとしても、私には鎌田君を突き落すなんて出来っこないわ。」


「出来るんだよ。君だから。」


「私だから?」


「そうだ。だって君は……。」


怜は大きく息を吸い、続けた。


「人間ではないのだから。」


怜の声が寒空に響き渡る。


「人間じゃない?何を言ってるの?」


「……そうでもしないと、説明がつかない。」


「馬鹿馬鹿しい、帰る。」


桜が踵を返して歩き去ろうとすると、後ろから、鋭い声が飛んできた。


「動くなッ!!!」


桜が例の方を再び振り返ると、怜の手には銃が握られていた。


「僕の考え通りなら、君はあの赤い化け物から感染した。なら、再生能力を持っていても不思議じゃないだろ?」


「正気?」


「正気だ。」


「冗談よね?」


「動かないで、狙いがぶれる。」


「やめて!殺す気なの!?」


「死ね、化け物!」


一発の銃声が鳴り響いた。




桜の腹に、銃弾が命中する。


怜がその様子をじっくり眺める。


桜は二、三歩後退りすると、片膝をついた。


しかし、すぐに立ち上がると、にこっと笑った。


「大正解よ、島浦君。」


その瞬間、桜の髪の毛が伸び、怜の銃が弾き飛ばされる。


「うわっ!?」


「ふふふ……。あははははははは!」


怜はその狂喜に満ちた笑い声を聞いて、遂に化けの皮が剥がれたと確信した。




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