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図書室の守り人

「……困りましたね。」


ロングストレートの黒髪の女━━━━━━二年五組の清水美羽しみず みうは頬に手を添える。


ここは高校の図書室。


いや、図書室というよりは、図書館と言った方が正しいか。


広大な部屋には倉庫に収められているものを含めおよそ二万冊も本がある。


そしてそれだけの数の本を教職員が管理するのは苦しい。


なので、各クラスから一名募り、図書委員会が組織されている。


図書室は朝、昼、放課後に開放され、美羽は朝の図書当番の日だったためにここで蔵書の管理をしていた。


ここまではいつもと変わらない日常だったはずなのだが、突如学校中に響き渡った悲鳴がその日常を叩き壊した。


その数分後、不審者と思われる人物が図書室に入ってきたため、慌てて倉庫に入って鍵を掛けて、事なきを得たという次第である。


だが、当然のことながらここには飲み水も食料もない。


「どうしたらいいのでしょう……。」


不審者にこちらの居場所がばれているらしく、戸を叩く音が聞こえている。


(それにしても変ですね……戸を叩くというよりは引っ掻いているような。いや、そもそも不審者なら諦めるものではないのでしょうか。こんなとこにいつまでも居ては先生に捕まるのが関の山でしょうし。というより、何故先生が来ないのでしょうか。悲鳴が上がるばかりです。最早先生の力ではどうすることもできないような事態なのでしょうか。)


思考を巡らす。












(正常な人間であればここを立ち退くはず。精神を病んでいるにしても異常すぎる。人間ではない何か異質な存在?……ありえませんね。ですが扉を開けて確認する気にもなりませんし。曇りガラスなので向うが見えないのがじれったいですね。)


曇りガラスには、黒い人影のようなものが写っている。


(とにかく救助を待つ方が良いのでしょうが……。外も騒がしくなってきたのに先生も警察も来ないとなると、少し危険かもしれませんね。何時ガラスを割って入ってこないとも限りませんし。……?なんでガラスを割らな……)


直後、ガラスが割れて、手が出てくる。


その手は血に濡れている。


(手ですが、血だらけですね……ガラスを割った際に負った傷だけではあれほどの血はつかないはず。既に何人かをその凶手にかけたということでしょうか。…………いえ、こんなことを考えている場合ではありませんでしたね。せめて武器か何かを探さないと。)


少し焦りながら辺りを見回す。


(箒……無理ですね。辞書もリーチが短すぎますし。ここは机を移動してバリケードを作りましょうか。)


机を押して、扉の前まで持っていく。


(後はここに物を積んで動かさないようにすれば良いですね。しかし……。)


美羽の思考はそこで断ち切られる。


「ッ!?ぐぅッ!」


首を締め上げられる。


締め上げている手は先ほどガラスを破った手。


(どうして……?ここまで届くなんて……人間の手の長さじゃない?それこそ関節でも外さない限りは…………息が、……でき、な……)


視界が霧がかかったかのように霞みだす。


だが、その直後雄叫びが聞こえてきた。


「ダァァァァァァァンクッ!!!」


(なんでしょう……か。)


グシャッという音と共に、首を絞めていた手の力が緩む。


「カハッ!ケホッケホッ!」


激しく咳き込む。


すると、扉をノックする音が聞こえてきた。


「あの~。大丈夫ッスか~?」


「ゲホッ、ゴホッ、なんとか……。」


よろよろと立ちあがる。


鍵を開けると、扉が勢い良く開き、1m90cmはありそうな、そしてがっちりしている青年が出てくる。


「怪我とか無いスかね?」


「あっはい、おかげさまで……。ありがとうございました。」


深々と頭を下げる。


その様子を見た青年は、照れたように頭を掻くと、


「いやいや、そんなお礼なんていいッスよ。」


と言った。


美羽は倉庫から出て、先ほど自分の首を締め上げていた不審者を観察する。


頭が凹んでいる。


恐らく持っている穴あけパンチで打ち付けたのだろう。


「死んでますね。」


「あ、それは多分人間じゃないッス。」


「人間じゃない?それはどういうことですか?」


「今、学校中がそういう不審者……他の生徒がゾンビって言ってたッスけど……。とにかく、その不審者に咬まれたり引っ掻かれたりすると、コイツらと同じ行動をするようになるッス。」


「へぇ……まさにゾンビですね。」


倒れている人物の手を見る。


あまりにも長い。


きっと逃げているときに掴まれた挙句、無理やり引っ張られたのだろう。


その腕は伸びきってしまっている。


「目が白い。」


「多分、見えてないと思うッス。匂いか、あるいは音で探知してると思うッス。」


「そう。それじゃあ、図書室を完全に封鎖してしまいましょうか。そこの机を運んでくださいますか?」


「あ、大丈夫ッスよ。自分こう見えても力は強いんで。」


机を軽々と持ち上げる。


力の強さは明らかに見た目どおりであるが、そこはあえて突っ込まない。


「ありがとう。……私は清水美羽です。二年五組。あなたは?」


「あ、自分は太田おおた 大樹だいきッス。一年四組ッス。」


「……その、ッスッスはなんとかなりませんか?」


「はぁ。努力するッス。」


美羽は首を左右に振り、ため息をしてから太田に告げる。


「やりますよ?」


「了解ッス!先輩!」


図書室封鎖が完了した。




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