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正面突破の鍵

「でも、この数をどうやって切り抜けますか?」


「正面突破しかあるまい。」


「しょっ、正面!?」


「うるせータコ。黙ってやれ。」


「すいません。」


「武器は?」


「僕は鉄パイプだけです。」


「私はバット。」


「俺はニューナンブとハンドアックスだ。」


「……やっぱり、無理じゃないですか?」


「黙ってろって言ったろタコ。」


「ぼ、僕にはちゃんと名前が……」


「黙れタコ。」


「すいません。」


「行くぞ。」


仁がハンドアックスで手前のゾンビの首に向かって横薙ぎに刈り取る様に振る。


切り取れはしないまでも確実なダメージを与えたようで、ゾンビは首の断面をわずかに見せながら倒れた。


それを皮切りに愛梨がその右後ろのゾンビに飛び蹴りをし、バットを振るって薙ぎ倒す。


「くそっ!なんでこんな目に!」


リクも鉄パイプを振るった。




「落ち着きましたか?」


「…………。」


「その、私たちは気にしてませんよ。」


「…………。」


「だから……。だから、ご飯を食べてくださいよ。死んでしまいますよ。」


「…………。」


あの自殺未遂騒動以降、小夜は無反応になっていた。


美羽が必死に説得しても効果が無い。


まるでこのまま衰弱死することを望んでいるかのようだ。


いや、実際に望んでいるのだろう。


「……入るぜ。」


ガラッ、と音がして、保健室に誠治と翼が入ってくる。


「あ、どうも。」


「相変わらずなんですか?」


「ええ……。」


何となく重苦しい空気が保健室を包む。


だが、そんな中、誠治が小夜に近づいた。


「本多さん、何を?」


「黙ってろ。」


少しムッとした美羽を翼が宥めている間に、誠治は小夜に語りかける。


「おい、返事しろ。」


「…………。」


「なあ、俺は気が短いんだよ。」


「…………。」


「飯食えよ、死ぬぞ?」


「…………。」


「食わねぇなら、強硬手段に出るぜ?」


少し、ほんの少しだけ小夜の目が泳いだ。


しかし、声を出すまでにはいかない。


「はーん……。いいんだな?」


再度、念押し。


だが、小夜に反応は無い。


誠治は小夜の前に置かれていたご飯を徐に口に突っ込んだ。


そして、小夜の両頬を強く掴んで無理矢理口を開けさせると、そのまま口を重ねた。


「なッ!?」


「せ、誠治君?」


小夜は暫く抵抗した後、大人しくなって飲み込んだ。


「いいか?もし食わねぇんなら、俺がこうやって食べさせる。それが嫌なら自分で食え。」


「…………。」


小夜の手がゆっくりと動き、食べ物を口に運んだ。


それと同時に、小夜の目から涙が零れ落ちる。


「ったく、ピーピー泣くんじゃねえよ、面倒くせぇ。」


そのまま誠治は保健室を出て行った。


取り残された二人は、泣きじゃくる小夜を見て呆然とすることしかできなかった。




「へー!こんな物作ってるんだ!」


「うん。これが風力発電用のパーツでね……。」


「……なあ怜。」


「ん?どうした龍。」


「……お前、やっぱロリコンだろ。」


「違うよ!」


「えー?違うのー?」


「違うから!」


「……本当に?」


「本当だよ!」


「……ならいいけど。」


「まったく、何を血迷ったことを言い出すのやら……。」


そして作業が再開される。


木を切ったり、配線をしたり……。


「ねーお兄ちゃん!これはー?」


「ああ、これはダイナモっていって……。」


「怜、お前やっぱロリコンだな。」


「ちーがーうー!」




ゾンビの数は一向に減らないが、こちらの体力はどんどんと減っていく。


大きくなるゾンビの呻きと、蓄積する疲労。


「ま、まだまだいるよ……。」


「不味いな。」


「私はまだまだ大丈夫……。」


だが、そんな愛梨の足も少し震え始めている。


このままじゃジリ貧かと思った時、目の前のゾンビに何やら赤い塊が突っ込んできた。


「何だッ!?」


その赤い塊はゆっくりと体を起こす。


まるで皮を剥がされた二足歩行のカエルのようなそれは、大きな爪でもって、ゾンビを切り裂いた。


「人間じゃない……よな?」


「ああ。」


「つまり、ゾンビがゾンビを攻撃してるのか?」


「……あの化け物も、ゾンビに噛みつかれているな。」


「良く分からないけど、この隙に!」


「ああ、そうだな。」


「そんじゃ、とんずらするぞ!」


愛梨が駆け出し、続いて仁とリクも駆け出した。



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