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プレデター

「つまり、無理矢理押し倒されたわけではないと?」


「そうだよー。」


「ああ、良かった。もし太田君がロリコンだったらどうしようかと。」


「ロリコンじゃないッスよォ!」


正座の状態で大樹が涙ながらに訴える。


その姿はあまりにも不憫な姿であった。


「で、お兄ちゃん達は何人居るの?」


「……お兄ちゃん?」


「うん。」


「太田君?」


「ち、違うッス!この子が勝手に!」


「お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ。」


「……まあ、強要していないのなら良いですが。私たちは全員で13人います。」


「ふ~ん。一杯居るんだね~。」


「まあ、多い方が物資も集めやすいですし。」


「でも、いいのかなぁ?」


「何がです?」


「リーダーは居るんでしょ?」


「そうですが。」


「……必ずしもリーダーの指示に全員が従うとは限らないと思うよ。ここもそうだったし。」


「ここ、ですか?」


「人には人それぞれの考えがあるの。だから……。」


優衣はつかつかと美羽の前に歩み寄り、耳元で囁いた。


「腹に一物持ってたって分かんないんだよ?お姉ちゃん。」




「ふ、ふふふ……。」


真二はカーテンに閉め切られた部屋で、鉄の棒を熱していた。


それをゾンビに押し当てると、肉の焼ける匂いが部屋に充満する。


ゾンビは何も感じてはいない。


「ぁぁアあぁあ……うぅゥ」


縛られた体を無様にくねらせているだけ。


「ふふふっ、ひひひひひ……。徹もこうして……。」


その時、ドアが開いた。


真二は扉の方を向く。


そこに立っていたのは桜だった。


「君か。何しに来た。」


「いえ、先輩と少しお話したいことがありまして。」


「話したいこと?」


「はい。」


桜はにこやかに笑うと、真二の方向に向かって歩き始める。


「先輩は、徹君のこと、殺そうとしてますよね?」


「ッ!?」


意表を突かれた真二は思わず鉄の棒を落としてしまった。


「な、何故それを……。」


「女の子は敏感なんですよ?そういう事に関して。殺気だった目が全てを物語ってましたしね。」


一歩ずつ、ゆっくりと近づいてくる桜を、真二は得体のしれない死が近づいてくるように錯覚し、後ろに一歩下がった。


「ああ、大丈夫ですよ。誰かに話したりしませんから。」


「……保証できないだろう?」


「出来ますよ。だって私先輩の味方ですもの。」


「味方?」


「ええ……。」


桜はスッ、と真二の横に移動すると、妖しく笑った。


「私、徹君よりも真二先輩がリーダーの方がふさわしいと思ってるんですよ?」


「僕が?」


「そうです。だって先輩の方が生徒会長も務めていて、リーダーシップがあります。それに、格好良い……。」


擦り寄ってくる桜に、真二は次第に警戒心を緩め始めた。


しかし、すぐに引き締め直す。


「だが、もしそうだとしても今のリーダーは徹だ。」


「だ・か・ら。殺しましょう?」


「殺す……。」


「そうですよ。元々その予定だったんでしょ?殺せばいいじゃないですか。」


「……もし僕がやったとばれたらただじゃすまない。」


「ばれませんよ。絶対に。」


「何を根拠に?」


「私が殺すからです。」


「君が?」


「はい。」


「何故?」


「愛する先輩のためだからです。」


そういうと、桜はさらに真二と体を密着させる。


「ち、ちょっと……。」


「ねえ、先輩。手伝ってくれますか?」


「あ、ああ……。」


「本当?」


「出来る事なら。」


「ふふっ、嬉しい……。先輩のそういう所、好きです。格好良くて、たくましくて、野心家で……。」


桜が真二の耳元に口を持って行く。


「馬鹿な所が。」


桜の口が真二の首元に食い込む。


防音の部屋の中で、真二の叫び声が響き渡った。




「大樹がロリコンでもオバコンでも何でもいいから取り敢えず戻ろうよ。自家発電装置も手に入ったし。」


「ロリコンでもオバコンでもない!!」


大声で否定しながら、怜と大樹が部屋を出る。


それに続いて美羽も部屋を出た。


部屋に残ったのは巧と優衣。


「お兄さんは行かないの?」


「お兄さん……。」


「うん。お兄ちゃんよりしっくり来るよ。」


「……まあいい。」


そういうと、巧は優衣に手を差し出す。


「え?私はここに残るよ。そっちの人たちにも迷惑がかかるだろうし。」


「生きてる女の子を残して帰れるか。それぐらいなら養える。嫌と言っても連れて行くぞ。」


「あははー。告白されたー!」


「こっ……!?」


「冗談だよ、冗談!お兄さんはからかい甲斐があるね。」


「……連れて行かんぞ。」


「わ~!冗談って言ったでしょー!連れてってー!」


「……まったく。」


やれやれというように首を振ると、左手を差し出す。


優衣は笑顔でその手を右手でしっかりと掴んだ。

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