表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/88

エスケープ・フロム・ザ・マンション2

「よっ……と。」


ギュッとシーツをベランダの手すりに結ぶ。


少し引っ張ってみたが問題なさそうだ。


「もう少し。ゆっくり行こう。」


下の階に移動する。


ベランダを開け、辺りを見回すが、誰もいないようだ。


だが、油断は禁物。


慎重に進むべきだろう。


どうやらこの部屋は自分と同じような学生が暮らしていたらしい。


野球用のグローブやバットが置いてある。


「脳を潰すんなら、バットの方が便利かな……。」


金属バットを手に取りながら逡巡する。


そして、その金属バットをリュックサックに無理やり押し込んだ。


持ち手の部分が大きくはみ出ているが、何とか入った。


「さて、行こう。」


もう一度シーツで一階下に降りり、ようやく地上に降り立つことが出来た。


周囲を確認する。












「うわああああああああああ!!」


叫び声が聞こえる。


声の方向を向くと、向かいのマンションのベランダで男がゾンビと取っ組み合っている。


だが、見ている事しかできない。


「やめろ!こっちにくんじゃねぇ!」


男がゾンビを殴るが、ゾンビはそのまま男にかぶりついた。


「ぎゃあああああ!」


男はゾンビと共にベランダから落下し、グシャッと音がした。


「『現実』だ……。これは『現実』なんだ……。」


自分にそう言い聞かせると、なるべく音をたてないように移動する。


そう思った理由は、先ほどマンションの部屋で殺した(厳密には死んでいるのかもしれない)ゾンビにあった。


重要なポイントは、目が白濁していたということである。


恐らく、奴らの視界は真っ白だろう。


若しくは、もう視覚という概念すらないのかもしれないが。


もし奴らが鼻で敵を探知していた場合、匂いは消しにくいが、音は消すことができる。


ザッ…ザッ……ザザッ。


マンションの駐車場の砂利を踏みしめる音がする。


しかも不安定なリズムでだ。


ゆっくりと駐車場の近くに移動し、壁から様子をうかがう。


ゾンビがいた。


一体で、中年のサラリーマンらしき男だ。


こいつで実験するとしよう。


まず、近くにあった大きめの石を投げる。


ガッ。


地面に石が当たって、音がする。


「ウゥゥうぅぅ……アァ」


ゾンビがよろよろと石が地面に当たったポイントまで移動する。


もう一個、小石を投げてみたが、同じように移動した。


(間違いない……音で感知してる。しかもかなりの精度だ。)


次は匂いで探知できるかの実験である。


(怖いけど、やるしかないよな……。)


バットを大きく振り上げ、何時でも殴れる体勢にする。


そして、足元の石を軽く蹴る。


ゾンビがこっちに向かってくる。


(ひぃっ!?や、やっぱり怖いいいい!)


だが実験だ。


我慢するしかない。


ゾンビがバットを振れば届く距離までやってくる。


そこでゾンビは立ち止まり、小石の周りをうろうろと歩き出した。


匂いは感じ取れないらしい。


「楽にしてあげるよ。」


ボソッと呟くように言うと、顔をこちらに向けたゾンビに金属バットを叩きつける。


ゴキンと音がしてバットが凹み、ゾンビの頭も凹んだ。


ドシャッ。


ゾンビが倒れる。


それを確認すると、再び歩き出す。


行先は自分の通う高校。


「さて、頑張るぞ!」


自分自身にエールを送る。


その直後。


「ウゥぁぁああぁ」


背後から声が聞こえた。


「ま……まさか……。」


後ろを振り向く。


そこには数十体のゾンビが。


「しまったぁぁ!!エールの声で集まってきたぁぁぁ!?」


全力で走りだす。


そしてその後を亡者が追いかける。


「ひぇぇぇ!!逃げるんだよォーーーッ!」


今までに走ったことがないほど早く道路を駆ける。


幸いゾンビは走れないようで、なんとか振り切ることができた。


素早く路地に入り込むと、座り込んで一息つく。


「はぁ……はぁ……なん、とか……。」


息を荒げながら、視線を下に落とす。


「ッ!!うわぁっ!?」


転がっていたのは子供の頭部。


「あばばばばばばぁっ!?」


壁に張り付くようにして距離を取る。


その頭部はすでに機能を停止しているらしく、動く気配を見せない。


そしてそこで気づく。


自分が大声を出していた事に。


「あっ!やばッ!」


路地は自分の入ってきたところと、そして大通りに通じる出口があった。だが、その両方にゾンビがよろよろと出てきた。


絶体絶命。


正にその状態であった。











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ