96.「あの人」 に思う
♫ あ~、あの人はいまどこにぃ~ ♫
昔、年齢の離れたきょうだいと一緒に夜のラジオ番組を聴いていた時期に、このフレーズがよくラジオから流れてきていました。
パーソナリティーは誰だったのか残念ながら覚えていないのですが、おハガキで問い合わせると「あの人は今どこにいるのか」の調査をしてくれるって番組だったように思います。よく覚えていませんですが。
そのメロディーがなんだかおとぼけで、本当はもっと切実な問題かもしれないのに、おもわずクスって笑っちゃうんです。
♫ あ~、あの人はいまどこにぃ~ チャンチャンチャン
あ~、あの人はいまどこにぃ~ あの人は今どこにいるのよぉ
あ~、あの人はいまどこにぃ~ あの人に 今 会いたいぃのよぉ ♫
ってぐあいに延々と続くのです。
そういえば、
わたしがあの人のことを話すとき、いつも 『あの人』 と言ってしまいます。
どうしてかな。
名前で言うのも何か変だし。○ちゃん、○さん、○くん、っていうのもなにかしっくりこないし、ましてや、実名でなんて書くことはできないでしょ。
だからと言って、イニシャルというのも何かしっくりこない。
あまりにも頻繁にイニシャルを使うと何かの事件簿の犯人みたいじゃないですか。
プリプリの歌に 『M』 っていうのがありますけど。
近い人間だったら、あっ、あの子のことだってすぐにわかっちゃうじゃないですか。
イニシャルを替えているだけかもしれないですけど。
ほんとは 『S』 かもしれないし、『R』 かもしれない。
そういえば、夏目漱石の 『こころ』 には 『K』 がいました。
カフカの 『城』 にも 『K』 だったか。
だったら 『K』 でもいいかな。
次回からは 『K』 と記そうかしら。
星新一や眉村卓のショートショートの登場人物であるなら、
イニシャルでもすっきりしていていいと思いますが。
イニシャルだからいいのかもしれない。
眉村卓さんは彼の書き物の中で、
「あれこれ名前を考えるのが面倒なので、『A氏』 、『B氏』、『C氏』 ・・・って順々につけている。作品ごとにチェックをしていただいたらわかっていただけるかも。」
みたいなことを書かれていたような気がします。
でもとにもかくにも、わたしの 『あの人』 はイニシャルではいけないの。
わかってしまってはダメなんです。
わたしと 『あの人』 以外の他人にはね。
だから、『あの人』 ってすごく便利な言葉。
彼とか、元カレとかっていう言い方もあるみたいですけど。
今さら、『彼』 とか、『元カレ』 なんてねぇ。なんかおこがましくって。
言えないでしょ。なんか。
小野小町が詠んだ歌の現代語訳にこのようなものがありましたので、ここに記しておきます。
思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ
夢と知りせば 覚めざらましを
(あの人のことを思いながら寝たのであの人が夢に出てきたのでしょうか。
夢とわかっていれば目覚めなかったものを)




